再開2
「あー!シャロル様!お久しぶりです!おー、こんなに大きくなって!」
突如としてシャロルの前に現れたウィルらしき人物は、まさしくウィル、ウィリアム・ギルガルドであった。
「ウィル・・・どうしてーー」
「いやー、あんなに・・・『豆ひよこ』のように小さかったシャロル様が・・・」
「っ!むぅ、そんなに小さくなかったもん」
「そうでしたか?広場の遊具に背が届かずよく泣かれていたような」
「あああ!その話は駄目ぇ!」
容姿はもちろん、謙虚で穏やか、そして、朗らかで楽天的な性格も。
おかげで、シャロルの恥ずかしい過去話と引き換えに、感傷的な空気が弾け飛んだ。
「それにしても、シャロル様がここに御入学とは・・・ああ、だから副隊長は・・・」
彼女のまるでジェットコースターのような感情の起伏そっちのけで、ウィルは思案、そして、納得した様子でブツブツと独り呟きながら頷く。
そんな彼に対して、言いたい事、聞きたい事は山のようにある。
だけど、状況はどうであれ、今こうして再会できた。
だから、言いたい事も聞きたい事も、後でゆっくりたっぷり言えば良い、聞けば良い。
だから、今はーー
「ウィル、報告して。今の状況、正義はどちらにあるの?」
誇り高き元アンデリア王族として、恩あるカルドライト家の一員として、もう二度と大切な人や場所を奪われないよう、数多の悪意から正しきものを守る事が優先である。
たとえ、その悪意が些細なものであっても見て見ぬ振りはしたくない。
シャロルの凛とした眼差しや姿に、一瞬眩しそうに目を細めたウィルであったが、すぐさま表情を引き締め、プリシラ皇国流の臣下の礼を執り報告する。
ただ、その口元に郷愁の笑みを僅かに浮かべていたのだが、あいにく下を向いているので誰にも気付かれる事は無かった。
「はっ。男子学生が女子学生に対し過剰な侮辱をしていたので介入しました。正義はこちらにあります」
ウィルは手本のように今の状況を正確、簡潔に伝える。
「ありがとう。では、貴方、申し開きはありますか?」
「あ?お前ら邪魔な上に面倒くせえ真似しやがって!これは躾だ!申し開きも何もねえよ!ただ大人しく殴られてりゃ良いんだよ、雑魚どもがっ!」
シャロルはウィルの報告に頷いた後、反論や理由があるか士官学生の男子に問い掛けたが、彼は聞く耳を持たず、再びウィルへと殴りかかった。