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はずれもの  作者: 川内嘉治
現実なんてこんなもの
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現実なんてこんなもの5

「おーはよー!……どした?」

 学校にて。元気に声をかけるも様子のおかしい沢村に気づいた市原。

「おはよ……、昨日、ちょっと眠れなくて……」

 声のトーンが低くても挨拶をかわし眠れなかったことを話す沢村。

 とはいえ、眠れなかった理由までは話せなかった。

 昨日見た光景、あれは本当に現実だったのか。沢村には自信がなかったからだ。

 不良が狼男になった。言葉にすればただの冗談にしか聞こえない。

「おー……、その様子じゃ今朝のニュース見てない感じか」

「今朝?見てないけど、何?」

 新しいドラマの予告?とたいして興味なしに尋ねる沢村に市原は「違うよ」と返す。

「事件、それもヤバめのね」

 その声音がいつもよりも低く聞こえたのは気のせいだろうか。

「沢村はさ、『獣爪連続殺人事件』って聞いたことある?」

 それは、聞いたことが。

「ある、けど……」


 『獣爪連続殺人事件』。最近のニュースでは特に挙がっている事件だ。

 被害者は全員、獣の爪で引き裂かれたような傷が原因で全員死亡。傷の状態からどこか野生動物が抜け出して無差別に襲ったのではないかという見方が多いが、警察が事件と事故の両方で捜索していることを知ったマスコミがその凶器である獣の爪から安直に名付けられたその事件。


 事件の名前とその犯行はテレビやSNSのニュース等で聞いた事がある。

「それの新しい被害者、うちの区で起きたらしい」

 市原のその言葉に、ゾッとした。テレビ発信されていた事件が自分たちの近くで……?

「……どこ?」

「運動公園……どした?」

 眠気が吹き飛んだ。

 昨日、偶然行ったあの場所で誰かが殺された。


 狼男が道を無防備に歩く人間を息を吸うように爪で裂く。獲物を捕らえた人狼は喜びを示すように遠吠えをあげる。


 そんなホラー映画にありがちなイメージが沢村の脳内に浮かび上がる。

「……昨日、乾を見た。月原運動公園で……」

 しぼり出すようにもらした声を聞きとった市原は沢村の両肩をがしりとつかんで。

「……それ、誰かに話した?」

 その目は今まで見たことのない剣吞で。まるで知られてはいけない何かを知られてしまったかのような。その市原の表情に沢村はおもわず首をふる。

「ネットで呟いた?」

 もう一度首を横に。

 沢村のその反応に市原は「そっか」と両肩から手を離した。

「今日、家に来い」

「え?」

 突然のことに思わずたずねる。話しが見えない。

「家に来てから話す。とにかく今日はまっすぐ帰らずに一緒に俺の家。いいね?それと」

 乾に会ったら必ず逃げること。

 市原のその物言いは反論をまったく受付けない意思がみえた。


 チャイムが鳴り、担任の先生が教室へ入る。

 近辺に不審者情報が出たため今日は臨時休校することが連絡された。

 他の生徒から質問が来ても不審者ということ以外答えず、部活も全て休部されることも追加された。

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