立て籠もり令嬢は国を売りに出しました
現在、自国の売り値を決めていた。
いや、本当に、どうしてこうなったのか。
まだ金額は決まらないし、時間はあるので、ちょっと、ここに至るまでの話をしよう。
まず、前提として、この国はすべての人にスキルがあって、そのスキルに応じた力を使える。
魔法も全部、元を正せばスキルで、スキルがあるから魔法が使える。
よその国はよく分からないけど、私の国ではそうだった。
そして、私のスキルは結界だ。
それを踏まえ、話を聞いてほしい。
私は、伯爵家の娘として生を受け、衣食住としては何不自由なく暮らせるはずだった。
私の当たり前の自由を奪ったのは、三年後に生まれた妹だった。
妹が五歳になった頃から私の生活はおかしくなってきた。
この妹、なぜか私のものをほしがるのだ。
そしてそれを助長させたのが母で、母を放置したのが父である。
とにかく私の持ってる自分のものではないものを手に入れねば気が済まないのではないかと言う勢いだった。
さすがに祖父母や友人からのプレゼントは必死にいやがったが、癇癪を起こす妹が面倒になった母が奪っていった。
しかし、外聞が悪いので、母が気に入らないからと妹に下げ渡したと言い出したのだ。
まあ、私の評判は地に落ちましたよね。
そんな評判だったが、私のスキルは有用だった。
スキルは神様から賜る、一人に一つ、絶対にあるものだ。
ないのは死人と言われ、実際、過去何度か討伐されたが、その中にほかの世界から迷い込んできた人がいたらしい。
神様の声を聞けるスキルを持ってる人が何年もかけて神様の声を聞いて、やっと分かったらしい。
ほかの世界がよく分からなくて、危険なものではないかとやっぱり討伐対象になっちゃって、根気よく神様は声を届けたらしい。
やっと、ここではない世界があって、事故でこの世界に落ちたりする人がいるらしいことがわかり、今ではすぐさま殺されることはなくなった。
というか、神様が言うには、スキルのない人間はいない。人間でスキルがないのは、別の世界からきた人だけとのこと。
それからは阿鼻叫喚になったが、知らなかった私たちの心を守るため、神様は、殺された別の世界の人たちをがんばって元の世界に帰してくれていたらしい。
その中で力がなくてほかの世界の神様も頼ったりしたので、スキルも少し様変わりはしていることがあるが、怖がることはないと、最後に告げて、神の声は降りなくなったらしい。
話がズレたが、私のスキル。
それは、結界。自分を起点として界を作り、それを外界と隔てることができる。
次元をずらしていると私は思っているが、この考え方は話ても理解して貰えなかった。
外と私の作っている界がズレているから私の界に干渉できない。だからこそ、私の作る結界は無敵なのだ。まあ、ズレているのは中と外なので、結果的に内側から攻撃もできないけど。
そんな都合のいい守り、王族が目を付けないはずがない。何より評判が悪いので死んでも良いと思われてるんじゃないかと思う。
そんなわけで、私は十歳に王子との婚約を命じられた。
いわゆる王命ってやつらしい。
父は、私の評判を知ってるし、最初は退けたらしいが、先ほどのことを言われて受けたらしい。
衝撃でしたね。家の中を知ってて放置してそのしわ寄せが私にきてるのに、私が悪いって思っていると知って。
で、まあ、再度話を戻すとですね。
私、妹から三度目くらいの襲撃を受けたとき、それはもう必死になって抵抗したんですよ。
でも奪われた。ものすごい衝撃と絶望に苛まれて、倒れたんですね。
誰も看病してなかったらしいと知って、更に衝撃を受けたんですが、なにやら私の部屋に入れなかったらしいと後から聞いて、自分のスキルに、何か変化があったのかと確認をしたら、なんか、変なのが増えてたんですよね。
それが。
『観察者』
最初は私が何かを見てるのかとも思ったんですが、観察者って人が指定して、見ている人物の一人ということが、後から分かってきた。
だから正しくは、私は、観察対象者なんだと思う。
それに気づくと、なにやらその観察者さんの意思みたいなのが分かるようになった。
