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トップを越えろ!  作者: たむ


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第97話 「境界突破」

壁は、

壊されるとは限らない。

越え方を見つけられたとき、

それはただの境界になる。

巨影は、ゆっくりと動きを止めていた。

宇宙の中心に、巨大な黒い存在が浮かんでいる。

腕のような構造は、すでに引き戻されていた。


輸送艇は、その正面で停止している。


チサが、操縦席で小さく息を吐いた。

「……止まったか。」


ヒナタは、モニターを見つめたまま言う。

「……違う。」


巨影の表面で、細かな歪みが生まれている。

それは攻撃の兆候ではない。


再構成。


レイが、静かに言った。

「……学習してる。」


第三勢力の意味が、ゆっくり流れ込む。


《……抵抗……確認……》


《……境界……再解析……》


ヒナタの胸の奥で、鍵が微かに震える。


チサが、眉をひそめる。

「……嫌な感じだ。」


巨影の胸部で、光が広がる。

それは中心の歪みではない。


境界そのものの模倣。


レイの顔色が変わる。


「……ヒナタ。」


「……何?」


「……向こう……境界を……作ってる。」


ヒナタが、息を呑む。


「……どういうこと?」


レイは、震える声で答える。


「……境界を……壊すんじゃない。」


「……自分たちで……新しい境界を……作る。」


チサが、低く唸る。

「……つまり……」


ヒナタが、言葉を継ぐ。


「……迂回する。」


巨影の周囲に、巨大な円環が生まれる。

光でも金属でもない。


空間の層そのものが、折り曲げられていた。


管制が、叫ぶ。


「……新規位相境界……形成!」


「……既存境界を……回避しています!」


ヒナタの胸が、強く鳴る。


境界防衛。

それは「入口」を守る戦いだった。


だが、今目の前で起きているのは違う。


入口そのものを作り替える行為。


チサが、操縦桿を握り直す。

「……面倒なことになったな。」


レイが、モニターを見つめる。


「……突破されます。」


円環が、ゆっくりと回転する。

その中心に、巨大な穴が開く。


宇宙が、静かに裂ける。


第三勢力の意味が、響く。


《……境界突破……》


ヒナタが、叫ぶ。


「……止める!」


鍵が鳴る。


輸送艇の周囲に、光の膜が広がる。


だが、巨影は止まらない。


円環の中へ、巨体がゆっくり進み始める。


チサが、歯を食いしばる。

「……押し返せない!」


レイが、突然立ち上がる。


「……違う。」


ヒナタが、振り向く。


「……ヒナタ。」


レイの瞳は、はっきりしていた。


「……向こうは……境界を作った。」


「……だったら……」


ヒナタが、息を呑む。


「……私たちも……作れる。」


一瞬の沈黙。


チサが、笑う。


「……面白い。」


ヒナタは、ゆっくりと目を閉じる。


境界とは何か。

壁ではない。

選択だ。


守るか。

通すか。


鍵が、強く鳴る。


ヒナタは、はっきり言った。


「……ここから先は……通さない。」


宇宙に、新しい膜が広がる。


巨影の円環と、

ヒナタの境界が、

真正面でぶつかる。


空間が、大きく歪む。


第三勢力の意味が、初めて大きく揺れる。


《……未知……干渉……》


《……再計算……不能……》


巨影の進行が、止まった。


だが、完全ではない。


境界と境界が、激しく押し合っている。


レイが、静かに言う。


「……ヒナタ。」


「……これ……長く持ちません。」


ヒナタは、うなずく。


「……分かってる。」


巨影の中心が、再び光る。


次の瞬間。


第三勢力が、

新しい戦術を選ぶ。

第三勢力は、境界を壊すのではなく、新しい境界を作ることで突破を試みた。

それは防衛戦の前提を覆す戦術だった。

ヒナタは同じ方法で対抗し、新たな境界を生成する。

二つの境界が宇宙で衝突し、巨影の進行は一時停止する。

しかし、均衡は長く続かない。

第三勢力はさらに次の手を探している。

境界戦は、ついに人類と第三勢力の“知恵比べ”へと変わり始めた。

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