2 転生
目を開けていられない光に包まれ、次に目を開けると……手が……小さい?
話したいのに口が動かない。
ってか、身体全体が上手く動かない?
いや、足はバタバタ出来るけど手はゆっくりな動きしか出来ないじゃん!
誰かいないの?
叫べない、誰かーー!!
「……っ、……」
声も上手く出せないし言葉が発せない?
スリスリ、なでなで……。
あっ、妖精さん達だ。
妖精さんの声が聞こえる。
「赤ちゃんになってるから私達が守ってあげる」
「へへへっ、オレも守ってやるから泣くなよ」
笑顔になって心の中で【ありがとう】と呟いた。
ここは……テントの中?
何でテントの中にいるんだろう、もしかしてテントが家なのかな?
定住することのない、いろんな国を転々としている移住民かもしれない。
妖精さん達がテントの上に移動している。
何でだろ?
見つかりたくないのかな?
「あらあら、おっきしたの?」
異世界の人って美人さんが多いのかな?
この女性がお母さんなの?
母親にしては若く見えるし……眩しい!
この人が抱っこをして外に出たのか。
緑や自然いっぱいの香りがする。
野鳥なのかな、身体の上に乗り私の頬をスリスリして飛んで行った。
「起きたのか?
神の化身と呼ばれるシャルロー鳥を間近で見たのは初めてだ。
何かの知らせか、幸運の前兆なのかもな」
「この子の名前は決まった?」
「さっきまでブルーウルフの群れと戦ってたから、悪い」
「焦らずゆっくり決めましょう」
「そうだな」
この人が父親なのかな?
凄いイケメンなんですけど!
この世界には美女とイケメンしかいない……なんてことはなかった。
両親の前には、筋肉モリモリの顔が残念な男性と体型は普通で顔も平凡だけど……片方の鼻の穴から鼻毛が3本くらい出てますよ?
最後の一人は女性だ、それも体型はボン・キュッ・キュッ!
でもね顔がね……イノシシ……きっと間違って人間に生まれてしまったんだね。
残念マッチョに鼻毛オトコ、イノシシ女が両親と何やら揉めている。
どうしたのかな?
さっきお父さんはブルーウルフと戦ったって言ってたけど、何か関係があるのかな?
「アーク、エマ……。
悪いが今直ぐにパーティーから出て行ってくれ!」
残念マッチョの言葉に両親は驚きを隠せなかった。
「パ-ティーから出て行けとはどういう事だ!
この依頼はブルーウルフ5匹の討伐で、既に依頼達成してる。
レイモンドとエリオットは1匹の討伐、アーソリンは0だ!」
「ブルーウルフはアークが4匹討伐してるのよ!
それなのになぜパーティーを追い出されないといけないの?」
「それだよ、それ!
今回の依頼であるブルーウルフはDランクの割に報酬が馬鹿でかい。
俺達は報酬と素材が欲しい」
「報酬と素材を置いて私達の前からいなくなってくれるのなら見逃してあげるわ。
素材を持ち去るなら……そのガキの命を奪う事なんて簡単なんだけど……」
お父さんとお母さんはお互いに見つめた後、頷き素材を置いた。
お母さんの肩を抱き寄せたお父さんと、この場を去ろうとすると。
残念マッチョがお父さんの肩を引き、お母さんとの距離間が出来るように仕向けた。
「待てよ。
そのバッグに入ってる物も全て置いて行け!」
「これは俺達の大事な……」
「きゃあぁぁっ!」
お母さんが私を背で庇い、盾になってくれたお陰で私は怪我をしていない。
でも代わりにお母さんが……やだよ。
もう誰も死なないで。
お母さんの出血は酷いが、必死に私を抱きかかえたまま蹲っている。
「エマ!
回復しろ! 早く!!」
「……アーク……回復が……利かないのよ。
傷を癒せ……ヒール……」
「無駄無駄!
コレを使用したから回復なんかしねえよ」
「それはポーションや治癒で回復が出来ない危険な魔道具として国中が回収したはず!
なぜレイモンドが持っているんだ!
各国で禁止になり、使用した者は死刑になるんだぞ!!」
「分かってるから使ったんだよ、口封じにな!!
ハハハッ、そろそろ行かねえと血の匂いで魔獣が来ちまう。
お前達に運が無かったことを恨むんだなぁ!!」
「……っ……!
くそっ!!」
お父さん、泣かないで。
お母さん、死なないで。
妖精さんが悲しそうな顔をして見てる。
【 お父さんとお母さんを助けられないの?】
「ゴメンね。
私達は治癒が出来ないの」
「…………」
「「……っ!!」」
お父さんとお母さんは驚いてはいたが優しく抱きしめられたまま、私の名前を初めて呼んでくれた。
「妖精?
この子は愛し子なのか?
……エマ決めたよ。
この子は『《《アンジュ》》』この名前は『《《天使》》』と言う意味だ。
この子が成長して行く姿を見たかったな。
アンジュ……父さんと母さんはお前の幸せを願っている」
「愛し子であるこの子にとって良い名前だわ。
アンジュ、愛しているわ……アンジュ……」
お父さんは小さくて可愛い肩掛けバッグに『アンジュ』と書き、バッグの中に何かを入れていた。
「……なっ!!」
何あの黒い大きな狼は!
お父さんが……殺されちゃう。
お母さん?
ねえ、起きてよ!
嫌ーーっっ!!
「ううっ……おぎゃあ、おぎゃあっ!!」
「……アンジュ……エマ!」
お父さんの身体はブラックウルフの爪や牙で深手を負い出血が酷い状態だ。
木々が大きく揺れた瞬間、黒い影が現れた。
人だ!
ブラックウルフは後方へ飛び退き、白い牙を剝き出しにして唸った。
誰か分からないが、肩で息をしながら魔法でブラックウルフを倒そうとしてくれている。
「氷の矢となり敵を射つくせ、アイスアローー!!」
キラリと光る何十本もある氷の矢が、大きなブラックウルフの体に向かって次々と貫いていく。
ブラックウルフは呆気なく倒れた。
「セドリック隊長、母親の方はもう……。
父親の方はまだ息があります!」
「エマ、お前を1人で逝かせない。
アンジュ……ゴメンな、成長したお前を見届けたかった。
ガハッ、はぁはぁ……アンジュを……バッグの中の手紙を……。
アンジュ、しあわ……せに……」
お父さん、お母さん……やだよ!
鉄のような匂い、これはお父さんとお母さんの体から出ている血の匂いだ。
「……うぅっ……おぎゃあーー、おぎゃあーー!!」
精鋭部隊長はバッグの中にある手紙を読んだ。
「なんてことだ!
……この子は妖精と精霊の愛し子……!」
「面白かった!」
「続きが気になる!」
「早く読みたい!」
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