*新たな仲間
美しい紫の髪の毛。さらさらとしていて、どこまでも続いている大河のような…
………アイリスさんに…会いたい…!
午前四時。
俺は凄まじい銃声で目を覚ました。
バーンッ、バンッ、バンッ…
「……すげぇ光景だな」
まだ寝足りないと言わんばかりに閉じようとする瞼を上げ、目の前の光景に見入る。
窓の外、広い射撃場では木曾巴隊長率いる機関銃第一部隊が射撃訓練をしている。
俺も今日からここで、こんなトレーニングをするのか…
楽しみだけど、疲れそう…
大きな欠伸をして、もう一度眠りにつこうとしたその時、
バンッ!
部屋の扉が勢いよく開いた。
「おぅゎっ!」
反射的に身体を反らす。
見ると、迷彩服に身を包んだ、ショートカットで小柄な女の子が腰に手を当てて立っていた。
木曾巴隊長だ。
「たっ、隊長っ!?」
俺は急いで正座する。
久しぶりの正座だから足が痛いぜ、こんちくしょー
隊長は暫く無言で俺の顔を見ていたが、やがてニコリと微笑み、
「よし!よく寝れたようだな!今からお前も練習に加える!」
「う……うぉぇっす」
地獄の特訓宣言をしてきたのだった。
「違う!右手はここ!人差し指をかけろ!あー、だからっ、左手はここで固定!」
――場所は射撃場。俺はもう死にそうだ
「ぅ、うぅっす」
俺は半泣き状態になりながら、慣れない機関銃を構える。
隊長はというと、俺に付きっきりで指導をしてくれている。
美少女に付きっきりでいてもらえるのは嬉しいけど、内容が内容なんだよなぁ…
「おいっ、何を考えてるんだ!標的を撃ち抜く事だけを考えるんだ!」
………俺はどうやら過労死するようだ
「…雷神?」
「はい。何か情報とか知りませんか?どんな些細な事でも良いっすから!」
休憩中、俺は隊長の横をキープしたまま本題に切り出していた。
隊長は少し考える素振りを見せたが、
「知らんな。機関銃の事以外に興味もないし」
笑顔で即答してきた。
…うぅ、知ってました、隊長がそういう人だってことくらい、知ってましたよぉぉぉ
泣き崩れる俺の隣でニッコリ微笑み、
「そんなことより休憩長いぞ。訓練再開だ」
そんな事を言ってくる隊長は鬼だ…
深夜――
月明かりに照らされた部屋で俺は隊長と二人きりで寝ていた。
今日は一日疲れたけど、やっぱり美少女と一緒にいれるのは嬉しいな♪
隣キープしまくってやったし!
どうだ、他の隊員ども!俺が羨ましいか?グヘヘヘ…
いやらしい笑みを浮かべながら。
…って、俺にとったらこれが日課だから、いやらしいとも何とも思わないけどな!
そんな事を思いながら眠りについた。
深い、深い眠りに………
「…佐、……佐」
…何か…聞こえる……
「…わよ、……て」
甘く、透き通った女性の声…
「……ってば!」
パンッ!!
怒鳴り声と共に俺の頬に激痛が走る。
「…痛ってぇ!」
俺は右頬を手で押さえながら上半身を起こした。
涙目になりながら前を見ると、そこにはあの、見慣れた姿が…
「…っ!アイリスさんっ」
俺は勢いよく飛び起き、彼女に正体する。彼女は小さくため息を付き、
「起きるのが遅いわよ。どれだけ呼んだと思ってるの」
軽く俺を睨んでくる。
「……ぅ、すんません」
俺は身をすくめた。
…睨んできてるけど、めっちゃ嬉しそうに見えるのは俺だけか!?
「………須佐」
ひっ、ご、ごめんなさいっ!!
