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トップを越えろ!  作者: たむ


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第81話 「応答があった場所」

答えは、いつも言葉で返ってくるとは限らない。

だが、返事があったという事実だけで、人は前に進める。

 位相特別観測施設オルビタ。半壊した主制御ドームの中央、かつてレイが“欠損”として消えた一点に、微かな光が残っていた。ほんの瞬きほどの弱さで、次に見たときには消えてしまいそうな光。それでも、ヒナタの胸の奥の“鍵”は確かにそれを「応答」として受け取っていた。


「……今の、見たよね」

 ヒナタの声は小さいが、揺れてはいなかった。チサは無言でうなずき、拳を強く握りしめる。「ああ。幻じゃない。向こうから、何か返してきた」


 研究員たちは騒然としていた。計測不能領域からの自発的反応。理論上はあり得ない現象だ。だがモニターには、確かに通常ノイズとは異なる周期が刻まれている。レイが消えた場所と、完全に一致する座標で。


「……“空白”じゃない」

 ヒナタは一歩前に出た。「ここは、押し出された先と、まだつながってる。完全に閉じたなら、こんな返事は返ってこない」


 誰も反論できなかった。第三勢力は奪うとき、必ず“意味”を伴わせる。無意味な反応を残す理由がない。ならばこれは、レイ自身、もしくはレイを含んだ位相構造からの、意思に近いものだ。


 ヒナタは目を閉じ、深く息を吸った。恐怖はある。だが、それ以上に確信があった。レイは消えていない。ただ、こちらの世界の定義から外されただけだ、と。「……レイ、聞こえる?」声に出さず、心の中で問いかける。鍵が静かに鳴り、光が、ほんのわずかに強まった。


「……反応、増幅しています」管制の声が上ずる。「発信源は不明ですが……“呼び返し”に同期しています」


 チサが、ヒナタの横に並んだ。「もう迷うな。ここが入口だ」

 ヒナタは、はっきりとうなずいた。「うん。行き先は分からない。でも、“戻ってこれる場所”は、もう分かった」


 光は再び弱まり、やがて消えた。だが今度は、誰もそれを“終わり”だとは思わなかった。応答があった場所。それは、救出作戦の目的地ではない。出発点だった。

空白とされた場所から、確かに応答が返ってきた。

それは救出成功の証ではない。だが、完全な喪失でもなかった。

ヒナタは理解する。

レイは消えたのではなく、こちらの定義から外されただけだと。

行き先はまだ見えない。だが“呼び返せる場所”は定まった。

救出作戦は、ついに地図なき想像から、具体的な“入口”を得たのだった。

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