先走―2
絶望的ではあるけれど、まだ死にたくは無い。唐突にそう思った。
姫様のお傍にいたい。
私の十余年は姫様のためにささげてきたつもりだった。
それがいま無に帰そうとしている。
死ぬことに対して諦めていたけれど、不意にそんなことを思い、死ねなくなった。
ゆっくりと立ってみる。
案外なんとも無かった、少しふらついた程度。
案外人は丈夫にできている物だな、どーでもいいことを考えた・・・一瞬だけ。
少しずつ光を取り戻していっている目を頼りに、剣を探す。
あった、すぐそこに。
一歩歩く。
「グルルルルル・・・」
犬ような鳴き声を出している、犬型の魔物。
あの体当たりを受けたら、再び立ち上がる気力など無い。
本隊に戻るための最短ルートを頭の中で構築する。
ここからまっすぐ走っていけば本隊と合流できるだろう。
・・・あの魔物の向こうがわに行けたらの話である。
魔物を倒すために一人勝手に突撃していたので、この結果は当たり前といえば当たり前。
生きて帰れたら、私はたぶん泣くと思う。
息を整える。
すり足しながら半円を描くようにゆっくりと向こう側へ。
あんな目にあったので、まともに戦おうなんて考えてなんていない。
ゆっくり、ゆっくり。
半分ほどまで来れた、あと少し。
警戒はしているようだけれど、近づいてはこない。
このまま、逃げれる。油断はできないが希望がわいてきた。
「バウッ!」
すぐ後ろから、犬のような魔物の鳴き声。
魔物は複数いたのを忘れていた。
振り返る暇もなく押し倒された。
魔物が私の上にいる、のしかかっている。
犬型の魔物の足の爪が、私の腕や首の皮膚を引っかいている。
痛みはあまり無いが、皮膚に食い込む爪の無機質な感触と冷たさを感じる。
力を振り絞るがのしかかれた状態からの脱出は、無理。
死にたくないから足掻く、けれど死の結末は目に見えてしまった。
気がつくと、城にいた。
夢でも見ていたのかとベタなオチを一瞬考えていたのだが。
体にある無数の傷と、その傷から発せられる痛みが夢ではないと、教えている。
しばらく後、敬愛する姫様が私の元にいらした。
話を聞くと、あの後姫様が私の事を不安に思い援軍を出すように、姫様の父(国王)に掛け合って、増援を出した。
その増援が本隊と合流、体勢を立て直し魔物の群れを退け、そのまま私を助けてくれた。
と、姫様や後輩の騎士から聞いた。
情けない・・・
その後、体の検査を受けた。
重い剣を無理な体勢で振り回したため、右人差し指にヒビと、右親指と小指が脱臼、あとすり傷刺し傷が
無数。
魔物の討伐隊の中で一番の大怪我らしい。
・・・情けない・・・
死ぬことは回避できたが、あらゆる方面から、きついお言葉を受けたのは言うまでもない。
あけましておめでとうございます。
今回はだらだらと文字数を稼ぐ書き方となりました。
時間をかけた割には低いクオリティで本当にすみませんm(--)m。
さすがにgdgdすぎますかねー・・・
次回は療養中のフィリアを中心に説明過多なお話になる予定です。