はじめまして? part2
馬車から降りた瞬間、そこはまるで別世界だった。
色とりどりの花が咲き乱れ、空気まで甘く感じる。足元は、前世でよく見かけた歩道のように、縦横きっちりとレンガが敷き詰められている。だけど、どこか懐かしくて、でも見たことのない景色。思わず足元を何度も見てしまう。
「母上、父上。ここが祖父母のいらっしゃるところなんですよね?」
カル兄さんが、信じられないような顔で尋ねる。普段は冷静なカル兄さんが、こんな顔をするなんて珍しい。
「そうだ。賢いお前は、もう気づいたか。」
父上が静かに答える。なんだか、私にはますますわからない。
「とりあえず、行きましょう。」
母上が両手を広げて、私たちが手をつなぐのを待っている。私はルイと顔を見合わせて、そっと母上の手を握った。ルイの手も、少し汗ばんでいる。
「久しぶりに顔を合わせるな。元気にしているという報告は聞いているが…」
父上がぽつりとつぶやく。
「お義父さまもお義母さまも、リアとルイとカルに会いたいと、何度も手紙をくださったのですよ」
母上が嬉しそうに微笑む。その笑顔に、少しだけ緊張がほぐれる。
「リアもルイもカルも、失礼のないようにね。いつも練習している通りにご挨拶するのよ」
母上が私たちに向き直って言う。
「もちろんです、母上…」
気づけば、私たちは大きな建物の前に立っていた。ふと周りを見ると、誰もついてきていない。侍女も、カイトもいない。カイトは馬車使いさんの隣に座っていたはずなのに。なんだか、ますます不思議な気持ちになる。
私たちは、誰もいない古びた扉の前に立ち、そっと中へ入った。コツコツと響く足音が、やけに大きく感じる。
「コンコン。ニイヤル・カタルドです。入ってもよろしいでしょうか。」
父上が、なぜかいつもと違う姓を名乗って、扉の奥に声をかける。私とルイは顔を見合わせた。カル兄さんは、やっぱり…という顔でうなずいている。
「ええ、どうぞ。」
奥から聞こえてきたのは、優しそうな女の人の声だった。
父上が扉を開けると、そこに現れたのは――
「え…」
思わず声が漏れる。ルイも、驚いた顔で固まっている。
「よく戻ってきたね、ニイヤル。こんなにかわいい子たちを連れて…。ルネさんもお久しぶり。さあさあ、みんなこっちに座って…」
そこにいたのは、教科書で何度も見たことのある、陛下と皇后陛下だった。
え?公爵家なのに、陛下と皇后陛下が祖父母?どういうこと?
頭の中に、疑問がぐるぐると渦巻く。
まるで物語の中に迷い込んだみたいだ――。




