表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トップを越えろ!  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/43

第11話 「広がる格差! エリートたちの壁」

越えたと思った一線の向こうに、さらに高い壁がそびえ立つ。

努力でたどり着いた場所は、誰かにとっては“最初から立っていた場所”だった。

少女は、世界の広さを思い知る。

 訓練校・中央演習フィールド。

 久しぶりに、全候補生合同の模擬戦が行われることになった。


「本日のプログラムは、クラス混成の三対三」


 キリサキ教官の声が響く。


「底辺ルート組も、全員参加だ」


「……ついに来た」


 ヒナタは、胸の奥がきゅっと締まるのを感じた。

 底辺ルートでの訓練は、確かに自分を変えてくれた。

 だが――それが、どこまで通用するのかは、まだわからない。


 ヒナタのチームは、


アオイ・ヒナタ


ハルノ・チサ


タチバナ・ユウ


 対する相手は、中央クラス上位の三人だった。


「うわ……相手、ガチのエリートじゃん……」

「チサ、声が震えてる」

「ヒナタだって、目が泳いでるよ!」


 三人とも、笑ってごまかすしかなかった。


 開始のカウントが入る。


 ――3、2、1。


◇ ◇ ◇


 開幕と同時に、速度の次元が違った。


「は、速っ――!」


 敵チームの一人が、一瞬で距離を詰めてくる。

 無駄のない加速。

 無駄のない姿勢制御。

 それは、ヒナタが底辺ルートで必死に覚えた“基礎”を、最初から完成させている動きだった。


「ヒナタ、右から来る!」


「見えてる!」


 ヒナタは回避動作に入る。

 第10話で掴んだ“噛み合い”を思い出す。


(感覚だけで、動け……!)


 だが――


「遅い」


 冷たい声と同時に、敵の一撃がかすめた。


 ――《左脚部、擬似破損》


「くっ……!」


 チサとユウも、それぞれ別の相手に押し込まれている。


「情報共有、遅れてる!」

「向こう、連携が完成してるぞ!」


 エリートたちの動きは、“個人の強さ”ではなかった。

 最初から、三人でひとつの生き物のように動いている。


(これが……上位クラス……)


 ヒナタは、歯を食いしばった。


◇ ◇ ◇


「ヒナタ、下がって! このままじゃ集中砲火される!」


 チサの叫び。


(下がる……下がるだけじゃ、終わる……)


 そのとき、観測席のユズハが小さく呟いた。


「……“壁”だね」


 ミサキは、無言でフィールドを見つめていた。


(ヒナタが、やっと入口に立った場所。

 でも……あいつらは、もう“向こう側”にいる)


◇ ◇ ◇


 ヒナタの機体は、次第に動きを削られていく。

 判断は間違っていない。

 だが、一拍分、すべてが遅い。


「終わりだ!」


 正面、左右、背後――同時にロックオン。


(あ……これ、ダメだ)


 次の瞬間。


 ――ドンッ!!


 ヒナタの視界が暗転した。


 ――《擬似装甲、耐久ゼロ》


 少し遅れて、チサとユウも撃破される。


「……勝者、中央クラスチーム」


 無情なアナウンスが響く。


◇ ◇ ◇


 ポッドから降りたヒナタは、しばらく俯いたまま動けなかった。


「……ヒナタ」


 チサがそっと近づく。


「ごめん……私たち、全然――」

「違う」


 ヒナタは、顔を上げた。


「私、少し……“分かった気”になってた」


「え……?」

「底辺ルートでちょっと上手くいったから、

 “追いついた”って、どこかで思ってた」


 拳を、ぎゅっと握る。


「でも……全然だ。

 あの人たち、スタートラインがもう違う」


 その様子を遠くから見ていたミサキが、静かに息を吐いた。


「……やっと、同じ景色が見えてきたわね」


「ミサキさん……?」


「エリートっていうのは、越える“壁”じゃない。

 越え続けないと、押し潰される“地形”よ」


 そう言って、ミサキはヒナタを見下ろした。


「あなたは、そこに足を踏み入れた。

 ――それだけでも、今日は上出来よ」


 ヒナタは、少しだけ驚いた顔で、その言葉を受け取った。


(負けたのに……

 でも……何も得られなかったわけじゃない)


 視線の先で、中央クラスの候補生たちが淡々と次の準備をしている。


(あそこが……今の“壁”)


 ヒナタは、ゆっくりと背筋を伸ばした。


(だったら……

 また、一段ずつ登るだけだ)

努力で届いた場所にも、さらに高い当たり前が存在する。

アオイ・ヒナタは今日、初めて“世界の差”をはっきりと突きつけられた。

越えられないと知ることは、絶望ではない。

それは、越えるべき場所が定まったということでもある。

少女の視線は、次の壁をもう見据えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