兄と妹、映画演劇合戦(脚本)
人物
三谷純一(12)小学6年生
三谷亜子(10)小学4年生
水森幸代(56)アルバイト
〇三谷家・中
テレビを見ている三谷純一(12)と、漫画雑誌を読んでいる三谷亜子(10)。
純一「今週のナイト様もかっけぇ……」
テレビを見ながら心酔した表情になりテレビ画面には仮面ライダー龍騎が映っている。
イライラした表情で一心に紙を荒々しくめくる亜子。
亜子の心の声「今日のちゃおの新連載、期待してたのになんだこれ。またワンパターンじゃねえか! ドジっ
子ヒロインが校内一のイケメンと出会って最初の出会いは最悪だったけどだんだん恋愛感情が芽生えてい
ってって! もう飽きたわ! その点『ミルモでポン!』すげえぜ……。毎度少女漫画のレベルを超えるギ
ャグをかましてきやがる。次はどんな展開があたしを笑わせてくれるんだ!?」
純一「亜子ー。オレ今日仮面ライダー龍騎の映画見に行きたいんだけどさぁ。お前一緒に行かない?」
亜子「はぁ? 純一一人で行けよ!あたしはちゃおの分析で忙しいの!」
純一「いやこの歳で仮面ライダー映画とか恥ずかしいんだって! いいからちょっと来いよ」
純一、亜子に向けて手招きする。
亜子「ちっ! 仕方ねえな」
亜子、雑誌を置いて立ち上がる。
亜子の心の声「こいつ何考えてやがんだ?」
〇映画館・ロビー・中
きょろきょろと周囲を見渡す純一。
その後ろを訝し気に歩く亜子。
亜子の心の声「バカ兄貴について来てやったはいいが、さっきから妙な動きしやがる……。こいつマジで何考
えてんだ?」
振り向く純一。
純一「(小声で)亜子、お前演技しろ」
亜子「は? お前何言ってやがる」
更に亜子の耳元に口を近づけ、周囲を見る純一。
純一「オレくらいの歳でオレが映画見たいから来たとか周りの目ぇ気にすんだろうが!」
亜子の心の声「12歳で仮面ライダー映画恥ずかしいか?」
純一「いいか耳貸せ!」
亜子の耳元でゴニョゴニョ何か囁く純一。
〇同・チケット売り場・前
水森幸代(56)がチケットを売っている。
亜子「あ~あ、龍騎の映画見たいな~‼」
柱の影から急に現れる亜子。
幸代の目の前までわざとらしく歩いてくる。
亜子「ねぇ、お兄ちゃんいいでしょ?」
純一、柱の影からひょっこり現れる。
純一「しょうがねえなあ。オレは仮面ライダーなんてあんま興味ねぇけど……。妹の頼みじゃあなあ~」
わざとらしく幸代の方を見る純一。
幸代「あ、仮面ライダー見たいの? 優しいお兄ちゃんだねぇ。子供は一人800円だよ!」
笑顔で純一と亜子を見る幸代。
幸代、手招きする。
純一「ほら亜子行くぞ! もうすぐ始まるしよ」
ため息をつきながら亜子の背中を押し、幸代の元へ促す。
亜子の心の声「あ~あ、妹も大変さ」