01 『もう一回遊べたドン』
ありのままのことをはなそうと思う。
転生した。
ありのままのことをはなそうと思う。
転生した。
二度目である。
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さて、何から話そうか。
俺は日本在住の自営業を営む極普通の社会人(?)だったのだ。
しかし、何時の間にやら転生していた。
転生したところは、すごいところだった。
思わず「(小並感)」って付くような感想がでるほどに。
偽りようのない驚愕を起こすには十分な場所だった。
生まれたときに、美人妻である俺の経験上二人目のお母さんは、俺を病院の外へ連れ出してくれた。
絶景だった。
近未来的なのっぺりとした色合いの無彩色のビル群が、見当たる限りに乱立している。
空には幾つもの飛行機が車のようなスピードで飛んでいて。
それが360度前面に広がっているのだ。
そして、その中心部にある国の要。城が、無防備に芸術的に居座っているのである。
完全に異世界である。
興奮したね。
どうやらこの世界は魔法が存在しているようであった。
化学ではなく、魔導学が発達したようだ。
魔法が存在しているのである。
当然、傾倒した。
一日中歌を口ずさむように楽しむを越えて、最早癖のように鍛錬を積むようになった。
それこそ、二本足で立てるようになってからはずっとだ。
途中そりゃ、色々なことがあったけど、まあ飛ばす。
印象に残っている事と言えば、勇者の本があったのでその本を開くと、創作だったという事だ。
それ以外は、まあ普通の人生だったと思う。
成人する頃には、俺はそこそこの魔法を習得していた。
職業も導師(魔法の専門家みたいな?)になった。
親はこんなに魔法の発達した街に在住しているというのに、ただの一般市民だった。
だからそのことを滅茶苦茶喜んでた。
別居していたので、たまに仕送り送った。
栗の甘皮を煮たヤツがお返しに送られてきた。
そして、そこそこの年齢で俺は死んだ。
そのあとのこの街の事は知らない。
戦死だったから、死を直視するまもなく死んだので、死んだ後のことなんか考えていなかった。
俺は気が付くと、またあの温もりの暖かい子宮の中に逆戻りしていた。
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そして現在、俺は難産にもなることなく出産を迎えた。
こう書くと俺が出産しているように見えるな。勘違いないように言及しておくが、生んだのは母さんだ。
今代のマミーは見事にかわいい八割美人が二割な村娘だった。
そばかすはない。
にしても、また転生するとはおもわなんだ。
人同士の戦闘でいき絶えた俺としては、よそうだにも出来ないサプライズだった。
考えればようやくあの辛い日々から脱せたわけか。
毎日毎日戦闘戦闘で、もう精神的に追い込まれてたからなあ。
これからはパーティーだ。
木製のベッドから抱き上げられる。
母さんは俺を慈愛し微笑んだ。
それをぼうっと見る。
落ち着くなあ母親の笑顔は。
さて、首が据わってない俺は頭を持ち上げられない為、周りが見渡せなかった。
抱き上げられたついでに周りを見る。
すごい簡素な家だ。
どんだけ田舎だよ。
あ、窓から月が見えた。
この世界のつきは時計が描かれているので(何故か秒針が動き、年単位もわかる)それを確認する。
どれくらい経ったのか気になるし。
二千五十年。
「ぶえっふ!」
変な声出た。
出産時の鳴き声を除いて、初めて出した言葉だった。
やばい、千年後に来ちゃった。
俺が暮らしていた時代は、千年初頭だったのである。
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見た限り魔法の魔の字も見つからないような家の現状に、もしかして過去タイムスリップしてたりして~と冗談交じりに思ったものだが、まさか未来だったとは。
家が本当どっかの開拓地の村の家みたいなここだ。田舎だからと思って魔法技術がないことをスルーしていたが、魔法技術が進歩していたらもうちょっと何かしら魔導具がおかれていてもおかしくない。
この様子だと、魔導技術衰退しているがな!
うわーん!
俺は導師っつう魔導の専門家みたいのやっていたから、ショックがでかい。
なんということだ……。
本当なんていうことだ。
まあ生まれてきたんだからしょうがない。
俺もこの時代のピープルだ。
何とかして生きなければな。
俺は、つきに描かれた秒針が、刻刻と刻まれていくのを見ながらにそう思った。
そういえば生まれたばかりだというのに目がいいな俺は。
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さて、今世でするべき目標が見つからない。
これは、俺にとって看過すべきものではない。
早急に対処しなければいけない。
とは言っても、やりたいこと……。
思いつかないな。
魔法はもう癖みたいなもので、前世でもそこまで業界の頂に上り詰めたわけではないけど、もうやる気は起きない。
あの程度の熟練度が俺の限界だと思う。
これ以上やれば辛くなる。
辛いのはあかん。
ということで、目標を探して旅にでたい。
しかし、俺は、赤子だった!