それは、気がついた人間だけの特権らしく、『観察者』が付いてても、自身が観察される側だと気が付かなければ、理解できないようになってるらしい。
私は早々に気が付いちゃったので、分からなかった感覚が薄いんだけど。
強制的に王族の婚約者にされ、何かと便利に使われる立場に落とされたわけですが、私の不本意を意に介さず、自分だけ不本意って思ってる婚約者には心底あきれた。
まあでも、呆れから虚無まで行くとは正直思ってはなかったんだけど、まさか、物語みたいなことを素でやられるとか、予想外すぎたわ。
この状況の発端の婚約破棄劇がパーティー会場にて唐突に叫ばれた。
理解が追いつかず、随分と間を置いて、問いかけるのが精一杯。
「いったいどういうことでしょうか?」
努めて冷静に、その人物、大変遺憾ながら、我が国の第一王子にして、王位継承権第一位の方に問いかけた。
これ、確実にまずいことになりそうなんですけども。
どうしたものでしょう。過去最高なことになりそうで、内心冷や汗が止まらない。
なぜ私がこんな焦っているかの説明をするのには、私の持ってる謎スキルの話をしないとならない。
まあ、この状況で話をしたところで信用されないし、おそらく、話さなくても理解できない。そのくらいよく分からないことなのだ。実際、私自身もよく分かってない。
そんな風にぼんやりとしている間も彼の話は続いていて。
「お前は醜い嫉妬で、私のそばにいる女生徒に無差別に嫌がらせをしたことは分かっている」
これは、一人じゃないことにつっこむべきなのだろうか。せめて一人に絞った方が世間体はよかった気が。
いや、英雄色を好むとか言ってしまう気なんだろうか。
英雄でもないくせに。
「なにかしらがあったことを私も把握しておりますが、まず持って、嫉妬などするはずもないので、嫌がらせなどする必要を感じません」
だいたい、最初の出会いからして悪く、恋心があったとしても育つ隙がなかったのですが。あの態度でも王子であるから愛されると思っているのか。恐ろしい。
「ふん。俺の寵愛を欲して足掻いていたくせに。だいたい引きこもりの立て籠もりが図々しいのだ」
足掻く? それは、王子妃教育か? やらなくて良かったのなら、やりたくもなかった。だいたい、今時体罰必須の教育など流行らないので、そういう教師は片っ端から辞めさせたけどね。
「教えが難しく、教師を何度も変えていたが、それでも学んでいたのは、そういうことだろう」
いいえ、やりたくもないのに体罰まで受けていられないし、お宅の息子の態度悪すぎて、婚約解消したいんですけどと、何度か陳情したくらいには、愛情はなかったんですけれども、どこをどう見たらというか、私が解消したいって言ってたの、伝えられてないのか? 伝えられた上でこれだったら、更に恐ろしいんだけど。
しかし、まさか、体罰教師を片っ端から辞めさせて、真面な教師に変えたのを、教えについて行けなかったと思われているとは。
まあ、どう思われていてもいいんだけど、問題は、私が支払ってきたものの対価がどうなるか。
私以外に見えていないスキルと言って良いのか分からないものが、この状況だと最大級の威力を発揮しそうなのだ。
ちなみに誰にも見えていないもの、『観察者』は、先述の通り、私を通して世界を観察しているもので、私の観察をしている方は、やられた分は取り立てる方だった。過去何度もそれは起きているんだけど、周りには知られていないんだよね。
それゆえに、王子の返答如何では、本当に過去最高規模のろくでもないことになる予感しかしない。
「このお話は、陛下もご存知なのでしょうか?」
「当たり前だろう。私の一存だけでこんなこと出来るはずがない」
変なところで常識があったことをこれほど悔やんだことはない。
「それは、もう、なんと言いますか。ご愁傷様でございます」
深々と私が頭を下げると同時に、私にだけ聞こえる声が、無情に告げた。
「これより査定を始めます」
その声が私の頭の中で響き、顔を上げたときには王城にいた者は、全て外に追い出された。規模が大きくなるとは覚悟していたが、城一つ分はさすがに予想外というか、予想通りというか。
