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(10-10)ゼルガニア帝国(鉱山)

(10-10)ゼルガニア帝国(鉱山)


 お金ってね、各国で違うんですよ。以前魔導国の見本市でも言いましたけど、共通なのは、魔導国と帝国だけ。銀行なんてありませんからね、面倒だったらありゃしない。ゼルガニア銀貨の残りがまだありますでしょ、どうしましょ。そう言えば、ロウタ達はどうしたって思っていますか、ロウタ達はですね、2度目のお産でお留守番なのです。帰り道ですけど、ブルボニアとゼルガニアの境にある山に寄ってみました。おはようございます、辺境村村娘です。


1. 鉱山て普通は公の管理だよね


 鉱山てのは、普通は領の運営でして、鉄とか亜鉛、鉛、錫なんかがそれに当たります。それでね、金銀銅は国の管理ということになっているんですけど、それらが取れなくなった時はどうするかと言うと、領の管理になります。所謂払下げ。なくなってから払い下げられても困るような気もしますけど、金銀銅以外にもあるかも知れないと言う事で、まあそれなりに『ははっ、有り難く』って事です。しかも有料なんですよ、だから有効な物が取れなかったらそりゃもう赤字で、そういう所は取れない資源を求めて、延々とただただ掘るだけの、罪人の詰め込み場所たる収容所鉱山になるわけですね。


 ほんで稀に私有鉱山と言うのも発生します。有効な物が取れず領有しても困るだけって言う鉱山が、払い下げ料金補填のために競売に出されて私有地となります。買う方は結構博打だったりするんですけどね、そういう人は『山師』と呼ばれて、投機的な事業で金儲けを企てる者だったりします。一攫千金狙いですね。


 というお話を眼の前にいるマウントさんに聞いている所です。この人『やっちまった』状態で、破産寸前。失意のズンドコにいる時に、誰かにぶちまけたかったんでしょうか、捕まってしまいましてね、今に至ります。


「なるほど、あると思っていた金目の鉱物が取れなかったと」

「そうなんだよ、土地的に確実にあると踏んだんだがよ、何もねえ」

「場所はどこですか」

「あん、この街の北西にあるだろ、山が2つばっか。あれだよあれ」

「あの岩山みたいなのですか」

「そうだ、綺麗所のネーチャンの乳みてえだろ、双乳山って言うんだぜ」

「山頂にぽっちまであって、本当にそれっぽいですね」

「ああ、東にもなちと小さいが似たような山があるんだよ、そこは金が出るんだよなあ、だからよ行けると思ったんだけどよ、だめだった。はぁー、銭無しだ」


 話しを聞いていたアッセさん、ちょっと乗り気。


「ミーちゃん、行ってみませんか。っていうか、行きたいです」

「なんで、珍しい。乳がいいの」

「違いますよっ。この人の言う通り何かありそうなんですよねー」

「鉱山なんてあそこの廃鉱しか知らないから観光してもいいけどね」

「よし、行きましょう。登ってみたいです」

「ちとその前に、マウントさん行ってみても良い?」

「おお、構わんけど。俺の山だし」

「なんか見つけたら半々にしてくれる?」

「半々かー、7:3じゃだめか、おれが7分」

「いいけど、鉱物の種類にかかわらず、3分で」

「おお、あったらな」

「じゃ、これに記名をして下さい」

「なんだ、ああ取り決め書か、それもそうだな。よしっ、これでどうだ」

「はい、確かに」

 

 ということで、山登り。婆ちゃんはとうの昔に宿へ逃げました。ここは、一山の高さが1[km]、東西南北に1[km]のほぼ円錐で、それが双峰だからまさに乳型。


「僕等は左で良いですか」

「それなら、アタシは右乳を見てみるね」

「それじゃぁ、ヨーイ、始め~」

「「おぉーっ」」


 ということで、右乳登山。ブルボニア方面に向いて右ですから、北になります。探索はもちろんエル君宜しくで。いちいち掘ってなんていられません。人の所有だしね。


〔下の方はなさそうでんな、頂上まで行かんとわからんとちゃうかな〕

〔残念。ほんじゃ登って見るね。また後で〕

〔せやな、またな〕


 昔は鉱山だったわけですから、それなりに道はあるんですけど、既に獣道。それも抗口は下の方なので、上の方は何もなし。草を寄り分け、茨をかき分けようやく頂上。ポッチも近くで下から見ると結構高くて、100[㍍]位はありそうです。