まあとりあえず、普通の赤子生活を満喫しようと思う。
なにせ、久しぶりの「平和」だしな!
俺は暫らくの間、赤子としての生活を満喫し、平穏な毎日を過ごす事にした。
やっぱ、戦争はあかんよねぇ。
まずは食事じゃー(歓喜)
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五歳になった。
日本の足で歩く事はもちろん、言葉だって話せる。
多少知性を出したとしても面倒のない年齢だ。
今までの俺は、本当に怠惰な人生を送ってきた。
なんだかんだで気に入って、五年も過ごしてしまった。
弁明をするなら、本当に母親と父親が優しい人だったので、ついつい幸せに暮らしちまった。ちなみに、母さんは十七、父さんは十九である。
父さんはロリコンである事が分かるな。
もうそろそろ目標でも見つけて、人生を謳歌してもいいと思う。
なので、いろいろ始動。
地図でも確認したが、 この村は、西端にある村で地図の端っこである。
俺が前世で住んでいたところは中心で、そこは今『グルミア王国』という国が建っているらしい。
何気、世界最大の国だ。
そして、その国で勇者が召喚されたらしい。
勇者召喚。俺が前世で期待して損した、懐かしい単語である。
この村の家は本当に簡素すぎる家だ。
俺でも適当に作れば建てられそうな家が主流になっている。
地震も津波もないこの地域ではまあいいんだろうけど。
近くには未踏の森が広がっており、本当に開拓地のような場所だ。
その森で遊ぶことを前々から計画しているものの、まあ何時になるかは分からない。
さて、本題だが。
どうやら、勇者パーティーのメンバーを世界的に募集しているらしい。
こんな西端の辺鄙な開拓地にも、一冊の本と共に募集の要望がかかってる。
興味ある。
よし見に行こう。
ということで、この村の村長宅である、この村にしては立派な家に忍び込んでいる。
母さんには泥団子つくりに行って来る(子供返りしたようにガキの遊びをよくしていたのでふしぎがられはしない)と言い、父さんは森へ翁の仕事に。完璧。
村長宅の二回へ上がる階段を上がり、見つからないように書斎へ潜る。
ほんの少ない書斎の中には目当ての勇者パーティーの要綱手紙は見つからなかった。
がっかりしながら一回へ戻ると、居間の机でぐったりとしている村長がいた。
・そんちょおおお!
近づくと、寝ているだけだということが分かった。
よかった。
死んでるかと思った。
そして、村長の長いひげの下、服の衿から、本が飛び出ていた。
千年前と比べて結構言葉が変わってきているので、いかに全国共通語だったとしても文字は読めない。
しかし、文字の形は余り変わらないようで、昔の『勇』って言う字の面影を持つ文字が、ほんの飛び出ているところに書いてある。
これだ。
俺はそう思って、近くにあった木の枝で、村長の長いひげをどかす。
すると、村長のひげはうねり木の枝に巻きついた。
触手のようにするすると、うねうねと動き、巻きつき、からめとっていく。
村長のひげはどうなっているのだろうか。
しかし俺は千年前に培った、戦場の冷静さで対処し、木の枝が奪い取られないうちに本を抜き取った。
と、同時に木の枝はひげの中に埋まる。
ひげは動きを止めた。
村長って魔族かよ。
というか、なんで肌身離さず持っているんだ?
ああ、字の解読をしようとしたのか。
足元には、字の辞典のようなものがあった。
さて、勇者召喚か。
どんなものなのかな?
勇者の募集要項は、ぼんやりと字の風貌を読み取って、まあ一般的なことが書いてあることが分かる。
さて、本はどうなのかな?
拍子を見ると、そこには後から書いたような文字がでかでかと書かれていた。
ぼんやりと読んだだけだからわからんが、多分こう書いてあったんだと思う。
【古より伝わる古事である】的な感じのが。
そんで、その本は現代約と原文で半々を作られていた。
その表紙の絵を見ると、どこかで見た勇者絵だった。
千年前に見たことがあるわ。
というかこれ千年前にはやった小説だわ。
現実のことなのに、フィクションをあてにするなよ!!
オタクか。
ぶっちゃけ、勇者パーティーの募集が本と一緒にあたりでもしかしてと冗談交じりに思ったけどさ…………………。
本当にそうだとは思わなかった。
あーあ。
世の中ふざけてるわ。
俺は本の裏表紙を何気なしにみた。
エルクリフ・ナーテライン
俺の前世の名前が書いてあった。
俺の本かよ!