まあ、査定が始まってしまった以上、私にはどうしようもないので、終わるまで暇をつぶすしかない。
城一つ分もあるので、散歩したり、探索したりと、暇を潰す手段はいっぱいありそうだから、部屋に閉じ込められるよりはましかもしれない。
査定の元である観察者が見えたのは、私が七つになる頃だったかな。
まあ、色々と奪われ、観察者なんてものが見え、それを理解した頃。見えて理解してから、一年もたってない頃だったかな。
運命の日。
父がどこからか土産で買ってきたぬいぐるみが私の手に渡る前にすぐさま奪われたとき、私はとうとう声を荒げた。
けれども、母がまたしてもいつもの言葉を吐き、その後、あの声が響いた。
そう。査定。
査定って何だろうと思った瞬間、私は自室に閉じ込められた。自身のスキルでもって。
どうやら私がそのまま外にいる状態で、査定をすると、害を加えられる恐れがあると判断して、親切に結界を張ってくれたようなんだけど。
何の前触れもなく私も閉じ込められた状態で、大変焦った。
そうそう、話を戻して、査定ですよ。
簡単な意志疎通しか出来ないけど、私が受けた精神的苦痛や奪われたものの相場、それに対する思い入れ、その他諸々を加味して、母と妹から、相応しい金額を取り立てるとのこと。
何だろうそれって思っていたら、数時間後、私の目の前に袋が現れた。
金貨が何十枚か詰まった袋。
あまりに唐突すぎて、やっぱりなんだこれって思えば、これが査定結果だとわかり、私の奪われたものはこれだけの金額になるとのこと。
どこから奪ったんだろうかと不安になると、これから母と妹に支払われるものや、すっかりと存在が忘れ去られているものがお金に替わっているらしい。
これからって、いったいどのようになっているのかは、私にもさっぱりだったんだけど、何度かの査定を経て、なんとなく、母と妹の装飾品や食事の質が落ちているのが見た目からも分かった。
けど、それが他人には分からないんだよ。本当怖い。
とはいえ、査定も、その後の状況も、私以外気が付いていないようなので、まあ良いかと、流した。
正直に言うと、考えるのが面倒くさいって言うか、考えるだけ無駄って言うか。突き詰めると空恐ろしいので、考えないことにした。
なんと言っても、この査定、私が苦痛を感じるごとに行われ、その度に自室にこもる羽目になり、両親にも妹にも、私が何かあると立て籠もる質だと思われると言う、弊害も生まれたが。
私に色々するので、妹と母の状況が恐ろしいことになってきているので、本当命に関わる前に思い直して欲しい。
状況は伝えられないし、誰も認識出来ていないしで、戦々恐々の日々を送ることに。
いや、ちょっと、父には言ったんだよ。
「最近母と妹、質素じゃない?」
って。
そしたらね。父はしたり顔で。
「二人とも本当に慎ましやかに過ごしているのだから、お前も見習いなさい」
って、むしろお説教されたんですよ。
それで私、気が付いてしまった。
負債が膨らみすぎて、母と妹、もうこれからの一生、華やかな衣装を纏う機会がないんじゃないかってことに。
今ですらギリギリなのに、この先このままいったらどうなっちゃうんだろう。
さすがに死ぬまでのことにはならないとは思うんだけど。
母の負債は父が負ったり、妹の負債はこれからの夫とか子供とかが払うことになったりしないよね。
まあ、父はいいんだけど。
ただ、この状況に戦々恐々してたのが、精神的苦痛に計上されていたんだったら、悪いことをしたなとは思った。
そんなわけで、今までの被害は、家の中だけだったので良かったが、いや、本当はよくもないんだけども、年頃になり、否応なくお茶会に出て、私の世界が広がっていけば、関わる人も増えてくるのが問題。
家は今までの蓄積があるので、これくらいならこの程度かなって予想が付くんだけど、他の人の嫌がらせは、観察してる人がどう判断するかが全く読めない。
今までは一日も拘束されていなかったのが、このままだと、数日立て籠もる可能性が見えてきたし、金銭で支払われているため、隠し場所に困ることになってきた。
