表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はずれもの  作者: 川内嘉治
現実なんてこんなもの
2/28

現実なんてこんなもの2

「……っていう感じ、おかげで本をもう一度買いに行かないといけないのは痛いね」

 翌日、学校にて。友人である市原賢人いちはら・けんとに昨日の放課後に起こったことを話す沢村。

「あららー、それはご愁傷様」

 両手を合わせて軽く言う市原は男子にしては髪をややのばした、軽い調子の雰囲気をもつ生徒だ。

「あ、そうだ」

 真面目少年である沢村と対照的な市原はふと尋ねた。

「その昨日見た不良ってさ、どんなやつ?」

「どんなって?」

「いやさ、どんな不良が分かれば取り返せられない?」

「できる、かもしれないけど……」

 市原の提案はうれしい。うれしいが、正直なところもう一度会いたいとは思えない。

 そんな沢村の感情を読んだのか。

「沢村ってさ、空手やってるじゃん?無防備なところをねらってこう正拳突きとか、かかと落としってかませばいけそうじゃない?」

「やだよ、そんな暴力的手段」

 突きのジェスチャーを交えた市原の言葉に首を振る。

「そういう風に習ってないし、それに僕は」

「自衛のために通っているのであって現実では使いたくない、だろ?」

 遮った市原の言葉にうなずく沢村。

 そんな沢村を見て市原は「ま、お前ならそう言うよな」とたいして残念におもわず言い。

「でも、俺は沢村が会った不良が誰か知りたい!」

 だから教えて、と最初とは別の意味で沢村に手を合わせた市原にため息をひとつ。


 市原は、不良が好きだ。不良オタクといってもいい。もともと不良漫画好きだが現実の不良も好きになっている。

 以前、どうして不良が好きなのか聞いたことがある。市原はこう答えた。

 漫画とは違って現実で生きてる不良って何かしら理由とか原因があるんだよ、『普通』にも見える理由がね。

 そのとき市原は特に『普通』という部分を強調して話してくれた。どうしてそこを強調するのかもついでに聞いた。

 だって、そこが重要だからね。

 そこだけ、なぜかはぐらかされた。


「ほんと、どうしてそこまで不良が気になるのかわからないよ」

「まー細かいところはいーじゃーん。ほら、減るもんじゃないんだし話した話した」

 実際、本が一冊減っているのだがそれを言っても仕方がない。

 自分が知りたいものはなんとかして聞き出す。

 それが市原の性格だ。知っている。自分も似たようなスタンスだからだ。だから市原と友人でいられたのだろう。

 小学校からの幼馴染。同じ高校で同じクラスに入った辺りからは腐れ縁とも思う。

 わくわくした様子の市原にもう一度ため息をつき、沢村は昨日出会った不良について話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