粉雪に紛れ現れるもの 5
「・・・付き合ってねーのか、つまんね〜。」
「うっせーガキ。」
部屋に入るなり六畳の一角のベッドに寝転がる少年を見て、先ほどの考えは誤りではないかと思えてきた。
「・・・てか寝るなよ。」
「うわくっさ! これ天日干ししたのか?」
「勝手なやつだなお前は。したよ、三ヶ月前・・・・・・。」
「あーはいはい、じゃあ明日干してやるよ。てかさ、ただでさえ狭いこの部屋にゴミ多すぎねえか? ついでに片付けてやるよ。」
「お前は主婦か!」
なんと言うか、常識ないのかあるのかよく分からなくなってきた。てかおい待てその本棚は––––
「お、やっぱり本棚の裏に秘蔵のブツあるな〜。」
「ちょ、なんで見つけ・・・・・・てか人の部屋で好き勝手するなバカ!!」
それからこいつが寝るまで、俺はかなり神経を削った。
「おお〜! こんなに本があるのか!?」
翌朝、ユウマに叩き起こされた。まさか久々の休日まで早起きするとは思わなかったが、何よりこいつが『たくさん本のあるところないか?』とまた常識ない質問のもと、こうして高卒以来の葉坂町の大図書館に来ている。どうやらユウマは知識欲に飢えているようだ。この歳のことしては、特に男子としては珍しいのではないだろうか?
「あんまはしゃぐな・・・・・・て必要ないか。」
自動ドアをくぐってすぐに、ユウマは消えていた。数分探したら机のところにいて、数分で持ちきれない量の本を横に山にして読み更けていた。さすがに声をかけるのは気が引け、俺はひとまず久々に読書もいいか、と思いながら本を探した。
昔は結構本は読む方だった。もちろん漫画もだが文学も自分で言うのもなんだがかなり読む方だった。あ、人のこと言えないかもな・・・。
特に昔読んでいたある人の、ショートショートと言うジャンルの本を探していると、後ろから呼び止められた。かなり聞きなれた声に俺はすぐさま苦笑いで反応していた。
「・・・よう。休日に会うとは珍しいな。」
「何『あー、嫌な奴に会っちまったな。』みたいな顔しているんです先輩。私こそそんな気持ちですが?」
「・・・たった今、俺もそう思えたぞ。」
皮肉のセリフが似合う、季節ぴったりな『雪女』と言う称号が似合う同僚が、三冊の本を片手に後ろに立っていた。その一冊のタイトルは『人を凍らせ三千里』なんてよく分からんパチモン臭がするもので、しかしすごく似合っていて背筋が凍った。
「・・・いま、失礼なこと考えませんでした?」
「いや別に。」
「そうですか・・・・・・まあいいですが。」
そう言いつつ、何故か例の一冊をかなりチラつかせている。あ、俺凍り殺されるのかな・・・・・・。