扉の向こうに、なにかいる?
あれから、二年が経った。
私は今、二歳。見た目は普通の幼児だけど、頭の中は……まあ、前世の記憶もあるし、ちょっと複雑。
話せるようにもなったし、走れるようにもなった。ご飯もミルクじゃなくなったんだよ笑
そして、虹律属性のことは、あの日以来、誰も口にしていない。
私の属性は「無属性」ってことになってるけど、両親は常に私の属性について気にしている。
カル兄さんは、変わらず優しい。
「リアはぼくが守るからね」って、毎日のように言ってくれる。言ってくれるのありがたいけど毎日はもういいかもしれない。笑 うれしいけどね。でも、時々、何かを思い出したように黙り込むことがある。
ルインスは、もう歩けるようになって、よく笑う。そして話せるようにもなった。ルインスとの喧嘩もよくするようになったんだよ笑。二歳相手に喧嘩か~って思うかもだけど、精神が少し大人なだけで心は子どもなんだからね笑(どういうことよ笑笑)あと、ルインスもルイっていよばれてるんだ。
彼も時属性のことがあって、彼もまた“特別”な存在として、隠し通されている。
カイトは、相変わらず完璧な従僕。
でも、私が何かを見抜いたような顔をすると、ほんの少しだけ目を細めて笑う。
……たぶん、私が“普通じゃない”こと、全部わかってる。前世の記憶を持っているのも千里眼でばれていないかドキドキすることもよくある。
父上と母上は、表向きは穏やかだけど、時々、夜遅くまで父上の書斎で話し込んでいる。
「虹律の兆候が出ていないか」「リアストの揺らぎがないか」ー─そんな言葉が、壁越しに聞こえてくることもよくある。私のことだけじゃなくてルインスやカルについて、領地についてもよく話をしているんだけどね。
私は、まだ虹律属性を使ったことはない。使い方もよくわからないし笑母上があの時恐れていたのを知っているから。でも、時々、感情が強く揺れたとき、空気がピリッとする。
部屋の温度が変わったり、光が揺れたり──幸いなことに誰も気づいてないけど、ばれるのは時間の問題だと思う。千里眼をもつカイトがいるわけだし。
何かが、私の中で動いてる。それを感じるたびに自分が怖くなる。
ある日の午後。カル兄さんと庭で遊んでいたとき、ふと、彼が言った。
「リア。もし、誰かがリアを傷つけようとしたら、ぼく、どうすればいいと思う?」
私は、少し考えてから答えた。
「なんで、そんなこと聞くの?大丈夫だよ。」
カルは笑った。でも、その笑顔は少しだけ寂しそうだった。
「でも、ぼく、もっともっと強くならなきゃね。リアとルイの属性が、もしバレたら……」
その言葉の先は、風に消えた。
その夜、私は夢を見た。リアンナに生まれ変わる前の夢以来の夢だ。
夢の中で、広い空の下に立っていた。風が吹いて、草が揺れて、遠くで鐘の音が鳴っていた。
誰かが私の名前を呼んでいた。優しくて、でもどこか悲しげな声。
「リアンナ……」
振り返っても、誰もいない。
でも、胸の奥がざわざわして、何かが始まる予感がした。
目が覚めると、部屋は静かだった。
でも、窓の外に見える空が、ほんの少しだけ色を変えていた気がした。




