11 ウィリアム王子様と王宮の散歩
みんなとそのままお祝いをする事になり、ダイニングルームのテーブルの上には美味しそうな料理がたくさん並べられていた。
デザートまであって、凄く豪華だ。
うわぁーー、美味しそう。
……苺やベリー、見たこともない果物がたくさん盛りつけられた大きなケ-キまである。
早く食べたいなぁ……じゃないよ!
お祝いは誕生日だけにしてもらわなきゃなんだから。
目的を忘れたら駄目だよ。
頑張って話さないと。
「……ぉあなち、きいて。(おはなし、きいて)
おいわい、は、なぃなぃ、に、ちて。(おいわいは、なしにして)
お、おたんじょうび、だけ、で、いい。(おたんじょうび、だけでいい)
おかね、は、だいじ…に、ちて(おかねは、だいじにして)」
「…………」
みんなにウルウルとした瞳で見られてる。
リカルド様とグレン様はそれぞれ腕組みをしてウンウンと頷き、王妃様とママは胸の前で祈るように手を組み瞳を輝かせ、お姉ちゃんは私を見てウインクと一緒にグッジョブ風に親指を立てている。
エドお兄ちゃんとキースお兄ちゃんはケルベロスを抱いて私に微笑み、ウィリアム王子様とダリオン王子様も笑顔で私に同意してくれた。
「アンジュは正しいよ」
「小さいのに偉いな」
「あぁーとー(ありがとう)」
パパと王様は驚きすぎて目が点になってる。
4歳くらいにならないと上手く話せないな。
こればかりは成長を待つしかないよね。
ところで、今更だけど気付いたことが……。
王族の血筋のみなさんは銀髪碧眼!
男性はイケメン、女性は美人だ。
私だけ違うけど。
でも、今の容姿は大好きだよ。
だって私のことを最後まで命をかけて守り、愛してくれた両親から生まれたんだもの。
髪はお母さん似の淡いシルバーピンクで、瞳はお父さん似の淡いパープルだ。
こういうので虐めてくる奴がいるだろうけど、私はこの容姿に誇りを持ってる。
だから何言われても平気……たぶん。
泣いちゃう時があるだろうけど、それはその時に考える。
私はダイニングルームをソッと抜け出し、リンとサンに外の空気に当たってくることを伝えた。
リンは私の肩に座り、サンはみんなが騒ぎ出したら伝えると言ってダイニングルームに残った。
色とりどりの綺麗なバラを見ながらベンチに座り短い溜息を吐き。
空を見上げながら思った。
青空なのは地球と変わらないな。
……異世界転生……漫画やテレビ、ゲームもしてたから普通に過ごせるけどさ。
もし、漫画もゲームも何も知らない真面目な私だったら怯えて部屋に引きこもってるんだろうな。
そんな事を考えているとウィリアム王子様が隣に座っても良いか訪ねてきた。
「……隣に座って良いかい?」
「ぁい、どうじょ」
ウィリアム王子様が隣に座った時にリンが気遣ってくれたのか、ダイニングルームへと飛んで行った。
手を振るリンに、私も手を振りながら遠ざかるリンを見送り、ウィリアム王子様の綺麗な瞳を見ると。
「悩み事かい?
僕で良ければ聞くよ?」
「……ぁのね、わたち、だけ、ちがうの(わたしだけちがうの)」
「何が違うんだい?」
「かみ、と、おめめ、ちがう、から、いつか、だれか、に、いわれる、の、が、こわい。(かみとめがちがうから、だれかにいわれるのが、こわい)
みんにゃ、きらい、に、ならな、いで、ほちい(みんな、きらいにならないでほしい)」
「僕はアンジュの髪と瞳は綺麗だと思ってるよ。それに僕はアンジュの髪と瞳だけでなく君自身が好きだよ?」
「ほんと、でちゅか?(ほんとですか?)
きらい、に、ならない、でちゅか?(きらいにならないですか?)」
「ははは、嫌いにならないよ。
むしろアンジュが好きなんだけどな」
「……あぁーと……(ありがとう)」
これって告白……なんてことないか。私ってば自意識過剰すぎだわ。でも、ウィリアム王子様のおかげで少しだけ気が楽になったな。
ここのバラ園はどこまで続いてるんだろう?
探検したいという子供心がくすぐられる。
一人で探検……なんてさせてくれないよね。
チラッ……、笑顔で返されたよ。
うぅーーん、行きたいけどウィリアム王子様がいるし。
そうだ、探検という名の『案内』をしてもらおう。
「おうじ、しゃま、ばら、が、みたいでちゅ(おうじさま、バラがみたいです)」
「案内するよ、転ぶと危険だから……失礼」
軽々と抱かれ、奥へと進んで行く。
着いた場所はたくさんのお花が明るく光り輝いたかのように爛漫に咲き、周りを見れば多くの多種類の花が綺麗に咲き揃っていた。
うわぁーー、凄い。
こんなに色とりどりのお花を見たのは初めてだよ。
キラキラと目を輝かせ、身を乗り出した私を見てソッと降ろしてくれた。
「ここはね、王族や王族関係者……僕たち身内しか入れない場所なんだよ。
アンジュは身内だから入れるから、いつでも歓迎だよ」
なんかこういうの特別って感じがして嬉しいな。
ニヤニヤ……やだっ!
顔がニヤける。
……ん?
……っ!!
何か……来る。
禍々しくて、恐ろしいモノが!
素早い動きで黒い影が、大きな牙をギラリと光らせながら突進して来ようとしている。
危ない、このままだとウィリアム王子様が襲われちゃう。
そんなの、ダメーー!!
私は全速力で必死に走り、ウィリアム王子様の体に向かって思い切りタックルをかまして黒い影の攻撃を阻止した。
「うっ……ア、アンジュ……っ!!
魔物っ!!」
「ケル、ベル、ルル、たちゅけてーー!!(ケル、ベル、ルル、たすけて!!)」
あの黒いローブは誰?
何で宙に浮いているの!?
怖い……かも。
顔は見えないけど殺気が私に向けられている?
黒い魔物が私に向き、ダラダラとヨダレを垂らし、今にも食らいつきそうな勢いだ。
ケルベロスは名を呼んだ瞬間、元の大きさになって助けに来てくれた。
風の精霊シンリーが現れ強風の盾『ブロウシールド』で守りを強化し、ウィリアム王子様に退路の準備を伝えた。
「ガザニアの王子よ、退路の確保を準備しておきなさい」
「はい、分かりました!」
「良い返事です」
シンリーは私を見て頷き、攻撃の許可をくれた。
よくもウィリアム王子様に攻撃をしたな!
私の反撃なんだから。
覚悟しなさい!!
「面白かった!」
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「早く読みたい!」
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