真珠の夢
嫁のお話です。
続編じゃないですよ。
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真珠の夢
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真珠、という美しい宝石がある。
貝の中で作り出されるその石は柔らかで繊細で、素手で触れ、放っておけばたちまち劣化しその輝きを失ってしまう。
若かりし頃、その石を身につけ美しい花嫁となった友人を見、彼女の幸せに嬉しさと共に羨望を覚えたものだ。
きっと、私はそんな優しく脆い石になど、生涯触れることはないだろうと思っていた。
私を飾るものとは、いつでも汗であり、血であり、賞賛であり、恐れであり、鉄なのだから。
けれど、心のどこかで憧れがあった。
屈強な戦士である男にさえ恐れられる私だが、いつか、あの花びら舞う美しい愛にあふれた景色の中に立ってみたい。
そう、思っていた。
そうした憧れが叶うことなどありはせず、私は年を重ねていった。
そんな中で、私の憧れを身に纏う生き物に出会ったことは、私にとって運命とも言えるものだった。
真珠の鱗を持つ、ドラゴン。
そのドラゴンの真珠は輝きが失われることはなく、触れればあたたかい。
私が剣で斬りつけても傷一つつかないその真珠を、私は愛した。
私の首にその真珠が並ぶことはないけれど、世界で一番美しく優しくあたたかいその宝石は、すべて私のものになった。
ドレスを着て、真珠のネックレスを身につけて、花びら舞う世界に立つことは叶わないけれど。
私だけの真珠は、いつも私を大事に守ってくれた。
いつも私を愛してくれた。
私のいとおしい、私だけの、宝石のようなあなた。
あなたのそばが、私の憧れの叶う終の棲家。
end
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蛇足)
続きは書けないなぁ、と思っていたお話であるところのドラゴンスレイヤー様。
続きはかけませんが、嫁さんの方の超短編を。
真珠を見て思いついたので、蛇足と思いつつも投稿してみますね。
いまさらながら、隣のドラゴンスレイヤー様という短編作品を好いてくださった皆様、本当にありがとうございます。