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第13話 平田の説得

 「第14病棟です。」

「はい。鈴木先生、放射線科からです。」


看護師が鈴木に放射線科から内線で電話があることを伝えた。すぐに鈴木は看護師から受話器を受け取り


「お電話替わりました鈴木です。」

「放射線科の平田だが、田中敏江さんは緩和ケアの患者さんか?」

「はい、そうですが。」

「今回の治療箇所が普通より多いがこれで問題ないのか?」

「はい、がん細胞を死滅させるのが目的ですから、今回はこれで十分です。」

「それにしても多過ぎじゃないのか?」

「いや、治療が目的ですからこれでもまだ足りないくらいです。」

「治療?ケアが目的の治療だよな。」

「いいえ、体内から完全にがん細胞を無くすための治療です。」

「治療ってこんな状態で完治は・・・・、電話じゃうまく言えないから放射線科に来てもらえないか?」

「わかりました。今すぐ伺います。」


鈴木は電話を切って放射線科に向かった。平田は田中のCTの画像写真を新たに見て、こんなの治せるわけ

ないだろと憤慨していた。その間、待ち席の田中は体調が少しずつ悪化してきて今すぐにでも倒れそうだ

った。

 鈴木が放射線科に到着してすぐに診察室に入った。そこには平田が画像を見て、難しい顔をしていた。


「田中の主治医の鈴木です。」


と鈴木は平田に自己紹介をした。平田は鈴木が若いと知り、呆れて


「こんな状態で治療して完治すると思うのか?」


と鈴木を問い詰めた。鈴木は自信なく平田を前にして治ると言えなかった。


「画像からはっきりわかるのは10数か所、見つけれないのを含めれば100近くあるだろ。」


平田は鈴木に教えるように語った。鈴木は平田の言うことを受け入れながらも


「小さいがんは薬で根絶します。だから大きい病巣だけを放射線で小さくしたいのです。」


と平田に訴えた。


「小さくしてどうする?」


平田は鈴木の治療方針が不可解で受け入れられなかった。


「小さくして薬で無くします。」


と鈴木はそう答えた。


「それで完治するならすべてのがん患者は助かっているはずだが?」


平田は鈴木の甘さを厳しく追及した。鈴木は平田の正論には反論しようがなかった。


「とりあえず痛みを減らすためのリンパ節への照射はするが、治療は悪いがあきらめてくれ。」


平田は鈴木に治療をあきらめるように言った。鈴木ははいそうですかと治療をあきらめることが

出来ないから返事は出来なかった。

 その頃、田中は気分がひどくなり待ち席に横になった。その田中の異変に気付いた放射線科の

看護師があわてて田中に呼び掛けた。そしてすぐに診察室に入って


「先生!田中さんの具合が。」


とあわてて平田を呼んだ。平田と鈴木はあわてて待ち席の田中の元に行った。そして看護師はす

ぐに第14病棟に連絡した。


「はい、第14病棟です。」

「放射線科ですが、田中さんの容態が急に悪くなりまして。」

「わかりました。すぐ駆けつけます。」


14病棟の看護師はすぐに受話器を置いて


「武田師長、田中さんの容態が急に悪くなったと放射線科から連絡がありました。」


と武田に伝えた。高橋もそれを聞いて愕然とした。田中の状況観察を怠った高橋のチームのミス

だった。高橋はあわてて配下の看護師2名を放射線科に派遣した。



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