11/20
七、昼下がり
「詩帆、来ないね」
詠鍵学園高校、2-2教室にて。昼休みを終え、校内に予鈴が鳴り響く。
「もうこんな時間だし、休みかサボリでしょう」
眠たげな女子と俯く女子が、廊下を歩きながら話していた。
「まぁさすがに遅すぎるか。でも詩帆がサボるなんて初めてだね」
「休みたい時くらい誰だってあるものね」
眠気に耐え、ぐっと伸びをする女子に対し、もう片方の女子は憂いた顔でこくりと頷く。
詩帆のことを心配していたのだ。
詩帆の周りからのイメージといえば、“努力家で優しい人”だった。
この二人の女子は、詩帆の友人である。
詩帆には世話になっていた二人だが、それ故に詩帆には信頼感を抱いていた。
その日の二人は、結局詩帆はサボリだと認識し、2-2の五時間目がいつも通り始まる。
……、………、…………。
―――「やっぱり、放っておくなんて気が気じゃないよ」
そう思って、授業中こっそり詩帆にメールを送ったのは…
先程から詩帆のことを気にかけている女子、神崎 涼子だった。