中庭で
今回は城に残っている姫様とエルの小話。
断章のような感じで、軽い気持ちで書いていたのですが・・・
まあ、内容についてはこれくらいにしてと、私の書く駄作に付き合ってくださる方、いつも読んでくださっている方に感謝の気持ちを込めて。
私はじっと的を見据えた。
左目を閉じ、右目で標的を狙う。
周りのものなんて何にも見えない。
眼中に入らない。
地をしっかり踏み、風を感じる。
風の向きや重力のことなんて馬鹿な私にはわかりっこないが、はっきりと的と自分の間を結ぶ曲線が見えている気がする。
「エルトリーゼさん?」
私の思い描いていた軌跡を微妙に外した。
少しばかり下に行ってしまった。
バキャ、と鈍い音を立てて砕けたりんごの破片が落ちる。
「ひ、姫様、どうなされました?」
微妙に声が引きつってしまったが気にしない。
「あらあら、何をしておられたのかしらね?・・・ふふふ・・・」
「パチンコでりんごのみを落としてただけですよ、集中力を高めるのにいいんです、ただそれだけですよ?アハハ・・・」
笑って見せたが声が自分でも分かるくらい小さかった、萎縮しているわけではないと思っていたのだけれど。
「昨日の事なのですけれど、フィリアに何を話していたのかな、と、少し気になりまして、私と目を合わせた瞬間に視線を逸らしたり、私が視界に入ったとたん慌ててその場から逃げるように立ち去ったり、気になる、怪しい行動を目の当たりにしましたからね、その辺りきっちり話してもらいましょうか、と思いまして」
私って馬鹿だなー、何で姫様が話している間に逃げなかったのだろうか?
答えは簡単、足がすくんでいただけです、ただそれだけです。
まあ、逃げたところで一兵卒の命運なんてたかが知れてはいるが。
「せんぱいはね、しらないのですよ、ひめさまのほんしょうを、そっちのほうめんではわたしはひがいしゃもといけいけんしゃですから、けいこくはすくなくともしておいたほうがいいかとかんがえましてね」
片言になってるよ、すごく棒読みです。
でも呂律がうまく回りません、誰か、可哀想な私を助けてください。
「貴女で飽きて以来もう遊ぶ気は起きないのだけれど?というより、出来ないと言えばいいわね、痛いだの、助けてだのうるさいから・・・」
そのおかげで私は万々歳でした。
「それに、何も知らないとか嫌じゃないですか、姫様は、先輩の好意を知った上で、わからないととぼけているのですよね、何だか・・・」
「私の趣味に踊らされて可哀想とでも?」
「そうです」
私はここぞとばかりにきっぱりと言った。
いつもは私の話なんてなぁなぁで済ませてしまう姫様だけど、今だけは聞いてくれている、ならば、私からはっきりというべき、先輩は城の誰もが見ても、姫様に対して特別な感情を抱いていると。
姫の命を自らの命とし、正に剣に盾にと尽くしてきた。
姫様の大事には必ずそこに先輩がいて、姫様の笑顔のとなりには先輩の笑顔があって・・・
「私がね、フィリアの好意以上の気持ちを受け取れると思っているの?」
「そんな」
「一つの国のお姫様が、ただの兵士と、まで言えばお分かりになるかと?」
あぁ~、何となく分かったきもする、納得はしたわけではないけれど。
「貴女みたいに、虐める側と虐められる側で単純にわかりやすく分かれるわけではないからね、ここから先は、いじめっ子の娯楽じゃすまないと思うのだけれど」
エルトリーゼは何も言わずに立ち去った、今までならそんなことはなかったけれど。
意外と私も乙女なのかな、なんて考えてみた。
案外似合っているかもしれない、なんだかんだでフィリアは好きだ、エルも応援してくれているようすだ、使いや顔見知りの兵や騎士、騎士団長までもが期待している節がある。
「でも、やっぱり無理かな、父さんや母さんや偉い人がなんていうか」
今回もお読みくださってありがとうございます。
前書きにも書きましたが、今回はエルがこの前のことを問い詰められてあたふたしているだけの予定だったのですが・・・
シンシア姫は意外と素直な子だったようです。
S設定で進めようと考えていたのだけれどなぁ・・・




