#7:心装バトルの授業
心装を使った授業です。
最近早めのペースで投稿していますが、他の作品との兼ね合いもありペースは各段に落ちる可能性があります。
「おや、皆さんいい感じですね。私の期待以上です」
ルシアン先生が俺たちの方を見ながらそう言ってきた。生徒の中には「流石エリスちゃんだ」とか「隣の奴にも教えてあげているんだろう」とか言ってる奴がいたけど逆だからな。というかお前たち、さっきからちろちろ見てたの知ってるんだぞ。
「こんなに早く全員が心装を使いこなせるとは思っていませんでした。そうですね、これなら実際に決闘を行ってみてもいいかもしれませんね。そうですね、ではまずはブレット君」
「はい!」
あの金髪の生徒――ブレット君が呼ばれるのか。まぁ一番やる気ありそうだったし、妥当なところだろう。もう一人は誰だろう、心装の使い方に詳しそうな人だろうから中等部出身の生徒だろうか。しーちゃんが選ばれたりして。
「もう一人はそうですね、七咲君お願いします」
「え、俺ですか⁉」
「そうですね、水上学園都市序列10位のアルガに『心装』を使わせるぐらいですからね。ちょうどいいぐらいでしょう」
なるほど、序列とか詳しいことはよく分からないが舐められてるってことは分かった。エリスとしーちゃんが見ている手前無様を晒すわけにはいかない。
「よろしくね、七咲君」
「ああよろしく」
俺たちは先生の前で握手をした。俺は一瞬渋ったんだけど、先生の圧に負けて直ぐに握手をした。だから握手をさせられたと言った方が正しいのかもしれないのだがな。
「決闘を始める際には、ホログラムを開いた後、近くにいるプレイヤーを検索から名前を検索した後、決闘を受理することで出来る。ちなみに訓練場あるいはある程度の広さがないと〖決闘は開始できません〗と注意が入るから気を付けてください」
「あの先生、決闘をしなくても心装を使って同じようなことは出来るんですよね?」
ブレット君がルシアン先生に聞いていた。するとルシアン先生は微笑していた。
「なるほど、そこに気が付きましたか。ですがちゃんと違いはあります。決闘が成立すれば結界が展開されます。これにより外部からの干渉を防ぐだけでなく、内部からの干渉も完全に防ぐことが出来ます」
「でもそれだと、結界内で致命的なダメージを受けたら救助が間に合わないんじゃないでしょうか?」
一人の女子生徒がルシアン先生に聞いていた。でも俺はあの人の攻撃を喰らったはずだったけど、制止員的な疲労はあっても受けたダメージは残っていなかった気がするけど。
「七咲君は感じたかもしれませんが、結界内には特殊な魔術が施されており死ぬことはありません。結界内では実際の体力は減っていないので、外に出たら死ぬということも勿論あり得ませんね」
なるほど、だからダメージを受けた感覚がなかったんだ。この学園都市の技術は一体どうなっているんだろう。
「では早速2人にはソロバトルを行ってもらいましょう。ちなみに他にもペアバトル、チームバトルがあります。これらはソロバトルつまり1vs1で戦うよりも戦略性が増します。2vs2や4vs4であれば仲間との連携が必要になってきます。一応現在の公式大会……そうですねフェスタ何かではこの3つが主流です」
『決闘』っていくつか種類があるんだな。2vs2ってことはエリスと組んだりも出来るのかな。
「さてとそれでは申請してください」
「えっと、こうですか?」
ブレット君がそう言うと、俺のホログラムが反応した。決闘が申し込まれている。俺はこれを受理した。
〖それでは水上学園高等部一年生ブレット=ジョン=クレイマー選手と同じく水上学園高等部一年生七咲智樹選手の決闘を開始します〗
あれ、あの時こんな紹介はなかった気がするんだけど。おそらくだけど登録が間に合っていなかったとかか。おっといけないいけない。今は目の前の相手に集中しないと。
〖3……2……1……GO!〗
「行くぞ【ルーチェ】」
「行くよ【プレスビート】」
