表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ネコ科シリーズ

ライオンハーレム実態調査日記【ライオン語翻訳:ゅべ、現地調査員:ゅべ】

作者: ゅべ

 ライオン視点で描いたコメディチック日常エッセイです。

 俺はライオン、人間からは『百獣の王』なんて呼ばれて恐れられている。


 ネコ科ヒョウ属ライオン君、それが俺だ。



 皆んなは本当の俺を知ってるかな? 皆んなは俺をどんな色眼鏡かけて見てるだろうか?



 怖いとか良く吠えるかと、そんな感じかな? 『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』とか言うよね?



 本当にそんなことすると思う?



 いや、しないでしょう。絶対にしない、それは人間さんの思い込み。



 実際のところは激甘です、だってこないだも子供が小さな崖からずり落ちただけで群れの中のメスが総出で救出に行ったんだよ?


 旦那の俺を雑に扱ってさ、皆んなで子供を救い出そうと身を乗り出すものだから俺も拗ねちゃったよ。


 結局はメスの一匹が下に先回りして子供を咥えて上がってきましたよ。ね、激甘でしょ?


 ウソウソ、ライオンが子供を厳しく育てるなんて嘘っぱち。


 こないだも嫁さんが子供を甘やかすから「ガオー!!」って怒鳴ったら全員から睨まれちゃってさ。


 ライオンって大体がある程度の規模でハーレム作って生活するんだけど、基本はオスが1〜3匹、メスは15匹くらいかな。


 子供は幼獣って呼ばれていて、数にはカウントされない。その中からサブプライドって呼ばれる小規模ハーレムに分散して生活してます。


 つまりアレだ、人間で言うところの本妻と愛人と浮気相手、それぞれに生活基盤があって、それぞれで生活を賄ってるわけだ。


 ライオンって人間と違ってかなり割り切った生活をしてるんだ、メスも他のメスに嫉妬してブッスウウウウウウみたいに昼ドラよろしくは絶対にしない。


 まあ、それも俺がメス全員を満足させるだけの器だって話でもある。



 だけど俺って恐ろしく早漏でさー、いっつも嫁さんに怒られちゃうの。




 早漏でそうろう、何つってー!!




 ガウ、ガウガウ。ちょっと咳を入れて仕切り直すとしよう。

 さてライオンが早漏だと言う悩み、じゃあ実際はどれくらいかって?




 ……20秒です。




 それがライオンの限界、嫁さんを満足させられないのが百獣の王の実態です。


 さーせん。


 でもさー、嫁さんもしつこいんだよ。この間も嫁さんにせっつかれてさ、一日に何回ベッドインしたと思う?


 脅威の50回だよ?




 萎えるわー、萎んじゃうわー。




 そんな生活をずっと繰り返してたら、そりゃあ休むでしょ。オスは絶対に動きません。働きません。



 働きたくありません。



 ヤッベ、俺が不用意にニート願望を口にしたから嫁さん連中から怒られちゃったよ。


 何だって? 幼獣の教育に良くないから無責任な発言は控えろだろ? 出たよ、こう言う時ばっかり嫁さん連中は徒党を組んで来るんだ。


 俺を悪者扱いしてガウガウ言ってくるんだよ。



 ふざけやがって。



 良いもん、じゃあ俺は絶対に狩りに行かないもん。人間の間でもライオンはメスが狩りをするものだって定着してるから今更世間体なんて気にしない。


 俺は今日一日ゴローンとふて寝してやる。



 何だって? 俺にも狩りを手伝えって?



 出たよ、たまにあるんだよ。獲物の数が少なくなると俺に協力を求めてくるんだからさ。


 だから結局頼むんだったら普段から言葉遣いに気を付けてよね。



 ……また怒られちゃった、ガウガウ言わずに黙ってやれだってさ。


 人間で言えば四の五の言わずにってところ何だろうけど、分かりましたよー。やれば良いんでしょ?


 へいへい、でやり方はいつもと同じで良いのかな?


 アレでしょ? メスが扇形に散開して俺がトドメさせって言うんだろ?


 仕方ないから俺はヒッソリと身を隠して獲物を観察した。獲物の数が多いと休憩時間が増えて二十時間は寝てるからな、この時期は本当に疲れる。



 思わずあくびが出ちゃった。



 それはそうだよ、だってこの時期は獲物が少ないから一日中活動しないといけないし、基本的にライオンは夜に狩りをするから昼間の生活はキツい。



 基本的にライオンは引きこもりなんです。


 ふっ、目に差し込む日差しが眩しいぜ。こう言う時こそハイエナとかから獲物を奪えば良いのに。


 ほら、アイツらって見た目がブサイクだから人間からも嫌われてるじゃん? 逆にアイツらが他の動物から獲物を奪ってるみたいな。


 俺たちライオンはイケメンだからアイツらから獲物をぶん取ってイメージがダウンしないんだ。


 そう、俺たちライオンは神様から二兎を得た動物なんです。



 ライオンなのに兎だってさ。



 ぷー、クスクス!!



