★課題2:ダンジョンをつくろう(つくれない)★
僕が落ち着いたのを見計らって、女性は呆れた風のため息をつきながらも再度説明を始めた。
「今はお金が足りないので、ダンジョンを増設したり、複雑化させたりすることが出来ません。
ダンジョンが産まれ、ダンジョンハートも召喚されてしまったので、今頃冒険者たちが大挙してこちらに向かってきているはずですが」
「ええと、ダンジョンハートって何ですか?」
「あなたのことです。
ここは産まれたてのダンジョンで、あなたは産まれたてのダンジョンハートなのですよ」
「僕、そんな珍妙なものになった覚えはありませんよ……ただの名もなきレオパ厨です」
「隙あらばレオパの話に戻すのをやめてもらえますかね。
……コホン。この世界では災害が起きると迷宮型生命体つまりダンジョンが生まれ、ダンジョンは自分自身を維持するために魔法の力で異世界人を召喚し、ダンジョンハートと言う名のエネルギー源に変えるのです」
「……。……ええと、全く訳が分かりませんが、それってレオパとはどんな違いがありますか?」
「レオパとは全く関係がありません。
本当に、頼みますから、真面目に異世界の話を聞いてください」
「わかりました」
「……ダンジョンハートであるあなたを捕まえて殺すと高額の魔法結晶に変わるので、冒険者たちは必死になってあなたを探し出し、殺そうとやってきます。真面目にダンジョンマスターをやらないと、あなた死にますよ」
「ええっ、そんなぁ」
「状況のまずさがご理解いただけましたか?
……突然の死刑宣告に戸惑ってしまう気持ちも分かりますが、とにかく今は時間がありません。
このダンジョンの再奥にまで冒険者にたどり着かれてしまったら、あなたは死にます。逆に冒険者を殺すことが出来れば、冒険者の持っていたお金があなたのものになります。
殺しすぎると『あのダンジョンは難易度が高い』と冒険者に敬遠されるので、あまり殺しすぎないように、ほどほどのペースで殺すのが良いでしょう。死なないように頑張ってくださいね。目標は20000ゴールド。頑張って集めましょう」
「なるほど、よくわかりませんが頑張ります」
僕が素直に頷くと、女性も真面目な表情で頷きかえして話を進めた。
「それではまず、冒険者が脱落しすぎないように、かつ簡単に攻略もされないように、適切にモンスターを配置していきましょう」
「モンスター?」
「冒険者に襲い掛かる化け物のことをそう呼びます。ダンジョンにモンスターを配置することで、冒険者の侵入を防ぎ、モンスターに冒険者を倒させることで冒険者のゴールドを手に入れることもできます」
「……つまり、従業員のようなものですか?」
「あー……そんな感じです」
女性はあいまいな雰囲気で頷いた。多分少し違うのだろう。だが大体同じらしいのでこのまま話を勧めさせてもらう。
「なるほど、従業員の雇用ですか。
ええと、スイ―パーとメカニックとエンターティナー以外にはどんなモンスターがいますか?」
「そんな奴らはいませんっていうかそいつら全員モンスターじゃないでしょ……」
女性がまたもやため息をつく。
段々僕に対する扱いがぞんざいになってきているような気がするが、正直僕はぞんざいに扱われてしかるべきレベルのダメ人間なので特に文句はない。
「従業員はモンスターではないのですね。分かりました」
「基本的過ぎるほど基本的なことだとは思いますが、お判りいただけて嬉しいです。
……さて、そこの暗がりの中に薄よどんだドブ沼みたいなものがあるのが分かりますか? そこがモンスターボックスです」
女性は篝火の光も届いていない暗がりを指さしてそう言った。暗がりにはまだ何もいないように見える。
「なにもいませんよ?」
「今はまだね。じきに無限に湧いてくるようになります。
モンスターは一定時間ごとにあのモンスターボックスから自動的に無限に湧いてくるので、好きな場所に配置してください」
「配置……命令でもすればいいんですか?」
「いいえ、配置にはマジックアイテムを使います」
そう言って女性がついと片手をあげると、彼女の動きに応えるように、空中に白い手袋をはめた手が出現した。大きさは大柄な男一人分はあり、かなり大きい『手』だなと僕は思った。
「これはマジックハンド。操作盤を持ったあなたの念ずるとおりに動く魔法の手です。これを使ってモンスターをつまみ上げて移動させてください。モンスターは操作盤を持ったあなたの言うことなら聞」
「レオパだ……」
「は?」
「すごい……宙に浮いた白い手袋までこの目で見ることが出来るなんて! レオパとおんなじだ! これ、レオパでもみたことがありますよ! やっぱりレオパは凄い! レオパは偉大n」
「うるさい! いい加減レオパの話を止めて現実の異世界と向き合いなさーいっ!!」