表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トップを越えろ!  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/49

第47話 「開戦」

始まりの合図は、いつも静かだ。

叫びも、祈りも、引き金の音もない。

ただ、“戻れない時間”が、音もなく流れ始める。

 〇六〇〇時。


 決戦級干渉宙域、突入。


――《全艦隊、前進開始》


 人類連合艦隊が、一斉に動いた。

 戦艦、巡洋艦、機動部隊、無数の光が、ひとつの方向へ収束していく。


「……始まった……」


 チサは、操縦桿を握りしめた。


「……レイ、聞こえる?」


「……はい。

 全回線、正常です」


 二人の機体は、最前線配置だ。

 ここは“守るための先頭”ではない。

 **“戻ってくる者を迎えに行く最前列”**だった。


◇ ◇ ◇


 敵影、接触。


 宙域の向こう側から、黒い奔流のようにヴォイドが溢れ出す。


――《斥候級多数》

――《迎撃級、後方に展開》

――《超級反応、未確認》


「……来すぎでしょ……!」


 迎撃部隊が、怒涛の火力で先頭列を薙ぎ払う。

 爆光、衝撃、断末魔のような通信。


 開戦は、一瞬で地獄に転じた。


◇ ◇ ◇


「……チサさん、右舷、抜けます!」


「……了解! 私が引く!」


 チサの機体が、前に出る。

 ヒナタの受け流しとは違う。

 正面から耐え、押し返す戦い方。


(……でも……

 今日は……

 “塞ぐだけ”じゃない……!)


 チサは、わずかに進路をずらした。


 ――道を、作る。


◇ ◇ ◇


 その隙間を、レイの機体が正確にすり抜ける。


「……突破します!」


 レイは、“後方監視”ではなく“前進”を選んだ。


 それは、もう“代役”ではない動きだった。


◇ ◇ ◇


――《超級反応、出現!》


 空間が、軋む。


 かつてチサが命を賭して塞いだ“あれ”と、

 同系統の巨大個体。


「……また……

 止める役……?」


 一瞬、迷いが走る。


 だが、チサは首を振った。


「……違う……!」


 操縦桿を、強く前へ倒す。


「……今日は……

 “止まらない”ほうを選ぶ!」


◇ ◇ ◇


 迎撃火力が集中する。


 だが、超級個体は、なおも生き残る。


――《前進不能》

――《このままでは、回収ポイントに到達できません!》


「……分かってる……!」


 チサの視界に、一瞬だけヒナタの顔がよぎる。


(……今ごろ……

 あの子は……)


◇ ◇ ◇


 そのとき。


 戦場の“奥”で、空間が歪んだ。


 それは、ワープでも、爆発でもない。


 **“世界の重なり合う音”**だった。


――《干渉反応、急上昇》

――《座標《OVERVERTURE POINT》、活性化!》


「……来た……!」


 チサとレイは、同時に気づいた。


(……ヒナタ……!)


◇ ◇ ◇


 超級個体の背後、

 空間に、淡い“ひび割れ”のような光が走る。


 それは、崩壊ではない。

 “接続”の兆しだった。


「……レイ! あれが……!」


「……はい……

 “重なる場所”です……!」


 だが――

 超級個体が、その前に、ゆっくりと立ち塞がった。


 まるで、“帰還”そのものを拒むかのように。


◇ ◇ ◇


「……どいて……!」


 チサの声が、戦場に響く。


「……そこは……

 帰る場所なんだから……!」


 機体が、再加速する。

 限界を、さらに一歩超える。


 レイも、並走する。


「……チサさん!」


「……行くよ!」


 二機は、同時に、

 超級個体の正面へ突っ込んだ。


◇ ◇ ◇


 その先の“ひび割れ”の奥で――

 ヒナタは、確かに、こちらを見ていた。

戦争は、戻るための舞台としても牙を剥く。

チサとレイは今日、“塞ぐ側”ではなく“進む側”を選んだ。

そして戦場の奥で、帰還座標《OVERTURE POINT》がついに活性化する。

その向こうには、確かにヒナタがいる。

だが、再会への道を塞ぐのもまた、戦争そのものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