 俺もギターを持てる手だったら「って言うじゃない?」、とか歌っちゃうわ。


 ああ、妄想してたらメスから怒られちゃったよ。ハイハイ、獲物を追い込んだからトドメを刺せって?


 じゃあ、久しぶりに本気を出しますかね? よーい、ドン!!



 って、獲物が速ええええ!! アイツどこの草食動物だよ、テメエどこ中だよ!? メチャクチャ足が速えええええ!!



 ちょ、ちょ待てよ!!



 俺は時速58キロまでしか走行速度を出せないんだってば!! フルスロットの原チャリよりも性能が低いんだってば!!


 しかも250メートルしかスタミナを保てないから、……ヤッベ。


 疲れちゃった、昨日の酒が残っていたのかな?


 完全に足が止まっちゃいました。四方からのメスの視線が痛いです。


 さーせん。


 とまあ、そんなこんなで結局はメスが獲物を捕まえてきてくれました。


 そしてこれこそハーレムの特権、捕まえた獲物はオスの俺が独占出来るのだ。今日はインパラの刺身かー、豪勢だな。


 この獲物の少なくなった時期は小型動物しか食卓に出ないんだけど、今日に限って言えば非常に豪勢だ。


 だけど俺はさっきポテチ食べちゃったから幼獣たちに分けてあげて?



 って、待てよ!!



 だからどうしてメスたちはこの時期になると幼獣に獲物を分配しないかな、これがライオン界最大の問題。


 児童虐待とも言える獲物は大人が優先思想だ。だからライオンは子供の死亡率が恐ろしく高いって自分で気付かないでどうするの!?


 ライオンは人間なんかよりもずっと子供死亡率が高いんだぞ!?


 もー、良いよ。俺が秘蔵のツマミあげるから。ほれ、柿ピーだぞ? 美味いだろ。


 嫁さん連中も崖に落ちた時は激甘なのに、こう言う時だけシビアなんだよな。



 本当に呆れちゃうよ。



 そんなこんなで子供と戯れあってると視線を感じてしまった。



 これは俺のハーレムを狙った他のオスのそれだ。当然ながら俺の嫁さんたちは美人揃いで気立ても良い。つまりちょっかいをかけて来る野暮なオスも多くいるのだ。



 ガウウウウウウウ!!



 俺は己のハーレムを守るため、牙を剥いてくる雄に立ち向かった。颯爽と駆け出して俺は嫁さんたちに良いところを見せようと敵の喉を目掛けて突っ走ったのだ。



 皆んな、見ていてくれよ!?


 俺はお前らをこの手で守るって決めたんだ!!




 ……チーン。




 負けました。


 はい、完敗です。


 さーせん。


 そんなこんなで俺は負け犬の如く草原を一人でトボトボと歩いていた。ネコ科なのに犬だなんて皮肉かよ。


 殺されそうになった幼獣たちを引き連れて歩いてます。


 他のオスにハーレムを奪われると真っ先に狙われるのは幼獣、つまり先代のオスの子孫だ。


 ライオンはメスが総出で子供を育てる。だから他のオスの遺伝子をもった幼獣がいると夜の気分が乗らないんだってさ。


 俺の旧嫁さん連中とベッドインするために幼獣を子殺しと言って他の遺伝子を確実に殺していく。


 俺は息を切らせて何とか幼獣連中を救うことが出来た、だがもはや旧嫁さん連中には愛を尽かされて帰るハーレムもない。



 俺はこれからどうしようかなー?



 はあ、仕方ない。ここは一つ人間様に縋るとしよう。最近では人間の国立自然公園なんかではライオンを保護してくれるらしい。


 どのみち嫁さんがいないと俺は獲物だってまともに仕留められないのだから。


 そうするしかあるまい。



 そして俺は幼獣たちを引き連れて公園を目指すことにした。そこで俺はまたハーレムを形成することが出来るだろうか?



 一匹のライオンの新たなる旅立ちはここに成立したのだ。じゃあ、皆んなもいずれ自然公園で会おう。



 じゃあな、また会う日までアバヨ!!

 下の評価やご感想を頂ければ糧になりますので、

お気に召しましたらどうぞ宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