…くそっ、人の心が読めるってこういう時に憎くなるもんだな
俺がそんな事を思っている傍ら、隣では木曾隊長がすやすやと寝息を立てて気持ち良さそうに寝ていた。
……可愛い
普段男勝りな隊長だか、寝顔はとても可愛らしい
「須佐、浮気してるの?」
隊長の寝顔を拝んでいると、アイリスさんから鋭い質問が飛んできた。
「うっ、うわっ…いゃ、そんな不純なことは…」
アイリスさんは焦りながら答える俺をまじまじと見て一言、
「不純って…。貴方は充分不純でしょう?…このドスケベが!」
「……っ!?」
「コホンッ」
「……」
マズイ…。マズイぞ、この空気…
俺の目の前で取り合い劇が起こりそうだ。
まぁ、怒らないけどね
偶然目を覚ました木曾隊長がアイリスさんを見てしまったのだ。
隊長は始めてみるその女性にただただ驚き、声も出ない。
一方のアイリスさんはちらりと隊長を見た後、すぐに口を開いた。
「初めまして、私の名前はアイリス。虹の神、アイリスよ。どうぞ、お見知りおきを」
じ、自己紹介っ!!??修羅場じゃないのかっ!?
「……わ、私は機関銃第一部隊隊長の木曾巴だ。い、異国の者だな。…敵か?」
木曾隊長は冷や汗を浮かべながらアイリスさんに銃を向けた。
いっ、異国って……!!…アイリスさんは神だからっ
俺は焦った。
…ん?待てよ…。異国って何だ?い、こ、く…イコク?…意娘苦?
改めて実感する。
……俺ってバカなんだなぁ…
「異国?…まぁ、そうね。私たちは月の向こうから来たの。私も須佐も神。貴女は人間なの?」
俺がくだらないことで頭を悩ませている間に二人の会話は進んでいた。
「…神?…バカバカしい。そんなもの、存在する訳ないだろう。…大体、神が存在するくらいなら、この国はもっと平和になっているはずだ…」
急に隊長の表情が暗くなる。
……そうだよな、普通そう思うよな…。俺が本当の神だったらちゃんと、この木曾隊長の生きる国を平和にしてやれるのに…。こんなに辛い戦争を何時までも続けていちゃだめだ…
アイリスさんは小さくため息を付き、
「この国を平和にしたいなら須佐に頼めば良いじゃない。彼の力なら、この国を修められるわ」
とんでもないことを呟いてきた。
「……ぅえっ!?ちょっ、アイリスさんっ!?俺にはムリっすよ!」
全力で否定する俺の傍ら、アイリスさんは大丈夫、と微笑み返し、木曾隊長は強い眼差しを此方に向けてくる。
「…本当か?」
いゃいゃ、なに信じちゃってるんすか、嘘に決まって…
「……んっ」
そんな強い眼差し受けちゃったら断り辛いじゃないすか、こんちくしょー!
俺は隊長から少し目を反らして答えることにした。
「……ぅ、あ、はぃ…。やります、やるっすよ」
「頼もしいぞ!ぜひ、よろしく頼む!」
俺が依頼を引き受けた途端、隊長の顔は明るくなり、急に俺に抱きついてきた。
「うぇぁっ!?」
力強く抱き締められた俺は幸せの最高頂にいた。
デュへへ…、やべぇ、可愛い…。隊長ロリだし可愛すぎるし髪の毛いい匂いするし…
………襲いてぇっ!!
「ごふっ!!」
俺がそんなことを考えていると、すかさずアイリスさんのパンチが鳩尾に入ってきた。
…自業自得だからしょうがないけどね
「……で、どうすれば俺の力で戦争を止められるんですか?」
俺たち3人は今、限りなく広い草原に立っていた。
青々と茂る若草。そのうち此処にも戦火が飛んでくるのだと隊長はいう。
アイリスさんを見上げながら質問すると、彼女は澄まし顔で一言。
「そんなもの決まっているでしょ?須佐。貴方がここで、隊長さんと口付けをすれば良いのよ」
「………っ!!!???」
「………っ!!!???」
俺た2人は言葉を失った。
「くっ、口付けっ!!??俺が、隊長とキスっ!?」
「なっ、接吻だとっ!?その他に方法はないのか!?」
嬉しがる俺と、赤面になりながら抗議する隊長。
アイリスさんはまた澄まし顔で、
「ええ、そうよ。それしか方法はないのよ。仕方がないわ、我慢するしかないわね」
ケロリと言うのだった。
よっしゃぁー!!キスできるっ!…ていうか、『我慢するしかないわね』って酷くない!?隊長だって嬉しがってるはず…
「……最悪だ」
…って、全然嬉しがってねーし!
俺はキスをするため← 嫌がる隊長を説得してみることにした。
「隊長、これしか国を救う方法はないんです。ここで少し、ちゅってしたら済む話っすから!」
どうだ!ちょっと卑怯だけどこれで隊長も…
「…そうだな、仕方がない」
おぉっ!?
