さて、教訓を一つ。
これでお終いです。
すこし長いです。
「・・・・・・・・・・は?」
今度こそ、俺は固まった。
そんな俺をよそに佐々木さんは勝手に話を続ける。
笑顔のまま、まるで友達を遊びに誘うような軽さで。
「あのね、できるだけ傷つけて、私が未練を残すようなくらい無残な殺し方がいいの!」
「待って。ちょっと、待って。今、俺、恋愛の協力を頼まれてるんだよね?」
「え?そうだけど」
佐々木さんは、なんでそんなことを聞かれるのか分からないと言わんばかりに首をかしげた。
「なんで、殺すとか、そういう話になってるの?」
「なんでって、山手君も良く知ってるじゃない」
「な、なにが?」
「後藤君は死んだ人が好きなんだよ?だから、私も死なないと好きになってもらえないじゃない!」
佐々木さんの初めて浮かべた明るい笑顔を見ながら俺は、自分の考えを改めた。
「自殺じゃだめなの。強くこの世に未練を残すには、ひどく痛めつけられて殺された恨みの念が一番らしいからどうしても他殺じゃないと私、幽霊になれないかもしれないから」
―――佐々木さんは、おかしい。
俺はさっきまでそう思っていたが、それはどうやら甘かったらしい。
おかしいなんてものじゃない。この子は・・・
「狂ってる」
「え?」
首をかしげる佐々木さんに俺は一歩近づく。
「あの・・・山手君?」
「佐々木さん・・・」
すうっと息を吸って一言。
「あほかーーーーーーー!!!」
「え、え・・・?」
耳を押さえて困惑する佐々木さんに俺はたたみかけた。
「好きになってもらうためには死なないといけないなんてあほだろ!後藤は確かに霊マニアだけど、だからって、佐々木さんは幽霊になってお前に好きになってもらうために死んだ、なんて聞かされて嬉しいわけないだろ!」
「そ、そうかな・・・」
「そう!絶対そう!」
不安げな佐々木さんを見て俺はため息をつく。
つーかこの子、そのせいで俺が殺人犯になることはどうでもいいのね・・・
「とにかくきちんと後藤に生きてるうちに告白してきなよ。結果はわからないけど、絶対喜ぶから」
「・・・うん、わかった」
佐々木さんは小さくうなずくとパタパタとかけていった。
俺は佐々木さんが去ったのを確認してへなへなとその場に座り込んだ。
なんていうか、こっくりさんはでてこなかったけど、こっくりさん以上に恐ろしいものを見た・・・
これって、生まれて初めての恐怖体験なんじゃないのか・・・?
その日以降、俺はもう二度とこっくりさんはやらないと心に誓った。
***
翌日。
俺の顔を見るなり後藤は開口一番にこう言った。
「佐々木さんて面白い人だったんだな」
「・・・なにが?」
「いやさ昨日のこっくりさんの後、佐々木さんに謝ろうと思って声かけたらさ、変な質問されちゃってさ」
「な、なんて言われたんだ・・・?」
まさか・・・
「幽霊と人間だとどっちが好きですか?って聞かれてさぁ。変わってるよなぁ」
やっぱりーーー!
何でそこにこだわるんだよ!俺は告白しろっつったんだよ!へんな質問をしにいけとは言ってない!
「山手?どうした?」
後藤が不思議そうに頭を抱える俺を見ているが、今は説明している余裕はない。
「で!?お前なんて答えたんだ!?」
「何だよ、急に」
「いいからなんて答えたか言え!お前の返答しだいでなぁ!佐々木さんは・・・佐々木さんは・・・!」
と、そこでがらがらがら。と無機質な音が鳴った。
「はーい。席着きやがれー馬鹿どもー」
「このタイミングでか!!くそ教師ィ!」
「あぁ?朝っぱらから何キレてんだ山手」
担任は心底めんどくさそうに眉を寄せる。
あーもー!いっつも遅いのに何で今日だけ早いんだ!?
後藤も自分の席に戻ってくし・・・佐々木さんは来ないし・・・ぐわー!もやもやする!
俺が悶々と悩んでいる中、担任が教卓につくなりいつになく真剣な声を出した。
「実はみんなにとても残念なお知らせがあるんだ・・・」
その一言で俺の思考が完全にフリーズした。
え・・・え?
まさか・・・
俺は後藤を見る。
いつもと変わらない様子だけど、まさかお前・・・
「実は、」
がらがらがら!
