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四、疑問と謎
「お嬢さん、しっかりして!」
視界にゆっくりと光が射し込んだ。
細く眼を開くと、そこに見えたのは焦げ茶色の天井と、綺麗な顔立ちをした女性。
女性は全く見知らぬ顔だが、自分のことを何故か心配そうに見つめていた。
「あっ、目が覚めた!よかった、死んでしまっていたらどうしようかと」
女性は私に向かって柔らかい微笑みを浮かべ、安心したように床にへなれた。
落ち着いた印象の、朗らかな人。明らかに危険な人物ではなさそうだ。
その優しそうな女性の表情に、自然と自分まで安心していた。
と共に、回転を再開する脳からは、次々と疑問が浮かんできた。
自分は何故ここにいる?神社の前にいたはずだ。
ここに来る前に、一瞬黒い霧を見た。あれは何?
私はどうにかなってしまったのだろうか?
「私、針山 雨乃。お嬢さん、この村のことを知らずに此処へ来たでしょう」
ズバリ当てられて私は戸惑った。が、今は冷静に女性の話を聞くことにした。
「図星ね。まぁ、知ってたら絶対にこんな村には近づかないものね」
初めて遭った村人の雨乃さん。
そのクスッと生温かい笑みのせいで、また疑問がひとつ増える。