まさかの世話係になった!
私が歩き始めてから、一週間が経った。
「今日からお世話係になりました。ルネとニイヤルとカイトです。よろしくね!」
母上がにこにこ笑顔で、ベッドに寝ていた私たちに声をかけてくる。
……え?まさかの父上と母上と、知らない人?
ここ、公爵家だよね?前世の漫画では、公務が激務で、子育てなんて侍女任せってイメージだったんだけど。
まあ、よくわかんないけど、とりあえずオッケー?
「あ、カイトというのはね、僕の秘書みたいなもんだよ。仲良くしてね」
父上が、隣に立っていたカイトの肩を軽く押しながら紹介する。
カイトは私とルインスの前に膝をついて、丁寧に腰を下ろした。
「リアンナ様、ルインス様。
初めまして。私はリストン家に長年仕えております従僕、カイト・エルフォードと申します。
幼少より主に忠誠を誓い、日々その務めを果たして参りました。
このたび、主のご縁により、尊きリストン家の御令嬢と御子息にお目通り叶いましたこと、誠に光栄に存じます。
微力ながら、皆様のお役に立てるよう誠心誠意努めて参りますので、何卒よろしくお願い申し上げます」
……すご。
水色の髪に、海みたいに深い青の瞳。細身で、動きが静かで、なんか……品がある。
挨拶も完璧すぎて、異世界って感じ。いや、日本でもこういうのあるのかもしれないけど、聞いたことない。
とりあえず、返事の仕方がわからないからペコリだけしておいた。
っていうか、私まだ話せないじゃん。笑
一人で考え事をしているとカイトと目が合った。そして、彼はふっと微笑んだ。
それは、ただ口元がほころぶだけの笑顔じゃない。
水面に差し込む光のように、静かで、柔らかくて、どこか心を撫でてくるような笑みだった。
まるで、見てはいけないものを見てしまったような──そんな気持ちになるほど、美しかった。
……わあ。魔性の笑みってこういうの?(よくわかってないけど)
「えっと、今日は属性でも調べようかな」
挨拶がひと段落したところで、父上がぽつりとつぶやく。
「ええ、そうしましょうか。カルも連れてきましょう」
母上がそう言って、部屋を出ていった。
その間、父上はルインスを抱き上げて、よしよしと撫でている。
「ルイも大きくなったなぁ。歩くのはいつ頃だろうか」
独り言をつぶやきながら、優しい手つきでルインスをあやしている。
私はというと、カイトが相手をしてくれていた。
「リア様。ボールは好きですか?」
そう言うと、カイトは手のひらから白い光を放って、ふわっとボールを出してみせた。
……え?まじすごすぎ!
前世じゃ絶対ありえない!これ、日常で使っていいの?!
リアンナこと、すみれ(前世の名前)は、ありえないくらいに興奮していた。
「あいあい!」
目を輝かせてそう言ったら、カイトはなんとなく察してくれたみたいで、次から次に花やかわいいうさぎのぬいぐるみを出してくれた。
めっちゃかわいい。
リアストって、こんなに楽しいの?
こうして、母上とカル兄さんが部屋に戻ってくるまで、私はカイトと夢みたいな時間を過ごしていた。




