#1:水上学園都市イシュカ
新作書いてみました。
好評なら続きかきます。
「ここが……話には聞いてたけど。すごい大きいところだなぁ!」
俺は窓から、この船の行き先でもある巨大な島を見ながら、そう言った。水上学園都市イシュカ――今日から俺がお世話になるところだ。
西暦2〇〇〇年。人類は突如として、様々な異種能力を持つようになった。学者たちの間では人間が知らず知らずの内に進化したなどという人もいるが実際のことは何も分かっていない。俺たちは心装を持つことが出来るようになる人間が現れ始めた。しかし、心装の力は危険故に正しく使う必要性がある。政府は4つの学園都市を設立した。
『水上学園都市イシュカに到着いたしました。お荷物などお忘れになさいませんようにご注意願います』
「荷物は持った。心装も持ってきてるし、忘れ物もないな」
俺はそんな独り言を呟きながら周りを確認した。そして、部屋から出る。俺は学園にやっと着いたという喜びからつい船内の廊下を走った。
「きゃっ」
「いてて、すみません大丈夫ですか?」
狭い船内で走ったら誰かとぶつかってしまった。
「大丈夫です。こちらこそごめんなさい」
「いや、急いでたのは俺の方だし」
つい目を逸らしてしまった。俺は見てしまったのだ。肩にかかるぐらいまでの水色の髪に、パチクリとした大きな目のとても可愛らしい少女を。
「どうかしましたか?変な方見て」
「いや、なんでもないよ」
「そんなことよりも、よかったら一緒に行きませんか?」
その女の子は両手を叩くと、俺にそう提案してきた。
「他の誰かと行く予定はないのか?」
「はい、あ……もしかして私お邪魔でしたか?」
彼女はおろおろとしながら俺のことを見てきた。別に俺も1人で向かう予定だったし、別に構わないか。
「そんなことないよ。俺もちょうど1人だったんだ。良かったら俺と一緒に行ってくれるかい?」
「はい!……それで自己紹介がまだでしたね。私はエリス=フリッツです。エリスって呼んでください」
「俺は七咲 智樹だ。智樹って呼んでくれ。こちらこそよろしくな、エリス」
「うん、智樹君……何か恥ずかしいね」
そう言うとエリスは俯いてしまった。しばらく俯いていたのだが、突然急に俺の方を向いてきた。
「あのっ、これからどうすれないいんですか?」
「ああ、確か寮を決めなくちゃいけないんだっけな」
「寮……ですか?」
この学園都市にはさまざまな寮が存在しているのだが、その寮は主に3つのエリアに分けられている。その中でも特徴的なものが男子寮エリアと女子寮エリアで、男子は女子寮に女子は男子寮に無闇に入ってはいけないという決まりがある。エリアに入るだけであればいいとのことらしいのだが。
「寮に関する……あれ?何か忘れている気がする」
「そうなんですか?」
あれ、どうやって寮を決めるんだっけ。ここに来るのが待ち遠しいとか思っているだけで、調べてくるの忘れた。
後ろから肩を叩かれた。振り返ってみるとそこには長い紫色の髪の女性が立っていた。エリスとは違い、可愛さよりどちらかといえば美しいという言葉が似合っている人だ。
「お困りのようだね、新入生君」
「あ……えっと、私たち島に着いたばかりでどうしたらいいのか分からなくて」
「そうかそうか、まずは生徒登録をしないとだね。お姉さんが案内してあげようか?」
「お願いします」
やけに彼女の距離が近い。背中に当たる柔らかい感触に耐えつつ俺は返事した。
「ここでまずは登録をしなさいな。中にいる職員が対応してくれるはずよ。じゃあお姉さんは忙しいので、あとは頑張ってね」
「あ、ありがとうございます」
俺が感謝の言葉を伝えると、彼女はニコッと笑った後、直ぐに走って走り去ってしまった。
「いい人でしたね?」
「ああ、そうだな」
彼女は困っている俺たちを送り届けてくれた。別れる時の様子からして、彼女が急いでいたことは間違いないだろう。それにも関わらず、俺たちにここまでしてくれたんだから相当優しい人なんだろうな。
