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第四章 ―霧と双子と―
「わっ」
高い声がしんとした部屋の中に飛ぶ。
その理由に、綺麗な黒髪の女性が詩帆の頬に冷たい缶を当てていた。
女性が手渡す冷えた飲み物。レトロなオレンジ色の缶…コーヒーのようだ。
「そろそろ眠気、覚めたかしら」
女性は微笑みながら、淑やかに傍に座った。
「それ飲み終わったら、村の人達を紹介してあげる。面白い所だから、のんびり寛いで行くといいわ」
雨乃は柔らかくそう言ったが、実際この村でゆっくりしていくかどうか…などという意思は関係ない。
詩帆は結局、ここに長居しなければいけない状況なのだ。
身体から、狐の魂を引き離すまでは…。