能力者
姫野に案内された部屋は実に素晴らしかった。
ふかふかのベッド。高そうなオシャレな机。個人用の部屋なのに何故かあるソファー。
「住み込みでもこのレベルだとむしろいいな。」
と思わず呟いてしまうほどだ。
「よっと。」
ふかふかのベッドにダイブして精一杯くつろぐ。
今日は肉体的披露こそはなかったが姫野と喋っている時の視線。ハリウッドの車。いつの時代の貴族か?と思うほどの家。
今はその疲れた精神を存分に癒しておこう。
そのまま俺の意識は暗転してしまった。
「雨宮様。夕食の時間です。」
「ん?ああ。了解した。」
どうやらすっかり寝てしまったようだ。
普通にお手伝いさんがいるのは流石といったところか。
俺はそのままテーブルまで案内された。
そこには姫野の父親と思われる優しげな目をしている男性とおっとりしていそうな女性がいた。
2人ともなかり美形だったので今の姫野の容姿にも納得というものだ。
「申し遅れたね。私が凪の父でダイアファナスのボス。そして今回の君の依頼人だ。さ、そっちも聞きたいことはあるだろうし、座ってくれ。」
「ああ。」
「では」
やはり高価な椅子に腰を下ろす。
「じゃあまず聞かせてくれ、なぜ俺なんだ?」
「なんだ、そんなことか。それは君のボスから君が頭一つ抜けて優秀だと聞いたからね。実の所、我々の組織に貰えないかと君のボスと父親に掛け合ったが『やだ。』としか返してくれなかったんだよ。」
ボス、か。
それにしても自分がここまで評価されているとは思ってなかった。
俺の能力をバッサリ説明すると自分では何も出来ない能力と取られるだろう。
本来は喜ばしいことだがこの仕事柄、素直に喜べない。
「あと、ひとつ君に伝えたいことがある。」
「それは?」
「それは組織立って行動しているのはこちらだけではないということだ。」
なるほど。敵も一枚岩じゃあないみたいだな。
「更には、その組織も私たちと同じように能力持ちが複数いる。そしていくつかわかっているものもある。」
この情報力さすがはダイアファナスのボスだな。
「まずコードネームベルセルク。能力者は狂戦士化だ。これは極めて珍しいタイプの能力だが非常に厄介なものでもある。この能力を使うと理性がほぼ保てなくなり戦闘能力が大幅に向上。それこそただの接近で瞬間移動をしてるようにも見えてしまうぐらいらしい。次に、コードネームアヴィ。能力はゴーレムマスター。大型ロボットでの戦いが主流だと思われがちだがだが小型ロボでの情報収集などと、没用性がある。最後に幹部と思われるものだ。コードネームディスティニィー。能力は分からないが能力持ちだということは確かだ。そしてかなりの強さの能力だろう。今言ったこの3名の能力者、覚えておいてくれ。」
なるほどかなり強い能力者が多いいみたいだな。
特にディスティニィー。幹部だしかも能力を見せていない。他人を使ってくるタイプの能力だといいが自身をを強化させる系だとまずいかもな。
あまり関わりたくはないな。
「了解した。んで今後の方針については何も言わないということは姫野が説明した通りでいいんだな。」
「ああ。そういう事だ。娘をよろしく頼むよ。」
「ふたつの組織のボスから頼まれてんなら失敗は許されないな。精一杯やらせてもらおう。」
それを聞くと姫野父はニヤリと笑った。
「それが聞けたら満足だ。ああ、普段は精一杯もてなすからくつろいでくれていい。では、私は忙しいのでこれで。」
そう言って姫野父はスタスタと歩いて行ってしまった。表も裏もどちらの仕事も責任重大だそれは時間が惜しいだろう。
では、お楽しみの夕食を頂こうかね。