カミトバ
「君は選ばれたんだよ、時雨」
「……え?何に……」
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「今日から高校三年か……」
そう言って時雨は前すら見えない暗闇に包まれた部屋で体を起こす。勿論、辺りを見回しても目に映るのは黒一色だ。
「チリリリリリリン!!」
時雨の右側から、目覚まし時計がいつもの起床時刻を伝える。それを止めて、布団から体を出す。このくらい部屋の中どこから吹いてくるかもわからない、寝起きにはちょうどいいぐらいの冷たい風が吹く。
「寒い……」
そう言いながら時雨は右へと足を降ろし、立ち上がる。そのまま真っ直ぐ歩き、暗闇に包まれた壁に触れ、扉の取手を探す。開ければそこもまた、同じ暗闇に包まれていた。入ってすぐ左側にある白い壁を押す。カチッという音と共に扉が開き、何もかかっていないハンガーと服がかかっているハンガーの二つを出す。
「服、そろそろ増やした方がいいかな……」
そこには手に取った二つのハンガー以外には何もかかっていない。二つのハンガーを足元に置き、着ている服を脱いで空いているハンガーに引っ掛ければ中に戻す。もう一方のハンガーの服を着たら、ハンガーをかけ来た道を戻る。
「後は、時間待ちか………」
これから不定期ではありますが続けていこうと思います