先走―1
クリスマスの投稿です。
話のほうはすでに詰まっていて、しばらく次話は遅れそう・・・読んでくださっている方、すみません。
重い大剣を振りかざし、一番敵の密集している所まで突撃を仕掛ける。
「はぁ!」
声と共に一撃を振り下ろす。
犬の形をしたものが、剣の重さに耐え切れず引きちぎれ、少しして残骸は霧のように四散していった。
姫様が危険だと仰っていた魔物をあっさりと倒したことに私は疑問を感じた。
なぜ姫様はあんなにも、魔物との戦いを心配していたのだろう?
魔物だって襲ってこない、仲間を一匹倒したから畏縮しているのだろうか?
・・・この際どうでもいい。
早く城に帰りたかった。
ならば、することは一つ。
敵を殲滅する。
ただそれだけ。
四散した魔物を追う。
やがて、四散した魔物の一部に追いついた。
再び、剣を振り上げる。
さっきのような声は上げない、ただ、重いものを地面に落とすように大剣を下ろした。
ガキっ、と乾いた音がする。
この音はしとめた時の音ではない。
「おっ・・・ご・・・」
瞬間、腹部に重い衝撃を感じた。
きれいに手入れをしていた鎧も、打撃は吸収してくれない。
何がどうしたのか、私にはまったくわからなかった。
ただ痛みだけが頭の中を支配していた。
目はチカチカしている、白と黒、光と闇がごちゃまぜに交差して物を判別することなどできない。
数十秒して、視界は、ほんの少しだけ戻った、そしてうっすらと見える影が私を怯えさせた。
影は犬のような形をしていて、きっと魔物だ。
その影が、すごいスピードで近づいてきて・・・
「うっ・・・ぐぁぁ・・・」
腹部を押さえたまま棒立ちになっていた私は、犬の魔物の体当たりを受け盛大に吹っ飛ばされた。
吹っ飛ばされて、後頭部を打ち付けた。
私の真後ろには樫の木でもあったのだろうか?すごく痛い。
おなかが痛い、魔物に吹っ飛ばされたりしたせいだ。
あたまはもっと痛い、運の悪いことに何か硬いものに打ち付けたから。
目がチカチカする、たぶんたくさん痛くなったから。
すごくこわい、体がぼろぼろになって、ひとりだからだとおもう。
何で姫様が心配していたのか、それがよくわかった。
魔物は少数でも強いし、頭もいいみたいだった。
今になって後悔するのは馬鹿にもほどがあるが。
敵を追うために深追いしていたから、味方は私を見つけてくれないかもしれない。
最初から油断していた私の失策。
・・・あまりにもあっけないなぁ、とこの状況で思った。
味方は来ないし、体は動かない、目も満足に見えない、剣とかどこかに行った。
絶望的な状況、誰もが想像できる最悪の結末が、目の前にある。