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カァァァァァァァァン!

 

地響きと共に、二人の拳が正面から衝突した。

ライカの「爆圧」を乗せた一撃と、ティナの「不屈」を凝縮した一撃。

驚くべきことに、その破壊力は一分一厘の狂いもなく、完璧に相殺されていた。


「……ッ、これは!?」


先に目を見開いたのは、ライカだった。

彼女が放ったのは、コウタとの「鉄球キャッチボール」で掴んだ、衝撃を一点に収束させる独自の技術。

だが、それを受け止めたティナの肉体は、全く同じ「衝撃の逃がし方」をしていた。


「ライカ?」


ティナもまた、驚愕に頬を強張らせる。

二人は互いに、石切り場でコウタに爆破され、ハンマーで叩き続けられた。

その理不尽な地獄の果てに辿り着いた「答え」が、今、鏡合わせのように一致したのだ。


(……バカな。教え方は、一人一人にあわせていたはずだ!)


だが、極限まで磨き上げられた二人の生存本能は、無意識のうちに互いの長所を取り込み、同じ「究極の形」へと収束していた。


「……ティナァァァ!」


ライカが吠える!

彼女は追撃の回し蹴りを放つが、ティナはそれを「肉の奪い合い」で見せたコウタそっくりの野蛮な機動力で回避する。

そして、ティナが放つカウンターの軌道は、ライカが特訓で何度も見せた、あの「爆発の予備動作」そのものだった。


「……私と、同じ!」


ティナの瞳にも、歓喜の火が灯る。

別々の道を歩んできたはずの二人が、今、全く同じリズムで呼吸し、全く同じ殺気で語り合う。

それは、一人の師匠から分かたれた二つの魂が、再び一つに溶け合うような、奇跡的なシンクロニシティ。


「おい……見ろよ。……あいつら、全く同じ動きをしてやがる……」


観客席から、どよめきが上がる。

d-tubeの画面越しに、世界が目撃しているのは、二人の少女による、完璧に計算された「暴力の舞踏」。

コウタという地獄の種が、二つの異なる土壌で、全く同じ「最強の華」を咲かせた瞬間だった。

ドォォォォォンッ!!


二人の拳が空中で幾度も交差し、そのたびに石切り場の剥き出しの岩肌が、衝撃波で削り取られていく。

思考は、すでに不要だった。


ライカが打てば、ティナが同じ軌道で打ち返す。

ティナが守れば、ライカが同じ理不尽さでこじ開ける。

「爆圧」と「不屈」が、互いの肉体を媒介にして無限のループを描き、熱量を増大させていく。


「……あははははッ!! すごい、すごいです、ティナさん!!」


ライカの叫び。

彼女の筋肉はすでに限界を超え、微細な断裂を繰り返している。

だが、その痛みこそが、コウタと肩を並べて食ったあの肉のエネルギーを、さらに激しく燃焼させていた。


「……私も、楽しい……! こんなに、熱いの……初めて……ッ!!」


ティナの巨躯が、かつてない軽やかさで跳ねる。

その一挙手一投足が、ライカの鼓動と完全に重なり合う。

二人のシンクロが生み出す振動は、もはやアリーナの許容量を超えていた。


バリバリ、と不気味な音が石切り場全体に響き渡る。

激闘の衝撃で、巨大な岩壁に蜘蛛の巣状の亀裂が走り、天井から数トンもの岩塊が次々と降り注ぎ始めた。


「……おい、崩れるぞッ!!」


シオンが実況席で悲鳴を上げる。

観客たちがパニックに陥り、退避を始める中。

しかし、土煙が舞う地獄の底で、二人の少女だけは止まらなかった。


頭上から落ちてくる巨大な岩を、ライカは一瞥もせず、最小限の動きで粉砕する。

ティナはその背後を狙うつぶてを、自身の肉体で弾き飛ばし、ライカの背を守る。

戦っているはずの二人が、崩落する世界の中で、まるで一つの生命体のように躍動していた。


「……フン。死ぬなよ、二人とも」


コウタは逃げない。

降り注ぐ岩の雨の中、泰然とタバコを燻らせながら、自慢の弟子たちが作り出した「終わりの風景」を、ただ誇らしげに見つめていた。


地響きが、すべてを飲み込んでいく。

石切り場が完全に崩落するその瞬間。

土煙の向こう側で、二人の拳が、今日一番の、そして人生で最高の「正解」を求めて、再び激突した。


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