「登り口がないな、しかたがない螺旋階段を作っちゃお」


 乳首のような岩山を螺旋状に削って頂上へ向かいます。削れた石を調べたらですね、金を含んでいる気がするんですよね。量はたぶん赤字になるくらい。


〔エル君、この土なんか違うよね〕

〔せやな。えらい少ないがな、あんさんらが使う(つこう)とる金貨に似とる〕

〔だよね、ありそうだよね。掘らなかったのかな〕

〔ここは天辺やさかいな、掘れんかったちゃうかな〕

〔そうかもね。さて頂上だけど、直下に何かあるような気がするんだけど〕

〔あるで、深さまではよう分からんけどな、金やったかありよるな〕

〔ただ、細いよね鉱脈。直径で20[㍍]位しかないな〕

〔せやな、これじゃ人にはようわからんやろ〕

〔そういう事か、よし、めーっけ〕

〔それじゃな〕

〔はーい、ありがとうね〕


 精霊さんがいると楽だわー、あっという間に金鉱脈。すでに私有地になっていますが、そこからのお取り上げも無いそうなんで、全部マウントさんの物。3割は私等です。それで、左乳方面を見ますとね、熱水鉱床ってやつでしょうか、乳首相当の所から湯気が吹き出ていました。はっはっは、見た目がエッチいです。


「おーい、どうだった」

「やっぱりありましたよ、天辺の真下にすごく細い銀鉱脈が」

「そっちも、こっちのは金だった」

「金かあー、負けたぁ」

「でも左の山からは温泉も出るみたいだよ、ちょっと削ったら吹き出しちゃった」

「ああ、湯気が出ていたよね」


 ということで、マウントさんに報告に戻りました。噴出する湯気が遠目にも見えていたようで、マウントさんあんぐりと口を開けて、呆然としていましたが、私等を見ると走り寄って来まして、お叫びに。


「おい、何を見つけた。どうやって見つけた」

「えっ、土の魔法ですけど。詳しくは【WEB】で」

「【WEB】ってなんだ」

「詳細を聞いてはいけないって事です」

「そうか、そうだな。それでどこにあったんだ。俺すら見つけられなかったのに」

「両方とも山にあるポッチの天辺。それもすごく細い鉱脈っぽいよ。一応印を付けてきたけど、規模は分からなかった」

「そうか、それでも助かる。よっし、3割だったな。掘れたらまた来てくれ」

「「「はーい」」」

「あ、そうだ。見れば判ると思うけど、熱湯が出るみたいだから、気をつけてね」

「そうだな、死にたくはねえな。ありがとよ、これで破産しなくて済みそうだ」


 ということで、鉱山散歩おしまい。含有率なんてのはまだ分かりませんが、あれっ?金が増えちゃうのかな。まあいいや、あんなに細い鉱脈じゃあってもたかが知れているってものです。一年位したらまた来てみましょうかね。


2. 今日も元気だ3コロコロ


 家に戻ったら、生まれた子狼達は、すでに毛皮になっていまして、コロコロしていました。また、エッちゃんが呆けていますけど、アッセさんあんたもか。


 それで、生まれた時には私等いなかったじゃん、家の匂いとかと同じなので、判ることは判るみたいですけど、子狼さん達には、どうもこっちが餌に見えていたらしくて、お宅拝見に行った時にしっかり吠えられまして、アッセさんは噛みつかれました。まあ、魔力を纏っていますから、どうって事無いですけど。ロウタとエステリーナがなんかヲンヲン言っていましたから、それからは分かってくれたようで、コロコロしていますけど。ほんで、その子狼ですけどね、やっぱり全部が『魔』。ほぼ血統的に魔になるようですね。それで体毛の色ですけど、普通だね白と黒に深緑。


「『イチロウ、ジロウ、サブロウ』じゃ駄目?」

「あはははは、ミーちゃん適当すぎませんか。確かに【(ロウ)】ですけど。あっ!もしかして『スシィ』って【寿司】?」


 全力で疑惑視線を回避しておきました。


「あっ、目をそらした。既に適当すぎをやっていたのか」

〔こいつは相変わらずいい加減でござるな、オイ〕

〔『ロウ』って日本語ではありませんの、だめでしょう〕

〔えー、だめ?〕

「『シロウ』『クロウ』『ロクロウ』は」

「それだと、単語になりますね。意味は全然違いますけど」

「よし、これでいこう」

〔【白黒緑狼】ってか、ドイヒー〕

〔いい加減なのは、治りませんわね〕

〔いいじゃんよ。命名は難しいんだよ〕

「『シロウ』『クロウ』『ロクロウ』だね、はいできました」

「うむ、良い感じ。さて、遊び道具か。どうしよっかな」


 一角魔兎のコロコロ人形と円盤遊具は定番としてですね、立体迷路はどうだろうかと言う事で、ジャングルジムを所々壁で塞ぎまして、迷路を作り上に出られるようにしてみました。ひとますが30[㌢]位で、手足を伸ばせば次の段に届く感じで調子に乗って作ったら大体5[㍍]位になってしまいました。ほぼ2階建ての家位かな。