ブレット君の『心装』は【プレスビート】という刃の部分が橙色の剣だ。リーチは若干だが向こうの方が長いぐらいか。まぁこれぐらいは誤差だろうけど。
「動かないのかい?ならば僕から行かせてもらうよ」
そう言うと彼は突っ込んできた。けれど、アルガさんに比べればそれほど速くもないし、重くもない。俺は剣でブレット君の攻撃を防いだ。
「随分簡単に防ぐんだね」
「そりゃあ、まぁ伊達に一度敗北してねえよっと」
またしても、簡単に剣で防いでしまった。
「2人ともスキルを使った方がいいですよ。最低一つは今の段階でも持っているはずです」
ルシアン先生がそう言ってきた。ちっ、余計なことは言わなくてもいいのに。まぁこれで平等か。この状態で倒してこそ意味があるのだ。いつまでも俺が弱いとかエリスのお荷物とか思われたくないしな。何よりエリスに格好いいところを見せたい。
「なるほど僕のスキルは……『攻速』」
ブレット君はそう言うと先程までのスピードより一段階早く俺のもとに踏み込んできた。それを再び剣で防ごうとしたのだが、先程よりも攻撃が重く少し攻撃を喰らってしまった。さっきまでの攻撃だったらこんなことはなかったはずなんだが。『高速』だから素早さがあがるだけだと思って油断していたな。
「『攻速』は字の通り攻撃と素早さが一定時間上がる技ですね。補助型のスキルですか……しかし、これは運が悪いですね。今の貴方のステータスならば1.5倍になったところでさほど変わらないです」
ルシアン先生は最後の方小声で何か言っていたが、俺にはばっちりと聞こえていた。ステータスは多少上がっていたとしても、そこまでではないのか。今早さは互角、いや俺の方がまだ少し上回っている。なら素早さをさらに上げてしまえば、コチラが優勢になるだろう。そして、俺のスキルはちょうど素早さを上げるものである。
「そろそろ厳しくなってきたね。『攻速』の効果も永遠ではないし、これで決めさせてもらうよ!」
そう言うとブレット君はさらに加速して俺に斬りかかってきた。それも左側から。俺は右利きだから左からの奇襲に弱い。何とか剣で抑える。先程よりも若干素早さは上がっていたが、『攻速』を使った時ほど上がったわけではない。おそらく気持ちの部分が左右しているのだろうな。攻撃も重くなっている。その攻撃を先程までとは違い、何度も斬りかかってくる。それを俺は剣で弾き続けていた。
「これで終わりだ!」
俺はニヤッと笑った。この瞬間を待っていた。ブレイド君は焦ったのか剣が大振りになっていた。俺はここぞとばかりに『速剣』を使用してブレット君の裏側に回った。そしてブレット君を後ろから斬った。
〖決闘終了。勝者、七咲 智樹選手〗
「うおお!七咲が勝った」
「ブレット君が!」
「七咲君、カッコいい!」
決闘がクラスメイトの皆が褒め称えてくれた。若干だが俺のことをカッコいいと言ってくれる女子生徒の声が聞こえて嬉しかったのは秘密だ。
「とてもいい戦いでした。スキルの相性もありましたが、七咲君の相手の攻撃を防ぎつつ、隙を待つというのはなかなか良かったと思います」
相手の強さを図ってただけなんだけどな。まぁ褒めてくれたし、細かいことは気にしなくていいか。
「ブレット君も攻め時は悪くなかったと思いますよ。2人とも心装としっかりリンクして十分に使いこなせていたと思いますし、いい決闘だったと思いますよ」
ルシアン先生はブレット君にもアドバイスをしていた。これで時間らしく、今日の『心装』の授業はこれで終わりらしい。先生は訓練場から立ち去って行った。先生がいなくなるとブレット君が俺のところまで来た。
「いやぁ……まいったよ七咲君。僕の完敗だ」
「そんなことないぞ、少しでも気を抜いたら俺が負けていたからな」
これは嘘ではない。特に最後の一撃一撃はとても重く、意志が込められていた。
「そうかもしれないね」
ブレット君はそう微笑むと他のクラスメイトたちの輪に入って行ってしまった。
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