「遅くなりました!」
「おー遅いぞささ、」
「佐々木さん!!」
俺は担任やクラスメイトそっちのけで佐々木さんの元へかけつけていた。そこにはぴんぴんした様子の佐々木さんがちゃんといた。
「よ、よかった・・・生きてる・・・!」
不覚にも本気で涙が出そうになった。
「山手君・・・昨日は本当にごめんなさい。私、どうかしてた・・・」
「いや、それはもういいよ。それより、ほんとよかったよ・・・死んでたらどうしようって思ったよ」
「え?どうして私が死ぬの?」
不思議巣に首を傾げる佐々木さんに後藤の言っていたことを話すと佐々木さんはくすくすと笑い出した。
「笑い事じゃない!俺はもしかして後藤が幽霊のほうがいいとか言って、それを真に受けて佐々木さんが自殺したんじゃないかってすげー怖かったんだからな!」
「大丈夫だよ。後藤君はちゃんと生きてるほうって答えてくれたし、たとえ幽霊って言われてても山手君に怒られたばっかで自殺なんかしないよ」
「そ、そっか・・・」
もし、注意してなかったらなんて恐ろしいことはこの際気にしないでおく。
俺は一息つき、そこで担任を見る。
「お?どうした?もう青春はいいのか?」
担任はニヤニヤと笑いながら教卓にひじを突いていた。
「こんな殺伐とした青春があってたまるか!そんなことよりさっきのなんだったんだよ!」
「あ?さっき?」
「さっき言ってただろうが!とても残念なお知らせがあるって!あんたのせいでものすげー恐怖を俺は味わったんだ!」
もしくだらねーことだったらPTAに訴えてやる!
担任は「あぁ。そのことな」と崩していた体勢を戻す。
「実は先日、ウチのポチ(犬)が死んじまってな・・・先生、傷心気味なんだ」
「知るか。ちょっと待ってろ、今、PTA連絡するから」
「まあ聞け」と携帯を取り出そうとする俺を担任が止める。
「重要なのこっからだ。それで、きちんと供養もしたんだがな、どうゆうわけかその日からおかしなことが立て続けでおきるんだ」
「おかしなことぉ?」
俺は思いっきり眉間にしわを寄せた。
どうしよう。いやな予感しかしてこない。その証拠に、後藤が超いい笑顔を浮かべていらっしゃる。
俺の不安などお構いなしに担任は続きを話し出す。
「なんか、夜中にへんなうなり声がしたり、誰もいないはずなのに獣くさい気配を感じたり・・・」
「えー。先生それって、出ちゃったんじゃない!?」
こわーい!と近くに座る女子がはしゃいだ。担任がうなずきながらちらりと俺を見た。
「うん。俺もそう思う。で、ものは相談なんだが、山手、お前確か初めのころ、霊媒師とか何とか言ってなかったか?」
「いえ。言ってません」
俺は全力で首を振った。
冗談じゃない。幽霊騒動はもうごめんだ。
ところが、俺の意図を完全に読み違えたやつが口を挟んだことで自体は俺の望まぬ形へ。
「謙遜すんなよ、山手!先生、そのポチの霊は山手が取り払ってくれますよ!」
おい、後藤。何勝手なこと言っちゃってんの?なに、満面の笑みで親指たててんの?折っていい?それ、折っていい?
「そんで、俺もついてきます!いっしょにポチをやっつけましょう!」
きらきらと目を輝かせる後藤。
こいつ・・・昨日ので懲りたかと思えば全然反省してねぇな。そして、ポチは倒していいものなの?
俺はため息をついた。
「後藤、何度も言うけど、あれはうそなんだよ。俺には霊感も不思議な力もない、どこにでもいるしょうもない人間なんだよ」
「そんなことないっ!」
即座に否定したのは、後藤ではなく、佐々木さんだった。普段、大声などあげない佐々木さんが急に声を張り上げたことにクラス全員が目を見開いて驚いた。
「そんなことないよ。山手君はすごいよ!不思議な力なんかなくっても、私に間違いを気づかせてくれたよ」
「佐々木さん・・・」
「山手君はしょうもなくなんかないよ。少なくとも、私にとってはヒーローだよ」
にっこり微笑む佐々木さんはそれはもう天使の微笑で俺は心臓が跳ねるのを感じた。
しかしすぐさま、自分に言い聞かせる。
落ち着け・・・この子はちょっと、いや、かなりおかしいんだ・・・なるべくかかわらないほうが身のため・・・
だけど、女の子に笑顔であんなこと言われて揺れ動かない男なんているのだろうか・・・
じっと、佐々木さんを見る。本当にうれしそうに笑う佐々木さん。
・・・だめだ、押さえが利かない。俺、佐々木さんが・・・
「だから、私も除霊ついていってもいいかなぁ?」
「・・・・え」
「ほら、後藤君が行くんだもの。当然私も行かなきゃ」
「佐々木さん、性格変わった?」
前はこんな積極的じゃなかったような・・・
佐々木さんは俺を見てにっこりとほほえんだ。
「山手君のおかげだよ。私、前向きにがんばることにしたの。また、応援してね!」
「あーうん・・・」
俺・・・今、うまく笑えてるかな・・・
俺の心情などお構いなしに後ろで担任と後藤が声をかけてきた。
「そうと決まれば、さっそく今日来てもらうからな」
「がんばれよ、山手!」
さて、この騒動を通して学んだことがある。
軽いノリでオチなしのギャグを言ってはいけない。
みんな、気をつけろよ。
もともと、短編小説にするつもりが、まとめる技術がなくてこんな中途半端な長さになりました。文才が欲しい…
夏の暑さを乗り切ろうと、ホラーを目指していたので、少しでも涼しくなられたら幸いです。……無理か。