表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トップを越えろ!  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/43

第43話 「レイの問い」

誰かの代わりに生きることは、

やさしさにもなり、呪いにもなる。

少女は今日、その鎖を“自分の意志”で外せるかを試される。

 第三勢力宙域・精神投影空間。


 レイの目の前には、見覚えのある光景が広がっていた。


 小さな避難船。

 わずかに用意された、ひとつの席。


 そして、その席の前に立つ――

 もう一人の自分。


(……また、これ……)


 胸の奥が、ひりつくように痛む。


◇ ◇ ◇


 背後には、若い父と母の姿。


 あの日と同じ、

 優しくて、どこか覚悟を決めた顔。


「レイ……お前が行きなさい」


「あなたが、生きるの」


 記憶の中の声は、完璧に再現されていた。


(……やめて……

 それ以上、言わないで……)


――《問い:

 “代わりに座る人生”を、ここでも選ぶか》


 空間から、直接意味が流れ込む。


◇ ◇ ◇


 レイの足は、無意識に一歩、席へ向かいかけ――

 そこで、止まった。


(……私は……

 ずっと、それを選んできた……)


 家族の命の代わりに。

 仲間の席の代わりに。

 ヒナタの席の代わりに。


(……でも……)


 胸に、チサの声が蘇る。


――「一緒に言おう。“おかえり”って」


 小さく、拳を握る。


(……私は……

 “誰かの席”に座りたいんじゃない……)


◇ ◇ ◇


 レイは、ゆっくりと席から“横にずれた”。


 その瞬間、もう一人の自分が、驚いたようにこちらを見る。


「……どうして……?」


 レイは、静かに答えた。


「……私は……

 “代わり”としてじゃなく……」


 一度、深く息を吸う。


「……“迎える側”として、生きたいからです」


◇ ◇ ◇


 次の瞬間。


 背後にいた両親の姿が、少しだけ柔らかく微笑んだ。


「……それでいい」


「……やっと、自分で選べたね」


 その声は、責めるものでも、命令するものでもなかった。


 ただ、

 “見送る声”だった。


◇ ◇ ◇


――《問い:

 “誰かが戻ってきたとき、

 その席を本当に空け渡せるか”》


 レイは、間髪入れずに答えた。


「……はい」


「……私は……

 その人の席を奪うために、

 ここにいるわけじゃありません」


 そして、少しだけ震えながら、続ける。


「……私は……

 “帰ってきてもいい場所”を……

 守るために、座っているだけです」


◇ ◇ ◇


 空間が、ふっとほどけた。


 避難船も、席も、両親も、

 ゆっくりと光に溶けていく。


――《選択、確認》


◇ ◇ ◇


 次の瞬間、レイは機体のコックピットに戻っていた。


 荒い呼吸。

 汗ばんだ手。


 それでも――

 胸の奥は、不思議と軽かった。


「……私は……

 初めて……

 自分の席に、座れた……」


◇ ◇ ◇


――《レイさん!》


 チサの通信が、すぐに届く。


「……どう?

 そっち……」


 レイは、少しだけ間を置いて答えた。


「……大丈夫です」


 そして、静かに言う。


「……今度は……

 逃げません」


 その言葉には、

 “代わりに生きる覚悟”ではなく、

 **“自分として迎えに行く覚悟”**が宿っていた。

レイは今日、“代わりに座る人生”から一歩、外へ踏み出した。

誰かの命の順番に自分を差し出すのではなく、

誰かが戻ってくる席を守るという選択。

それは同じ「座る」でも、まったく違う意味を持つ。

少女は初めて、“自分の席”に座ったまま、

誰かを迎えに行ける存在になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