8 成長
赤ちゃんでいられる時期はあっという間に過ぎていく。
お座りを7ヶ月頃にし、王宮でお祝い。
ハイハイを8ヶ月頃にし言葉も「めっ!」や「あうあう」などと発音が出来たからお祝い。
ひとり立ちとつたい歩きを1年半頃でし、言葉も一言「わんわん」「にぃに」「ねぇね」「ぱぁぱ」「まぁま」が言えるようになる度に『お祝いだーー!』と言って凄い溺愛っぷりの繰り返しだ。
早くお話出来るようになりたい。
出来るようになったら、お祝いを誕生日だけにしてもらいたいって伝えたいの。
2歳半になった、やっと話せる!
片言だけどね。
今日もお祝いで王宮へ行くことになっているの。
よちよち歩きを1人で出来るようになったのと、片言が話せるようになったからだ。
バランスを崩しよく転んだりする。
痛くない時は頑張って自力で起き上がるが、痛みがある時は泣いてしまうの。
だから、もうお祝いはしなくてもいいんだよ。
なんとか片言だけは話せるようになったし、今日こそは言うんだから。
「まぁま、ぉあなち、ありゅ(ママ、おはなし、ある)」
「あらあら、何のお話かしら?」
「おちろ、いっちゃ、ら、ぉあなち、ちまちゅ(おしろ、いった、ら、おはなし、します)」
「えぇ、分かったわ。
アンジュのお話を先に聞く事にしましょうね」
「ぁい」
よし、これで言える。
お金は国民の為に使ってほしいし、それに……もし争い事なんかに発展したら沢山のお金が動くことになるだろう。
そんな時の緊急時に備えての事を考えると、自分の口で言いたかった。
これで言える……やっと言える!
「アンジュ、手を繋いで行こうか?」
「ぁい。
えど、にぃに、おてて、ぁい」
小さな片手を出した。
そんな掛け合いを見たみんなの胸は。
きゅうーーんっ!!
胸の八ートに矢が刺さったかのように心を奪われそうになったようだ。
みんなはキュン死寸前の状態だった。
「えど、にぃに?
おてて、たぃたぃ、の?(て、いたい、の?)」
「痛くないよ。
アンジュが凄く可愛いことを言うから胸がキュンってなってたんだよ」
「アンジュ、次はわたくしと手を繋いでね」
「ちゅぎ、は、きぃちゅ、にぃに、と、おてて、ぎゅぅ、ちゅる、ばん(つぎ、は、キース、おにいちゃん、と、て、つなぐ、ばん)」
「そうね……。
キースの次はわたくしと手を繋ぎましょうね」
「ぁい!」
小さな片手を挙げて返事をした。
パパは私の1つ1つの仕草に感動をして涙を流しながら喜んでくれていた。
「今日は誰がアンジュを抱っこして馬車に乗るの?」
「オレとリンはアンジュに乗ったままだから良いけどな!」
そうだなぁ、今日はキ-スお兄ちゃんのお膝かな。
私はキースお兄ちゃんの方を向き、小さな両手を上げて抱っこしてアピールをした。
「きぃちゅ、にぃに」
「……アンジューー!
可愛い、可愛すぎだ!!」
「キース、アンジュを落とさないようにしっかりと抱きしめておくんだぞ?」
「心配ですわね。わたくしはキースの前に座りますわ!」
「なら俺はキースの隣だ!」
「ははは、アンジュは人気者だな」
「ふふふ、可愛いから仕方のないことだわ」
馬車の中は賑やかで、アンジュの周りはいつも笑顔が絶えない。
他の妖精さんもたまに来るんだよ。
「まぁま、ぱぁぱ、えど、にぃに、ねぇね、きぃちゅ、にぃに、だい、ちゅき!」
「「「「「アンジューー!!」」」」」
馬車の中だというのに家族に抱きしめられちゃったよ。
凄く良い家族、転生して良かったな。
「きゃはは、りん、しゃん、だい、ちゅき」
「私もアンジュが大好きよ」
「オレもアンジュが大好きだぞ」
「ありゃがと……あぁーとー(ありがとう)」
上手く発音が出来ない。
でも、なんとか『ありがとう』って言葉が出せた。
私は恥ずかしさのあまり、俯いてモジモジしていると優しい言葉が返ってきた。
「頑張って話してくれてありがとう。
みんなにアンジュの気持ちは伝わっているわ」
ママの言葉に頷き。
小さい手を挙げ。
「ぁい」
片手を上げて返事を返した。
馬車は早すぎずゆっくりでもない心地良いペースで進んでいる。
『……て、……助け…て……』
えっ?
誰?
リンとサンはお姉ちゃんとキースお兄ちゃんたちとで話している。
じゃあ誰?
『……たす…け……』
……っ!!
「ばちゃ、とめちぇ!!(ばしゃ、とめて!!)
とめちぇーー!!(とめてーー!!)」
みんなの視線が私に向けられたと同時に馬車が止まった。
馬車のドアが開き御者さんが中の様子を伺い。
「おりょ、ちて!(おろして!)」
私は御者さんに降ろしてもらうよう頼み、降りたと同時に必死になって走ろうとしたが途中で何度も転び、痛みに耐えながらも繰り返し立つ。
声のする方へと向かうが、上手くいかない。
早く行きたいのに行けない。
走りたくてもバランスが上手くコントロール出来ないもどかしさに泣きながらも必死に歩み進める。
「うぅっ……ひっく……」
その行動に驚いていた家族は私を追いかけ、パパが抱き上げてくれた。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「早く読みたい!」
と思ってくれたら
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