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トップを越えろ!  作者: たむ


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第3話 「チーム戦! 暴走ヒナタと最悪の相棒」

シミュレーターを破壊し、“規格外”の烙印を押されたアオイ・ヒナタ。

だが、その異常な力は、まだ何ひとつ制御されていない。

次に与えられたのは、逃げ場のないチーム戦訓練。

相棒は、まさかの――最悪の組み合わせだった。

 訓練区画・第二演習フィールド。

 巨大な円形ドームの内側に、人工の宇宙空間が展開されていた。


「次はチーム戦だ」


 キリサキ教官の声が、全体回線に響く。


「二人一組で敵ユニット三機を殲滅せよ。

 勝利条件は“どちらか一機でも生き残る”ことだ。

 ただし――今回は“相棒の保護”も評価対象に含める」


「え……相棒の、保護……?」


 ヒナタは思わずつぶやいた。

 自分の暴走癖を思い出し、背中に嫌な汗が流れる。


「アオイ・ヒナタ」


 端末を見ながら、キリサキが淡々と告げる。


「貴様の相棒は――ミサキ・レイナだ」


「……は?」

「…………は?」


 ヒナタとミサキの声が、見事に重なった。


「な、なんでよりによってこの人なんですか!?」

「それはこっちの台詞よ! よりにもよって“シミュレーターキラー”と組むなんて!」


「シミュレーターキラー言うなぁぁ!!」

「事実でしょ!」


 二人の言い争いを、キリサキは冷めた目で見下ろす。


「相性が最悪だからだ」

「理由ひどくないですか!?」

「戦場で、相性の良い相手とだけ組めると思うな。

 以上だ。準備しろ」


 そう言って通信は一方的に切れた。


◇ ◇ ◇


 並んだ二つの訓練用ポッド。

 ヒナタとミサキは、互いに顔を合わせないまま、黙って機体に乗り込んだ。


「……言っとくけど、私は“あなたの暴走の後始末係”じゃないから」

「わ、私だって、好きで暴走してるわけじゃ――」

「結果がすべてよ。戦場では」


 きっぱりと言い切るミサキの声は、冷たくも、どこか正しかった。


 ――《チームα、配置完了》

 ――《敵ユニット、展開開始》


 ドーム内の仮想空間に、三つの赤い反応が現れる。


「三機……真正面と、左右に一機ずつね」


 ミサキの冷静な分析が、即座に共有される。


「ヒナタ、あなたは正面担当。

 私は左を引きつける。右は合流してから――」

「ちょ、ちょっと待ってください! 正面って一番危なくないですか!?」

「あなたは正面から突っ込む以外、選択肢があるの?」


「うっ……それは……」


 言い返せなかった。

 実際、ヒナタの操縦は“繊細”とは程遠い。


「安心しなさい。

 あなたが暴れた隙に、私が仕留める。

 ――いつも通りの役割分担よ」


「なんかひどい言われ方してません!?」


 だがその瞬間――


 ――《敵ユニット、ロックオン》


 三機の赤い光が、一斉にこちらを向いた。


「来るわよ、ヒナタ!」

「は、はいぃ!!」


 ヒナタは反射的にスロットルを押し込んだ。


「うわあああああああああ!!」


 訓練用ヴァルキュリアが、ほとんど直進しか考えていない勢いで突っ込んでいく。


「……やっぱり猪ね」


 ミサキはそう呟きつつも、正確無比な軌道で左の敵を引きつけた。


 ――ドンッ!


 正面の敵の攻撃が、ヒナタの機体をかすめる。


「ひゃあっ!?」

「回避行動が直線すぎる! ジグザグに――」

「無理無理無理! そんな器用なことできません!!」


 次の瞬間、第二撃。


 衝撃が走り、警告表示が点滅する。


 ――《擬似装甲、耐久六十八パーセント》


「ヒナタ、下がって!」

「無理です! 下がったら次が来ます!!」


 視界の端で、敵ユニットが再びチャージ動作に入るのが見えた。


(このままじゃ――やられる!)


