なにが、起きた??
前の文章を少しカットしてます。ご覧になられていない方は前のエピソードからお読みください。
よろしくおねがいします。では、本編スタートです。
朝、目を覚ますと、父上と母上が私たちのベッドの前に立っていた。
「どうしたの?母上?父上?」
ルイが首をかしげながら尋ねる。
「今日は、あなたたちのおじいさまとおばあさまに会いに行くのよ。」
えっ?私たちにもおじいさまとおばあさまがいたの?初耳なんだけど!
ルイも同じことを思ったらしく、「へ?」という顔をしている。
「とても高貴なお方だからね。今日はお勉強はお休み。早く着替えて準備しなさい。」
「「はーい」」
私たちは声をそろえて返事をした。
普通、公爵家なら侍女が着替えを手伝ってくれるものらしいけれど、両親はきっと、私たちの“秘密”がばれるのを恐れて、自分で身支度できるように教えてくれたのだと思う。まあ、私は前世の記憶があるから、教えられなくても着替えくらいできるんだけどね。ふふ。
母上が用意してくれた服に着替える。私のドレスは淡いピンクとクリーム色のシルク素材で、裾には繊細なレースがあしらわれている。動くたびにふわりと広がって、まるで花びらみたい。ルイはシルバーグレーのベスト付きスーツ。白いシャツの袖口には小さな刺繍が施されていて、細部までこだわりを感じる。
かわいいし、かっこいい。普段は動きやすい服ばかり選んでいるけれど、今日は特別な日。服も、どこか“高貴”な雰囲気が漂っている。
さあ、着替えようと思ったそのとき、ルイが話しかけてきた。
「リア。おじいさまとおばあさまって、父上か母上のご両親ってことだよね?」
ルイが興味津々な目で私を見る。
「そうだよ。そんな人がいるなんて知らなかった。しかも、高貴なお方だなんて…」
私はぼんやりと遠くを見つめながら答えた。
「緊張しちゃうね。でも、楽しみ。」
ルイの言葉に、思わず笑ってしまう。かわいいなぁ。
そんなふうに話していると、アクセサリーを持ったカル兄さんが部屋に入ってきた。
カルは深いネイビーのロングジャケットに金の刺繍が入った貴族風の正装。白いシャツに細めのタイを合わせていて、いつものラフな姿とはまるで別人。今日はなんだかクールで、ちょっと色気すら感じる。…いや、気のせいだと思いたい。
胸元には家紋入りのピンバッジ、腰には儀礼用の小さな飾り剣。足元は黒のブーツ型ドレスシューズ。完璧すぎて、ちょっとずるい。
「ふたりとも、着替え終わった?」
話しながら着替えていたけれど、気づけばもう準備は整っていた。
「ええ、着替え終わったよ。」「うん。」
それぞれ返事をすると、カルはアクセサリーをつけてくれた。
ルイの胸元には、公爵家を象徴する桜のモチーフの小さなブローチ。私には、桜とパールがあしらわれたチョーカー。かわいすぎて、ちょっとテンションが上がる。
「母上が髪型を整えてくれるからね。そういえば、二人とも鏡を見たことなかったよね?」
カルがふと尋ねる。そうだ。ここ二年間、鏡を一度も見たことがない。自分の姿すら、知らなかった。
「ないよ。鏡ってなあに?」
ルイが興味津々でカルに聞くと、カルはポケットから手鏡を二つ取り出して、私たちに渡してくれた。
「わあ…」
鏡の中の私は、目の前にいるルイとそっくりだった。
髪は、陽の光をそのまま閉じ込めたような濃い金色。さらりと揺れるたびに、光がこぼれるみたいで、なんだか夢の中の髪みたい。
瞳は、深い青。夜の湖に月が落ちたような、静かで吸い込まれそうな色。こい青――でも、ただの青じゃない。見れば見るほど、どこか遠い場所を思い出しそうになる、不思議な色だった。
でも…母上にも父上にも、カルにも似ていない。
「ねえ。私たちって、どうしてカル兄さんや母上、父上と似てないの?」
「それはね…祖父母に会ったらわかるよ。」
カルが笑いをこらえながら答える。その顔がなんだかずるい。
真剣に聞いてるのにー
鏡の中に映る私は、見慣れない誰かのようだった。




