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釟、縁切り
古ぼけた家の中、雨乃はある紙切れを口に咥え、左手で魔除けの印を床に描いた。
雨乃の描いた印からは、青い炎が噴き出している。
「黙りなさい。あなたとの縁は巫女を辞めた日に切っている」
狐はやれやれというように首を横に振る。
と、雨乃の出した青い炎を、蝋燭の火の如く息で消し去ってみせた。
火の跡ひとつなくなった印。
仮面の下から息を吹きかけた狐に眼を丸くし、雨乃は悔しさでもう一度相手を睨みつけた。
狐は元の姿になおると、詩帆の中へ戻っていった。
ひゃひゃひゃ…ひゃ……。
綺麗な声は甲高く、女子高生と一体化する。
吸い込まれるように小さくなり、やがて声は消え失せた。