「それじゃあ、入ろうか」
「そうだね」
建物の中に入ると待合席がありその奥に窓口が3ヶ所横並びに存在していた。生徒用、来賓用、その他の3つに分かれているのか。どうするのが正解なんだろう。確か案内図に書いてあったよな。
「登録はその他と書かれた窓口で行うのか」
「あの、ここで先に受付をするみたいですよ」
エリスは機械を指しながらそう言った。
「私こういうの疎いんで、先にやってください」
エリスが若干恥ずかしそうに俺に言ってきた。これくらいならお安い御用だ。えっとまずは何をするかっていう選択かな。えっと、新入生用登録ってボタンがあるな。これをおせばいいのかな。おっ、次が出てきた。何々人数を入力すればいいのか。どうせなら、エリスの分もまとめてやるか。
「エリスの分も一緒に受付していい?」
「あ、構いませんよ」
人数を入力し終えると、番号の書かれた紙が出てきた。窓口の上にあるモニターを見ていると番号が記されていた。なるほど、この番号が呼ばれるまでは座ってていいのか。
「受付終わったよ、エリス。しばらくそこに座って待とうか」
「分かりました」
「493番の方、493番の方。受付まで番号札を持ってお越しください」
「おっ、呼ばれたみたいだな」
「やっとですか。長かったですね」
三十分ぐらい待った後、俺たちの番が来たので重い腰を上げながら立ち上がった。ずっと座っているといざ立つ時辛いんだよなぁ。
「えっと、あなた方は新入生の方で間違いないですよね?」
受付のお姉さんが、カウンターの下に設置されているパソコンを見ながら俺たちに聞いてきた。受付の時に一応そう選択したのだが、おそらく念の為のチェックなのだろうか。
「はい、私たちは新入生です」
「そうですか。では」
エリスが言うと、お姉さんは右手をグーにして口元に当てコホンと言った。それって実際にいう人いるのか。
「ようこそ、水上学園都市イシュカへ」
「ありがとうございます!」
何て返事をすればいいんだろう。そんなこと急に言われても返事の仕方が思いつかねぇ。エリスは呆気なくというか、普通に返してたけど。
「大体の説明はパンフレットに書いてある通りです。まず初めに生徒証を発行させていいですね。それではお一人ずつこの機械に手を添えてください」
受付のお姉さんはそう言うと、カウンターの上にある小さな機械に手を置いた。なるほどこうやればいいのだろうか。お姉さんが手を話したのを見て、俺も真似をする。
〖登録完了しました〗
「これでいいんですか?」
「はい、エリスさんも同じようにやってみてください」
「分かりました」
エリスも俺と同じように機械に手を当てると、先程と同じく登録完了を伝えるアナウンスのようなものが鳴った。
「はい、これで完了です。それでは最後にこれだけはよく使う言葉なので絶対に忘れないようにしてください」
受付のお姉さんが真面目な表情になる。どんなことを言うのだろうか。俺たちは話を聞き逃さないように耳を傾けた。
「一つ目、これは知っているとは思いますが、心装を出すときは武器の名前を言って出してくださいね。武器ごとに出すときに名前の前に色々付けなくてはいけないのですが、コチラについては後で分かるでしょう」
受付のお姉さんの質問に俺は首を傾げた。心装を出すためにはただ武器の名前を出すだけじゃ駄目なのだろうか。
「二つ目は生徒証についてです。先程お二人が登録した生徒証は体に埋め込んであります。勿論身体的な害はありません。そちらは『カードオープン』と言うことで目の前に画面のようなものが表示されます。これが生徒証です」
生徒手帳に近いものなのかな。いや、どちらも兼任しているって感じで間違いないのだろう。お姉さんの話によると、ここを見ればほとんどのことは書いてあるっていうし。
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