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美しい隣人

※某ドラマとは関係ありません。

※この物語はフィクションです。実際の人物や地名とは関係ありません。



 「おーらい、おーらい」

 閑静な住宅街に大きな声が響いていた。隣の家の前には某引越し会社のトラックが二台停まっていた。トラックの横には二人の若い夫婦が引越し会社の社員と何かを喋っている。彼女はその様子を家の二階の窓から見下ろしていた。そして、彼女はニヤリと微笑んだ。


  ──美しい隣人──


 二人の若い夫婦は隣の家を訪ねていた。表札には「高野」と書かれている。旦那の方がインターホーンを押すと、直にそのスピーカーから声が返ってきた。

 「はい?」

 若い女性の声だった。

 「こんにちは、先日隣に引っ越してきました山田と申します。」

 旦那が言うと、少しして、家の主が玄関扉を開け外に出てきた。彼女は旦那の方を一瞥すると、妻の方を睨んだ。と、思うと直に笑顔になった。

 「わざわざ、ご丁寧にどうも」

 「いえいえ、先程も言いましたが、山田です。これからよろしくおねがいします」

 「こちらこそ、よろしくおねがいします」

 旦那は頭を下げると持ってきていたお茶菓子を彼女に渡した。数事他愛もない会話を彼女と交わし夫婦は自宅へと戻っていった。



 警官は「高野」と書かれた表札を確認するとインターホーンを鳴らした。

 「はい?」

 「警察の者ですが、何かお変わりはありませんか?」

 「ええ、特に変わったことはないですよ」

 「そうですか……ん」

 警官は何かに気がついたように、鼻をヒクヒクさせた。警官は彼女に外に出てもらうように言った。直に彼女は外へと出てきた。彼女は一瞬、警官を睨むと笑顔になった。

 「何か臭いませんか?」

 「ああ、ちょっと鍋を焦がしちゃって」

 悪臭を感じた警官が彼女に聞くと彼女は笑顔で返事を返した。

 そのとき、一陣の風が吹いた。警官は飛びそうな帽子を手で押さえながら彼女に頭を下げ、その場を去った。


 

 「ねぇ、あなた?」

 「ん?なんだ?」

 「お隣の高野さんなんだけど……」

 コーヒーカップを片手に持っていた妻がコーヒーカップを机の上にそっと置き、真剣な顔つきで旦那に言った。その顔は、まるで帰宅途中に口裂け女に出くわしたような、それでも、そんな恐怖でスリル満点な体験が忘れられない小学生みたいだった。コーヒーカップから湯気が立っていた。旦那は湯気が立つコーヒーカップを手に取ると、コーヒーを少しずつ口に運びながら同時に言った。

 「高野さんがどうかしたのか?」

 「それが、いつも二階の窓から下を見下ろしているんですよ」

 「ははは、何時誰か来ても直に対応できるようにじゃないのか?」

 旦那は笑いながらコーヒーを飲み干すと、カップを机の上に置き、立ち上がった。それを見た妻も旦那に合わせ、立ち上がり壁にかけてあったコートを手に取ると旦那に渡した。

 「ありがとう」

 旦那はコートを受け取るとそう呟き、玄関で靴を履き玄関扉を開けた。

 

 「おはようございます。警察の者です」

 玄関扉を開けると、黒いスーツを着た男と警官が数名いた。キョトンとする夫婦。

 「実はですね、お隣の高野さんのお宅から高野さんと思われる若い女性の白骨化した遺体が見つかりまして……まだ、詳しいことはわからないんですがね、死後一ヶ月は経ってると思うんですよ。それで、一ヶ月前ぐらいに高野さん宅で何か気になることとかって有りませんでしたかね?」

 呆然と立ち尽くす夫婦。

 「いえ……私共はつい一週間前に引っ越してきたばかりなので何も……」

 旦那はそういうとその場にへたり込んだ。

 





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