気がつかない痛み
すごく疲れた、すごく。
「すまないな、下手したら死んでいたかもしれなかったのに」
すぐ後ろから、あの女性の声が聞こえた。
「いえ、構いません生きて帰れますからね」
「しかし、何なのでしょうか?この人間・・・」
セイルさんが言う。
人間とは思えない力、薄い水色の肌、青い血液。
人間なの?
そんな疑問すら出てきた。
「そんなのは後でいい、まずは町に帰るぞ、大騒ぎだろうからな」
「はい、そうですね、かなり外れに来ましたし私がここを確保しておくんで」
「わかった、と言うわけでフィリア、帰るぞ、そんなよく分からん液体だらけってのは気分悪いだろ?」
そういえば、頭の天辺をぽんぽんと叩く。
ベトベトしてた。
あの人間の血みたいなものを頭から浴び続けていたから、髪の毛なんか真っ青になってる。
青い血なんて見たこと無いから、現実味がなくて、こんな異常状態でもわりと平気だった。普通に赤い血だったら、今ほどの血を浴びたら叫び上げてたと思う。
そのあたりは皆も同じらしい、女性の方なんかケタケタ笑ってる。
「手を貸すぞ」
視界の中に手が現れた。
「ありがとう」
手を取りながら振り返る。
「フィリアさん!早く目を拭いて!」
セイルさんの方が布、ハンカチを取り出した。
手にそれを取ろうとすると、女性の方がハンカチを叩き落とした。
「馬鹿!擦らせてどうする!?」
セイルさんを叱咤し、女性は私を背中に乗るよう促した。
「いいか?目を触るんじゃないぞ!」
私を乗せて駆け出す、疲れているはずなのにたぶん全力で走ってくれている。
当の本人である私には何があったのかさっぱりわからなかった。
「…」
「…」
姫様もエルもそこにいるはずなのに、何も言ってくれない。
「片目が見えなくなっただけだ、訓練を積めばまた動けるさ、実際目が見えず眼帯をしててなお戦士として活躍している人が私の知り合いのもいる、この城の兵士にも眼帯をつけているのが2人いたのを知っているだろ」
「騎士団長…」
自室に戻って、初めて声をかけてくださったのは騎士団長だった。
「二人も、あまりフィリアに冷たくするな、これはまさに名誉の負傷だ、何人もの人間を殺害してきた怪人から人を救ったためにできた傷、躊躇い無く戦ったからこそ、この傷ですんだのかもしれない」
騎士団長は続ける。
でも、姫様も、エルも本当に反応が無い。
「いえ、すごくうれしいですよ、この傷も団長の言う名誉の負傷であることくらい言われなくたって分かります」
まるで腫れ物を扱うように、二人は態度を変えた。
優しくしてくれているとか、心配してくれているというのとは違う感じだった。
お医者様は、肩の矢傷は治ると言った、目の傷は治るけれど、目が見えるとは言わなかった。
でも、治るかもしれない、治らなくてもまた訓練をして剣を振り姫様の前へ出れるように頑張るつもりだった。
私が近衛騎士として頑張れば二人は親しくなってくれるかもしれない、そういう希望を胸にしまった。
何とか生きて帰ったフィリアですが今回は今までと比べられない、一生モノの怪我をして帰ってきました、二人はきっと、強いはずのフィリアがこうした相手に恐怖と殺意を覚えているかもしれません。
さて今回はいつも以上にぐろい要素を突っ込んで見ました(それでもちゃちいと言う人が大半でしょうが)、さてファンタジーだと眼帯の男の人は歴戦の戦士である設定が多いですが、女性の場合はどうなんでしょうか、それ以前に女性の眼帯はあまり知らないしイメージも湧かない・・・
次回、療養中に訪問者。