表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ぼくとあたしの|恋物語《ラブストーリーズ》

バラが咲いた

作者: 濱澤更紗

 なみなみと張られたバスタブの湯に、お気に入りの入浴剤を入れていく。ぱかっと封を切って、1つ、また一つとそれを落としていく。落とすたびにぽちゃんという音とふわぁっとバラの香りが広がっていい感じ。

 バスルームを支配する甘い香りに包まれながら、あたしはゆっくりとバスタブの中へ沈んでいった。そして、その内側いっぱいまで身体を伸ばして、大きく深呼吸する。

 バラの香りが、全身に行き渡る感じ。

 うん。ゴージャスな気分。それだけで、心のゆとりが出来ていくって感じ。…あたしだけかもしれないけど。

 うっとりと自己陶酔に浸りながら、ほわぁんとため息なんかついてみる。それすらも甘いバラの香りのよう。気のせいだろうけど。

 しっかし。

 早くダーリン、帰ってこないかなあ?

 そんなことを考えているあたしの頭の中は、きっと脳天気な顔したまま花園に寝転がっているのだろう。

 愛しき彼は、いつもだったらそろそろ帰ってくる時刻のはず。なのに、そんな気配はつゆほど見せない。せっかく、ほかほか暖まったあたしの身体でぎゅーっと抱きしめてあげようかと思ったのに。そのままいちゃいちゃして、外で冷え切った彼の身体とココロを温めてあげようと思ったのに。

 そう思ったら、時間がたつのが遅く感じられるようになった。

 ああ、あのことも話したい、このことも話したい、あんな事もしたい、こんなこともしたい……。何より、彼を見つめ続けていたい。彼の、大きな手も、きれいな瞳も、厚い胸も、そしてどこまでも広い心も、何もかもすべて。

 そう思ってるのにぃ……。

 何してるんだろう? あたしも待ちくたびれちゃうよ。早く帰ってきてよー。えーん。

 気がついたら、どこかのお花畑の中。バラのお花がいっぱい。ああ、バラの香りがいい気持ち。赤に白にピンクに黄色に……。バラの香りで頭の仲間でほんわかほんわか……。


「……い。おいったら」

 むにゃ? なんか頭に当たった。痛いなあ、もう……。

「おい! 起きろって。いいから起きろ!」

「ほえっ?」

 思いっきりどつかれた衝撃が頭に起こり、あたしはそこで我に返った。ぼやーっとした視点が徐々に定まっていくと、そこには愛しきダーリンの顔が。

「…ったく。寝るなよ、こんなとこで」

 悪態をつかれて、あたしはようやくお風呂に入ったまま眠ってしまったことに気がついた。

「だってぇ、待ちくたびれちゃったんだもん」

 むうっとむくれてみたら、なんか嬉しそうな顔。変なの。

「おぼれたらどうするんだよ」

とかきついこと言ってるのに、それとは裏腹に口元が緩みっぱなし。

 あれ? 視線があたしの顔じゃない。それより下の方……。

 あ!

「ちょ、ちょっと! どこ見てるのよっ!」

 彼の視線は水面の辺り。そこにはあたしの丸い丘が2つ、ぽっかりと浮いている。

「んー? たまにはこーゆーのもいいかなあと」

「ちょっと! え……」

 エッチ!と叫ぼうとしたけれど。その言葉は彼に飲み込まれてしまった。その唇ごと。そして、ひんやりとしたものが、あたしの胸に……彼の手だ。だけど、抵抗も出来ない。そのままあたしの芯まで溶かされていく感覚がする。

「甘くていい香り。バラみてーだ」

 不意に離れた彼の唇がそう動いて、すでにお風呂でのぼせ上がっているあたしの身体が、さらに赤く火照っていくのを感じたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