第五章 ―晴れ渡る街―
突然足元に舞い降りてきた紅葉。
しかし見渡すもこの辺りには紅葉の樹など見当たらず、不思議がっていた。
紅葉を拾い見ていると、すくっと足が勝手に立ちあがった。
「うわ!」
自分の意思を無しに動く足。気がつけば、いつの間にか自然と疲れはとれていた。
足は、そのまま意思を聞かずに進み始めた。
―――何で―――止まれ…!―――――
もはや自分のものではないかのように知らない道を坦々と歩く足。
まるで何者かに、乗っ取られているかのように。
「わああぁああぁあぁあぁぁぁっ!!!!!!!!!!」
自信ありげに歩き続けた足は、突如その地面から崩れ落ちた。
おそらく、小さな崖から落ちたのだと思われる。
思わずあげた叫び声は、やがて別の地に落ちた衝撃によって止められた。
茂った緑色の中に尻もちをついてしまい、痛みに唸る。
それだけではない。セーラー服はすっかり泥まみれ、髪もぐしゃぐしゃ。身体中には痛み。
何が何やら全く判断のつかなくなった詩帆は、不思議を通り越した諦めのような気持ちになり、ため息をついた。
…もう、どうにでもなれ……
そう思って目を瞑ったとき、先程とは違う、明るい少年の声がした。
「大丈夫?」
目を開け、見上げた先に視界に映ったのは、こちらを心配そうに見る茶髪の少年。
学生服だがその下に洒落たTシャツを着ている。これを見るかぎり、少年は自分と同じ年くらいだと確信した。
怪しさも穢れもなく純粋で、しかし少しチャラっとした姿。その後ろには…
快晴の、青空が広がっていた。
(あれ…さっきまでの灰色の霧は?空も曇ってたのに…)
「こんな所でどうしたの?…立てる?」
不思議な事態ばかりが詩帆を襲う中、洒落た少年は、優しく手を差し出した。