シナモンくるみのキャラメリーゼ
ポリポリポリポリ。
ポリポリポリポリ。
クルミのキャラメリゼなる魔力の強いおやつに出会ってしまったそもそもの始まりは繫華街で可愛い靴下を見つけたことだ。いつも困ったときに助けてくれる幼馴染にプレゼントしようと閃き購入したのは良いものの靴下だけでは味気がない。
高校性の時に一緒にパティスリー巡りをしたことを思い出し、お菓子を添えようと考えた。
定番はクッキーだな、とネットでレシピを検索してみると素敵な写真を発見。シナモン香るクルミのサクサククッキーとな。よし、これにしよう。
えーと、なになに。クルミのキャラメリゼをクッキーの生地に混ぜて焼くだけ!
おお!簡単そう!
もう夕飯時だし今からクッキーを焼くのは辛いからキャラメリゼだけ先に作っておこう。
クルミをオーブンで200gローストするってレシピには書いてあるけど面倒だからトースターで代用してしまおう。
200gってこんなもんか。バラバラバラ。
水とグラニュー糖フライパンにいれて中火にかける。
なかなか沸々ならない。短気はよくないな。でももしかして失敗したかな。不安になってきた。
お菓子を作るのは苦手なんだよな。完成してから材料を足せないから。手順が細かく、混ぜ方は作るものによって使い分けて、軽量も正確にしなければとんでもないものができてしまう。
理解はしているつもり。でも、チミチミ軽量するのはどうしても嫌だ。
かつて製菓教室に体験レッスンに行ったことがある。中級コースに!製菓レッスンなんて初めてなのに!
なんて無謀な、と今では笑ってしまうが、分からないって強い。
レッスンではサン・ベルナールというフランス菓子を作った。当たり前だが手際が悪い、と先生に睨まれながら作ったことも相まって最高に美味しかった。先生が普段はフランスでパティシエに弟子入りして勉強している方だったからか、正直ホテルやパティスリーで食べるどんなケーキよりも美味しかった。
製菓の本には『常温の卵を割って黄身を取り除く』ってよく書いてあるけど本当は違うんだよね。卵白の扱いって大事なんだよ。私も詳しくは忘れちゃったけど。えへへ。
とにかくねっちりしたオレンジピールとさわやかだけどしっかりした洋酒の香り、しっとりした生地は今でも忘れられない。
そういえば一番おいしい食べ方としては一週間寝かせておくことだって習ったな。
待ちきれなくて五日で完食しちゃったけど。
水だしのアールグレイと一緒に楽しんだ時間は本当に有意義だった。
さて、話をキャラメリーゼに戻して。
トースターのアラームが鳴ったので蓋を開けるとまあ香ばしいこと。
スプーンで掬って耐熱皿に乗せる。
フライパンを見るとやっとこさ小さな気泡が出てきた。
さらに待っていると大きな気泡がぶくぶく噴いてレシピに貼ってあるクルミの入れ時の写真と同じようになった。
ザザザー。クルミを一気にフライパンに入れて木べらでシロップと絡める。
中火のまま軽く混ぜながら待つこと三分。
クルミと絡まったシロップから水分が抜けてグラニュー糖の白い粉が吹いてきた。
よしよし良いぞ。
さらに炒めてクルミの色が少し濃くなったらバターと蜂蜜とシナモンを加えて完成だ。
艶々のクルミを耐熱皿に上げてまずは味見。
カリッ!
クルミの香りとカリカリの食感。バターとシナモンがほのかに優しく香るのがまた良い。生のクルミは苦いがグラニュー糖が苦みを打ち消してくれているため、つまむ手が止まらない。
ポリポリポリポリ。
ポリポリポリポリ。
ああ、いかん。みるみるなくなっていく。
ポリポリポリポリ。
ふと魔が差す。友人に会うのは明後日ではないか。つまみ食いを止める理由はない。明日の自分に負担をかけるが致し方ない。
「もういいや。また明日作ろう。」
あっさり敗北。
ポリポリポリポリ。