やっぱり
私たちは、ふかふかの真紅の椅子に座るよう促された。触れると、さらさらとした手触り。高級な素材で作られているのがすぐにわかる。座るだけで、背筋がしゃんと伸びるような気がした。
「本当に久しぶりね。ルネさんが妊娠の報告に来てくれた時以来かしら」
皇后陛下が、にこにこ笑顔でこちらを見つめている。まるで、ずっと前から私たちを知っていたような、そんな優しい目。
部屋は会議室のような造りで、中央には大きな長方形の机が置かれている。机の右側には皇后陛下と陛下、左側には父上、母上、カル、ルイ、そして私。まるで、物語の中の王族の会議に参加しているみたい。
「無事に育ってくれて、本当に嬉しいよ」
陛下が口元をにかっとさせて言った。
「私は二カル・カタルド。三人のおじいちゃんで、ニイヤルの父だ。よろしくな」
――二カル・カタルド。やっぱり、教科書に載っていた陛下の名前だ。
でも、私たちの苗字はリストン。どうして違うんだろう?ふと、疑問が浮かぶ。何か意味があるのかもしれない。
「隣は妻のハナン・カタルド。三人のおばあちゃんで、ニイヤルの母だよ」
「よく来てくれたわ。さあ、お菓子でも食べながらお話しましょう」
いつの間にか、侍女たちが静かにお菓子を運んできていた。クッキー、マカロン、果物の砂糖漬け…見たこともないような種類が並んでいる。父上――いや、ニイヤルがそれをちらっと横目で確認し、私たちに目線を送ってきた。
三人で、こくりとうなずく。
そのとき、ふと私は思い出した。
――あれ?陛下と皇后陛下が、祖父母?
そんなこと、誰も教えてくれなかった。公爵家のはずなのに、どうして王族と血がつながっているの?
私たちの苗字はリストン。なのに、父上は“カタルド”と名乗った。どういうこと?何が本当なの?
頭の中が真っ白になった。思考が追いつかない。心臓がどくんと跳ねる。
まるで、物語の中に迷い込んだみたいだ。
「えっと、カ――」
「カルから順番に紹介できるかな?本当の属性と名前、年齢、好きなことを言える?」
陛下の声に、カルがすっと背筋を伸ばした。
「カル・リストンと申します。属性は白属性です。六歳です。好きなことは外で遊ぶことです。よろしくお願いします」
「外で遊ぶのが好きなんだね。何して遊ぶの?」
陛下が興味深そうに尋ねる。
「鬼ごっことか、日向ぼっことか、大好きです」
「そうかそうか。私のことは“おじいちゃん”って呼んでくれ。よろしくな」
陛下は左手の親指を立てて、ぐっとポーズ。なんだか、ちょっとお茶目。
次はルイ。空気を読んだのか、そっと口を開いた。
「ルインス・リストンです。属性は金属性です。二歳です。好きなことは絵本を読むことです。よろしくお願いします」
――そうそう、言い忘れてたけど、ルイの属性は“金属性”ってことにしてるの。本人はそう思ってる。でも、本当は…。
「絵本が好きなのね。『裸の王様』とか読んだかしら?ああいう人にはなっちゃダメよ」
皇后陛下が冗談交じりに話しかける。
「もちろん。そんな人にはなりたくないです」
ルイが微笑みながら答える。
――ルイ…。君、まだ二歳だよね?
私は前世の記憶があるから、ちょっと精神年齢が高いのはわかる。でも、ルイは?言葉を話し始めたばかりのはずなのに、なんでそんなにしっかりしてるの?
不思議で仕方がない。あっ、そういえば次は私の番だった。
「リアンナ・リストンです。属性は虹律属性です。ちなみに、ルイは時属性です。年齢は二歳で、好きなことはルイと一緒で本を読むことです。よろしくお願いします」
言い終わる前から、空気が変わった。
私以外の五人が、目を見開いている。いや、属性を言った瞬間から、みんな驚いていた。
「え…リア。なんで“時属性”のこと知ってるの?」
最初に声を出したのは母上だった。口元を両手で押さえ、肩をわなわなと震わせている。
――続く