 そのとき、胸の奥に、あの感覚が蘇る。

 第2話の終わりに芽生えた、“出力が勝手に跳ね上がる感覚”。


「ミサキさん……!」

「何よ!?」

「ちょっとだけ、派手にやります!!」

「ちょっとって……まさか――!」


 ヒナタは、歯を食いしばって叫んだ。


「――オーバードライブ、少しだけ解放!!」


 瞬間、ヴァルキュリアの機体が白く発光する。


 ――《出力上昇、制御不安定》


「バカッ!! それ今使う場面じゃ――」


 ミサキの制止が間に合わなかった。


 ヒナタの機体は、加速の限界を越え、正面の敵を文字どおり“殴り飛ばした”。


 ――ドゴォン!!


「え……?」


 画面の向こうで、正面の敵ユニットが粉々に吹き飛ぶ。


「た、倒しちゃった……?」


 その隙を逃さず、ミサキが左の敵を正確に撃破。

 残る一機が右から回り込んでくる。


「ヒナタ、出力落として! 今のままじゃ――」

「えっ……?」


 その瞬間だった。


 ――《オーバードライブ、出力制御不能》


「え、え、え!? 止まらない!?」

「だから言ったでしょう!!」


 暴走したヒナタの機体は、敵ユニットどころか、ミサキの背後へ突っ込んでいった。


「ミサキさん!!」


 間一髪、ミサキは急旋回し、ヒナタの突進をかわす。

 だが次の瞬間、敵ユニットの一撃が、ミサキの側面をかすった。


 ――《右腕部、擬似破損》


「くっ……!」


 ミサキの機体が大きくバランスを崩す。


「ミサキさん!! ごめんなさい!!」

「謝る暇があるなら、守りなさい!!」


 その叫びで、ヒナタはハッと我に返った。


(そうだ……!

 これはチーム戦なんだ……!

 私だけ生き残っても、意味がない!)


 ヒナタは必死に出力を押さえ込み、機体をミサキの前に滑り込ませた。


「――当たるなら、私に当たってぇぇぇ!!」


 最後の敵の一撃が、ヒナタの正面装甲に直撃した。


 ――《擬似装甲、耐久ゼロ》


 視界が暗転する。


◇ ◇ ◇


「……っ! はぁっ……!」


 ヒナタが目を覚ますと、そこは再びポッドの中だった。


「……終わった?」


 ハッチが開き、外の光が差し込む。


「……勝利よ。ギリギリでね」


 隣から、ミサキの声が聞こえた。

 ポッドから降りた彼女は、右腕を少し押さえている。


「ミ、ミサキさん……怪我、痛みます!?」

「これは擬似損傷よ。

 でも――あなたの突進がなければ、最後は私がやられてた」


 ヒナタは目を見開いた。


「え……」

「認めたくないけど……今回だけは、感謝するわ」


 その言葉に、ヒナタの胸がじんと熱くなる。


「ミサキさん……!」


「ただし」


 ミサキはヒナタの額を、指でぐいっと弾いた。


「次に同じことをしたら、本気で殴るから」

「ひえええええ!!」


 その様子を少し離れた場所から眺めていたキリサキが、静かに告げた。


「アオイ・ヒナタ。

 今日、貴様は初めて“力を守るために使った”」


 それは叱責でも、称賛でもない、不思議な声だった。


「その感覚を忘れるな。

 “トップを越える”とは、強くなることではない。

 誰かを守れる強さを持つことだ」


 ヒナタは、胸に手を当てて、ゆっくりとうなずいた。


「……はい。忘れません」


 こうして、暴走ばかりだった少女は、

初めて“誰かの盾になる戦い方”を知ったのだった。

力は、使えばいいというものではない。

初めて誰かのために力を振るい、アオイ・ヒナタは「守る戦い」を知った。

ぶつかり合ってばかりだった二人の間に、わずかな信頼が芽生える。

暴走する力は、まだ未完成だ。

けれどこの一歩が、彼女を“本当の戦士”へと近づけていく。

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