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こっくりさん現る!?

放課後になり、教室からみんながいなくなると後藤が意気揚々とかばんから変な紙を取り出した。


「なんだそれ」


「何って、こっくりさんシート」


「・・・なにそれ」


後藤の取り出した紙には五十音や鳥居のマークが書かれていた。どうやらこっくりさんをするときにはこれを使うらしい。


「昼に俺が説明したじゃんか!」


「そーだっけ」


文句を言われても困る。人間、興味のないものは忘れてしまうものだ。そんな俺らを見て佐々木さんがおずおずと手を上げた。


「あの・・・私やったことなくて、何か注意することってある?」


佐々木さんの質問に後藤がすぐさま答える。


「まず、こっくりさんを呼んでから帰ってもらうまで絶対に十円玉から手を離さないこと。あと、こっくりさんに使った十円玉は手元に置いとかないでその日のうちに使うこと。そのくらいかな」


さすが、マニアなだけはある。その手の話はお手の物だ。


「ありがとう。気をつけるね」


「今回は、俺の十円を使うから佐々木さんは手を離さないことだけ気をつけてればいいから。山手もね」

「わかったよ」


こっくりさんシートを机に置き、十円玉をセットした。北の窓も開け(なんでも北側からこっくりさんは来るらしい)、準備が整ったところで後藤がうなずく

「じゃあ、そろそろ始めようか」


俺と佐々木さんはお互いに顔を見合わせうなずいた。・・・後藤に付き合わされて慣れてきているとはいえ、やっぱり緊張するな。

佐々木さんも不安そうにしている。

後藤がゆっくりと十円玉に指を置く。佐々木さんもそれに続き、俺も静かに指を添えた。


「いくよ?」


後藤が俺と佐々木さんの顔を見てたずねる。


「おぅ。いつでもいいぜ」


「・・・わたしもいいよ」


後藤がうなずき、慎重に口を開いた。


「コックリさん、コックリさん。おいでになりましたら、北の窓からおいでください」


1分ほど待つが・・・・・・反応は・・・ない。


まあ、予想はしてたがな。ほっとしたような、残念なような複雑な気持ちだ。後藤を見ると、あらかさまに残念そうに眉を寄せていたが、あきらめてはいないらしくもう一度口を開いた。


「コックリさん、コックリさん。おいでになりましたら、北の窓からおいでください」


・・・やはり何もにも起きない。いい加減あきらめろよな。


そう思いながら佐々木さんを見た。下を向いていてよく分からないが、

おそらく落胆しているのだろう。

俺が、佐々木さんに声をかけようとしたそのとき、


・・・ズ・・・


ーーーーー!!?


う・・・動いた・・・?


確かに十円が動いていた。俺は動かしていないし、後藤が動かしたのかと見ると、後藤も驚いて俺のほうを向いていた。


「や、山手。お前じゃないんだな?」


「あぁ。お前も違うよな・・・」


―――じゃあ、佐々木さん?


後藤と俺は佐々木さんのほうを見て、思わず悲鳴を上げそうになった。佐々木さんは、目をこれでもかというほど見開き、口をひくつかせながら一心に十円玉を見つめていた。

明らかにいつものおしとやかな佐々木さんじゃない。


これは・・・


「こっくりさんに乗り移られてるんだよ!」


後藤は目を輝かせながら(輝かすなよ!)俺に告げた。

俺もそう思う。


つーか、分かってんならなんとかしろよ!


そう怒鳴ると、後藤は首を振る。


「きちゃったらお告げを聞き終わるまでは帰せないんだよ」


そう言ってはいたが、おそらく本音は「えー。せっかく来てもらったのに帰しちゃうなんてもったいないじゃないか」だろう。


証拠に顔がものすごく嬉しそうだ。


ったく!佐々木さんが取り憑かれてんだぞ!


そうこうしているうちにも十円玉はどんどん動く。

見ると、五十音を書いたほうに向かっている。

十円玉が一つの文字の前でピタリと止まった。


「・・・”す”?」


俺が、文字を口に出すとまた動き出す。


す?すって、酢?


また、一つの文字の前で止まった。

今度は・・・


「”き”」


す・・・き?・・・好き?


えぇっと・・・どういう意味?


わけが分からず佐々木さんを見るも顔を下にしているため表情がまるでわからない。


「なぁ、後藤。どういう意味だ、すきって」


後藤もいまいち分かっていないのか首をかしげていた。


「たぶん、こっくりさんが俺らを好きって事じゃないかな・・・?」


「なんでこっくりさんに好かれてんだよ」


「さぁ。・・・とりあえず答えたほうがいいよね」


後藤は佐々木を見て戸惑いながらも笑顔で答えた。


「えっと、こっくりさん。俺もこっくりさんのこと好きです」


・・・なんだこれ。


あまりにもシュールすぎる。


あきれていると後藤にこづかれた。


「ほら、山手も」


「は!?何で俺も!」


「告白されたんだから返さないとだめじゃないか」


「やだよ!別に好きでもねぇのに」


そういった瞬間、ガタンと音を立て、佐々木さんが立ち上がった。


「・・・ない・・・」


「え?」


うまく聞き取れず聞き返すと、佐々木さんが突然まくしたてた。


「許さない許さない許さない許さない許さない許さない」


ーーーーええええぇえ!?


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