「す、少しだけだぞ?良いか、目を瞑れ…!」
や、やばい…、人生初のキス!?しかも向こうから!
完全に受かれている俺を軽蔑するような目で見てくるアイリスさん。
……う、すみません…
俺は目を瞑った。静かに、そっと……
途端、俺の口をふわっと柔らかいものが覆ってきた。
甘く、優しく、とても落ち着くものが……
唇から完全にその感触がなくなってから、俺は恐る恐る目を開いた。
目の前には口許を明細服の袖で隠し、紅潮している隊長、そしてその隣ではどこか悲しげな表情を浮かべたアイリスさんの姿が飛び込んできた。
…うわぁ、ほんとにしたんだ…!ファーストキス…!
俺はテンションMAXだ。
アイリスさんが隊長の方を見て、
「あれを見て」
と言うまで俺はずっと脳内お花畑状態だったんだ。
そりゃそうだよな、あんなに可愛い女の子にキスしてもらえたんだもん
「……っ、あれは!」
隊長の驚く声を聞き、俺もそっちの方角を見る。
……と、
「………平和だ」
見るとそこには夜が明け、今まで重層な装備を見に纏っていた兵隊同士が共に酒を呑み、楽しそうに会話をしていた。
街中も元の賑わいを戻し、戦火の跡こそを残したものの、国自体が平和になっていた。
…俺の力って一体……
呆然と立ち尽くす俺に向かってアイリスさんが呟く。
「貴方の力はこれだけじゃないわ。だけどこれも立派な力。救いたいものがある時は、今、心から愛している女性と口付けを交わすの。そうすれば救いたいものを救うことが出来るのよ」
…す、すげぇ。好きな人とキスするだけでいいんだ!それって完全に俺得じゃん♪
そして彼女は、ニヤケている俺に一言、
「行きましょう、早く戻らないと結界が閉じちゃうわ」
「………っ!!」
行くっていうことは…隊長と別れろってことなのか?
俺にその別れはあまりにも辛すぎる。
「…彼女も連れていけばいいのよ、何をそんなに悩んでいるの?須佐らしくないわね」
俺の気持ちを読み取ったアイリスさんは耳元でそう囁く。
「…連れていく?」
彼女は頷いた。もう、今しかない。俺は木曾隊長に正体した。
「…隊長、俺と一緒に来てくれませんか?」
「………困ったな」
隊長は少し考える素振りを見せた。
そりゃ迷うよな、だって隊長はこの国を愛している。こんなにも愛している国から離れて知らない国に来ないか、なんて俺って最低な人間だよな…
暫くして隊長が答えを出した。
「良かろう。ただしこの国の事が諦めきれん。たまには此方に戻っても良いことを条件とした上で、その由承る!」
「全然大丈夫っす!」
成功だ。
どうしよ、ニヤケが止まらねぇ!
一部始終を黙って見守っていたアイリスさんが口を開く。
「じゃあ、そろそろ行くわよ。…彼も待ちくたびれているわ」
月を目指して飛びだした俺たちに向かい言葉を発する。
……ん?彼?彼って…誰だ?
俺がそんなことを思いながら飛んでいると、結界の前で一人の男性に出会った。
……この顔、何処かで…
バカすぎて思い出せない俺の代わりに(←)アイリスさんが紹介する。
「菊川忠義。元・戦国武将よ」
菊川…菊川…あぁっ!アイリスさんと一緒に転校してきたあのウザいイケメン!
性格いいけど、俺は紀派だから、全く気にもかけてなかったぜ、ふんっ
俺は菊川をまじまじと見つめた。
……って、
「戦国武将!?」
反応遅いとか言いたいんだろ?勝手に言っとけよ
菊川は頷き、相変わらずイケメンスマイルを溢す。
「そうなんだ。元は…ね。一応、某とか言ってたんだよ」
「イメージが沸かんな」
俺の隣で木曾隊長が呟く。
アイリスさんは一連のやり取りを微笑みながら見送った後、結界の中央を指差した。
「菊川君のお陰で結界の中でも身体を傷つけることなく移動することが出来るようになったのよ。早めに行きましょう。効果が薄れる前に…」
そして俺たち4人は結界へと歩を進めていった。
新たな仲間を連れ、サーシャや天照に会うために……