そこで私は、観察をしている人と、交渉をすることに。
なにより、自室で一日程度ならまだ言い訳が立つけれど、数日ともなれば、言い訳も辛い。そして、何を置いても生理現象と食事が。
そんな話をすれば、確かにと納得してもらえ、さらに次は、金銭の隠し場所がもう辛いと訴え、これからは、金銭ではなく、マジックバック、もしくはそれに準ずる物に変えて、今ある金銭を入れておきたいと伝えた。
出来れば、時間停止出来ると助かるとも。時間が停止していれば、食事を入れていることも出来るしね。
これも好意的に受け入れられ、私は観察している人の言うところの魔法の袋を手に入れた。
入れておきたいものに入り口を触れさせると、大きさにかかわらず吸い込み、取り出したいときには、中に入っているものが頭の中で一覧にされて、指定すれば引き出せる。
そして、どこかに繋がっているらしいそれに、観察している人は、好き勝手追加していた。
助かるけど、良いんだろうかとも考えると、これが見えるのは、本当に希なので、多少羽目を外しても、目こぼしされるとのことだった。
羽目を外している自覚があったのかと、そっと思ったが、突っ込むことはしない。
だって、とっても助かっているので。
それも、私が苦痛を受けたものの金銭から換算されているとのことなので、元を正せば私が受け取るものらしい。
本当に、これから平気なんだろうか。ちょっと、金銭と引き換えにしたものが、スペック高すぎて、不安しかない。
主に、母と妹の行く末的に。
社交界に出てからは、頻繁に査定の言葉を聞く羽目になった。
いや、ほら、曲がりなりにも王子の婚約者なので、やっかみが酷い。本当、蹴落としたい気持ちはよく分かる。私も蹴落とされて上げたい。
けれども、私だって、何度かやんわりと、盆暗と一緒になるとか虫唾が走るんですけど、お宅の息子さんの教育どうなんです? と、何重ものオブラートに包んで聞いてみたことはあるんだが、なんか、お前の気にするところじゃない的なことを言われて放置され続けてんだよね。
いや、私としても、積極的に関わらなくていいんなら、良いんだけど。
何というか、結構我慢してるんだけど、これ、我慢の限界が来たら、どうなっちゃうのか、予想が付かない。
私、責任取れないので、どうでもいいならとっとと婚約をないものにしたいんだけどな。
と、日々思っては居た。
されど王命。私だって国を潰したいわけではないので、我慢はしてた。
しかしながら、私以外には気が付かれない仕様なので、誰にもこの恐ろしさを伝えられない。
私なりに努力はした。努力はしたけど、努力したところで報われないことは、実はだいぶ前から気が付いてはいた。母と妹を見てたので。
あの言葉を聞かないようにとは思っていても、それを誰に言うこともできないし、理解もされないので、お手上げ状態。
なので、せめて私が我慢しようと、必死に立ち回っていたけど。
まあ、そんな私の努力は虚しく終わったわけだ。
あの日々は、気が付けばとんでもない額になって居たようで。
城ですまなかった。いや、むしろ城ごとだったと言うべきなのか。
で、冒頭に戻って、数日後。
お隣の国の王様がやってきたんですよ。
えー、私の精神的苦痛とかが、ここまでの金額になるとは。
まあ、うん。現在十八歳。婚約時、十歳。少なくとも丸七年は、苦痛にまみれていたし、その間、母と妹の攻撃もあったし、父は役に立たなかったし、王様も王妃様も全く役に立ってなかったし、教師も酷かったし、入れ替えても、酷かったし。
それを丸七年。しかも国のためと言われていたので堪えていたから、賠償対象が国になったんだなと、うっすら理解した。
私の苦痛の根源が国で、国がなければ、こんなことになっていなかった。突き詰めれば、この国がなければ、この国の王族は存在しない。
そう、この国がなくなれば、私の苦悩も苦痛も全部清算されるわけですよ。
いや、ちょっと、理解出来るけど、規模大きすぎない?
と焦っていると、見てる人たちの憤りも上乗せされたらしいとの反応。
それは、国を売り払う規模ですね。
と言うか、いつの間に見てる人増えたんですか?
