表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トップを越えろ!  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/51

第21話 「初任務! アステリア防衛線へ」

訓練は、準備でしかなかった。

本当の戦場は、何も教えてくれない。

生き方も、守り方も、間違いさえも。

すべては――一瞬で、結果になる。

 仮配属輸送艦アステリア・ランナーは、静かに星間航路へと入っていった。


 窓の向こうで、星々が線となって流れていく。


「……本当に、行くんだね」


 チサが、小さく呟く。


「……もう戻れないって感じがする」


「戻るよ」


 ヒナタは、前を向いたまま答えた。


「戻るって、約束したから」


 ユウが、少しわざとらしく笑う。


「よし、じゃあ全員生還な。

 それがこのチームの初ミッションだ」


 “チーム”という言葉に、ヒナタの胸が少しだけ温かくなった。


◇ ◇ ◇


 艦内ブリーフィングルーム。


「これより、第七外縁宙域アステリア防衛線の現状を共有する」


 スクリーンには、巨大な星系マップが映し出された。


「現在、敵性存在《ヴォイド反応体》の小規模出現を確認中」

「……敵……」


「確認されているのは、斥候級のみ。

 だが――」


 画面が切り替わり、破壊された無人観測ステーションの映像が映る。


「“単独行動では対処不能”な個体も含まれる」


 艦内の空気が、一気に引き締まった。


「君たちの役割は、正規部隊が来るまでの“時間稼ぎ”だ」

「つまり……倒さなくていい?」

「倒せるなら倒せ。

 だが、最優先事項は“生還”と“市民防衛”だ」


 ヒナタの心臓が、どくんと鳴る。


(“生き残れ”……

 訓練と、同じ言葉なのに……

 重さが、全然違う)


◇ ◇ ◇


 アステリア防衛線。


 無数の小型防衛ステーションと、移動型コロニー群が、宙域に点在していた。


「……きれい」


 チサが、思わず声を漏らす。


 だが次の瞬間、警報が艦内に響き渡る。


――《敵性反応、複数確認》

――《第一警戒レベル、発令》


「……来た」


 ヒナタの喉が、ひくりと鳴った。


「仮配属要員、出撃準備!」


 格納庫が開き、三人のヴァルキュリアが並ぶ。


「ヒナタ、いつも通りでいい」

「うん……受け流して、生き残る」


 チサとユウも、深くうなずいた。


 カタパルトが起動する。


「仮配属第一小隊、出撃!」


 次の瞬間、三人は戦場へと放り出された。


◇ ◇ ◇


 宙域の奥で、“それ”は静かに漂っていた。


 黒く、歪んだ輪郭。

 生物とも、機械ともつかない存在。


「……あれが、ヴォイド……」


 センサーが悲鳴のような音を立てる。


「ヒナタ、右から反応!」

「来る……!」


 斥候級ヴォイドが、音もなく加速する。


(速い……ドローンより……)


 ヒナタは、正面から迎え撃たなかった。


(追わない……

 競らない……)


 相手の進路に、機体の軸を“置く”。


 ――ズドォンッ!!


 ヴォイドは、ヒナタをかすめ、背後のデブリに激突した。


「……通った!」


 だが、その瞬間。


――《反応追加――上位反応体出現》


「……嘘でしょ……?」


 巨大な影が、宙域の奥から、ゆっくりと姿を現す。


 斥候級とは比べ物にならない圧力。


「これ……時間稼ぎどころじゃ……」


 ヒナタの心拍が、跳ね上がる。


(怖い……

 でも……)


 通信越しに、チサの声が震えながらも響いた。


「ヒナタ……逃げないよね」

「……うん」


 ユウも、声を張り上げる。


「俺たち、守る側だろ!」


 ヒナタは、操縦桿を強く握った。


「……全機、後退しながら誘導!

 正規部隊が来るまで、絶対にここで踏み止まる!」


 三機は、ゆっくりと後退しながら、防衛ラインの前に立ち続けた。


 その背後には――

 まだ避難しきれていない、コロニーの灯り。


 ヒナタの視界に、小さな生活の光が映る。


(……ここを、越えさせない)


 それが、彼女の最初の“守る戦い”だった。

初めての実戦は、覚悟よりも先に恐怖を突きつけてくる。

アオイ・ヒナタは今日、訓練ではなかった“本物の敵”と向き合った。

速さでも、力でもなく、ただ一歩、退かないという選択だけで。

その背後に、守るべき灯りがあると知った瞬間から、

少女の戦いはもう“自分のためだけ”ではなくなっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