あ、魔法の袋を貰ったとき。あれ、私を見ていた人だけでは用意出来なかったので、他の人を頼ったら、私が嬉しそうに用意されたものを食べたりしているのを見て、楽しくなっちゃって、気が付けば、ちょっと増えてたと。
「いえ、おかしや食事は大変ありがたいので、私を見ているだけで楽しんでいただけていたならなによりではあるんですが。ちょっと、自分で処理出来ないところに」
なんか、もう感情とか状況とか、とにかく諸々処理が追いつかない。
そんな状況だったけど、時間は無情に過ぎていき、でまあ、今現在、国の身売り金額が私の目の前に積み上げられている訳ですよ。
「まさか、神からの神託がおりるとは驚いた」
からからと鷹揚に笑うのは、うちの隣の国の王様だ。多少のおかしさは感じているものの、それひっくるめてのこの鷹揚さ。うちのとことは格が違うなと、ひっそりと思う。
「私もまさか、国の金額が神託でもたらされるとは思いませんでした」
本当にこれに尽きる。観察してる人達の言では、戦争をしてこの国を治めたときの支出から、人的損害を引いた金額らしいが、久々の禄でもない額に、なんと言っていいのか。
げっそりと言葉を返せば。
「お膳立てなのか、この国の主だったものは、城どころか国からはじき出されていたぞ」
と、さらなる恐ろしい言葉がもたらされた。
どうやら、敗戦して、国を追われた体で処理される前提っぽいんじゃないかと無知な私もピンときた。
「王侯貴族限定で国外追放? と言うか、敗走?」
そして平民はそれを不思議とも思っていない。
いや、まあ、上が変わっても、早々民草の生活は変わらないしね。うち、私に対しては、これほどの規模のことを起こすことをしていたけど、圧政敷いてたわけじゃないし。
一番上が多少盆暗でも、それを支える下の人たちが有能だったらいいだけなんで。
「この金額を私が受け取ると査定終了になるんだろうけど、この国の貴族達、どうなんのかな」
「それはお前の考えることではないだろう。私とて神託によってここに導かれたが、おそらくお前の存在は覚えていることはできまい。うまく都合よくお前が関わらない理由が後付けでもっともらしく記憶に残るのだろうからな」
「確かに」
神託をおろせるような観察してる人達のやることだ。この王様の言葉はおそらく真実になる。
なにより、この国の王様以下を放って置くはずがない。母と妹ですらあれだったのだから、おそらくこのお金の半分くらいはあの人達の負債だろう。
その負債の支払いがどうなるのかは、私の知るところではないので、仕方がない。
隣国の王様は、私の身の振りをちょっと心配してくださった。いい人だ。
でも、私一人でどうにか出来ることもないし、下手にここで保護されると、両親以下が煩いことになるだろうし。
「ここまできたら未練もないので、私は国を出て旅でもします」
家族にも国にも興味がない。だけども、観察してる人達には恩がある。
ならどうするかとなれば、旅しかないでしょう。お金はあるし、求めれば便利な道具も融通して貰えるかもしれないし。旅で危険な目にあっても、それも醍醐味と思おう。
いや、死ぬのも分かってるよ。すごく自分が適当なのも分かってる。
でも、この国に居たいかって言われれば、即答で、居たくないと返事をするし、家族と暮らしたいか問われれば、考えたこともないと答える。
だから、旅に出るのは必然なんだよね。
何より、その方が私を見てる人も楽しいだろうし、私も楽しい。
このとんでもないお金があれば、道具の交渉が失敗しても、護衛も馬車の用立てだってできるだろう。
後は人を見る目だけども。長年の積み重ねで悲しいことに、私を利用しようとする人間は何となく分かるんだよね。
なにより、私が生きて動いているならば、査定がかからないわけがない気がする。と、言うことは、私、これからもお金にだけは困らないはずなんだよね。
「風光明媚な場所でも訪ね歩くか」
気軽にいったこの一言が、まさかのサバイバル一直線だとは気が付いていなかった私は、これから訪ねるであろう優美な場所を思って、一歩を踏み出した。
あと二つ、タイトル考えてて、「観察者ははしゃぎすぎていた」「本当のスキルは取り立てのようですが、真実は損害賠償です」があったんだけど、流行のタイトル、○○令嬢~って感じな気がしたので、このタイトル。
はしゃぎすぎてたタイトルだったら、この後書きの小話は、観察している人たちだったかもしれない。
と言うわけで、彼女が考えていた優美な、いわゆる高いホテルに泊まって、綺麗な景色を眺めながらブランチ食べる。は、夢と終わったりする率高そうって言う話。
「うぐ。確かに景色が綺麗な場所っていったら高いところだよね。だからってこの厳しい山を乙女に登らせるとか、鬼畜。というか、非道」
「だってなあ、ここらで一番景色が綺麗なとこっていったらここだからなあ」
「そこはふつう、人と装備を見てランク落とすでしょうよ」
「おー。嬢ちゃん頭いいな」
「ぎゃー。なんで、どうしてー」
「眺めが良いっていったら、俺の相棒に乗って眺める空だろ」
「乗ってんのはあんただけで、私は吊されてるんですけどー」
「細かいこと気にすんなよ」
「確実絶対細かくないからーっ」
なんて未来がいっぱい待っているかもしれない。
そう、人の悪意には敏感でも、頭悪い人は見抜けないという落ちでした。