「残念、まだ降りてこられないか」

「あー、上で足が震えていますね」

「狼体形に成長しないと駄目かな~」


 手を伸ばして、おいでおいでをするとジャンプできました。一度できたら次からは上へ行ったら、誰かを呼ぶようになりましたが。こいつらぁ自分で飛べって、怒るぞ。


3. 3頭になりました


 あっという間に3匹から3頭になりまして、コロコロした体形からスラリとした狼体形になりました。早いよねぇ、自然界の動物ですから、当たり前ですけどね。ジャングルジムへも飛び乗り、飛び降り、飛び越す事すらできるようになりまして、遠足はどうするのかなと思っていたんですが、トリィと言う先達が森で群を作っているらしく、そこへ参加させるようです。なので今回の遠足は、トリィの群れからのお戻りみたいですね。あるいは、そのまま暮らしてしまうかも知れませんけど。


 さて、婆ちゃんの高山病症状も2500[㍍]を繰り返していたらようやく収まりまして、5頭を載せて4人でトリィの群れへやって来ました。トリィ達のいる場所がよく分かるもんだと思ったんですけど、エステリーナが時々遠吠えしていまして、どうもそれがお尋ねやら、お呼び出しの合図だったらしく、ブルボニアにほど近い森まで来たらお返事がありました。山岳地帯の麓で、結構深い所に住んでいますね、トリィさん。


「なんか『こんな子見なかったかしら』『おお、あっちで見たぞ』みたいな感じで話し合っているみたいだったよね」

「そうだよね、お返事が来ると、手で方向を指し示していたもんね、面白いね~」

「森に帰って大分経つさね、こっちで生まれた事を忘れていなければ良いさね」

「ああ、そうだね。さっきの返事の様子だと大丈夫そうだけどね」

「そんな感じでしたよね。僕はトリィは知らないので、大丈夫ですかね」

「皆でいれば大丈夫じゃないかな、一応離れないでおいてね」

「了解」


 ロウタの合図で空中停止。下を見ると、群狼さん。一族で一斉に遠吠えして来たんだけど、最初の洗礼かね、選別かね、幻惑咆哮全開でお出迎えしてくれました。


「なによ、これに負けたら来るなって事かな」

「わっわっわっ、歌を歌っているみたいだね、歓迎してくれているのかな」

「なるほど、そっちか。あ…婆ちゃんは、大丈夫」

「ふむ、なんとも無いさね。前は震えるほどの衝撃を受けたもんさね」

「歌のせいかな。魔力も上がっているしね、あと耳が遠『ふんっ!』いったぁ」

「あはははは、ミーちゃんは変わりませんね」

「そういうアッセさんは」

「なんとか大丈夫そうですよ」

「おっ、終わったようだ。よし、降下しまーす」


4. トリィの里


 トリィが森に帰っておよそ3年ですかね、それくらいですよね確か。それでね、突然船に乗ってきたんですよ、下まで100[㍍]ほどあるんですけど。影渡といっても魔法だぞ、50[㍍]以上は届かぬはずの船上にトリィがいます。あっれぇ。


「えっ、嘘っ」

「わっ、驚いた。『トリィ~』きゃははははは」


 トリィってばエッちゃんの倍以上の体躯があるんですけど、エッちゃん喜んでいます。見た目は食べられている所みたいですけどね。とりあえず、忘れられてはいないようで一安心。とは言えですね、トリィ達の生態なんぞ調べられようはずもなく、どこまで移動ができるかなんてのはわかりません。私等だときっちり50[㍍]なんで、ちと悔しかったりします。判ればゲート魔法の代わりになりそうなんですがねぇ。


 それでトリィを筆頭に総勢30頭ほどが群れを成しているのですが、なんか嫁が沢山いるっぽいんです。只今、ロウタにウリウリされています。そのロウタですが、エステリーナに叩かれている所でございます。


『なんだよ、女が多いじゃねえの』

『仕方がないだろ、来ちまったもんは。追い返すわけにも行かなかったんだよ』

『灰色毛のあの子、ちと紹介してくれや』

『何を言っているんだい、お前さん。べしっ!』

『ガッ!痛えだろ』

『自分で捕まえなさいな』

『良いのかよ』

『そんな甲斐性があればね、口説いてみれば』


「ミーちゃん、何を声当てしているんですか」

「いや、なんとなく」


5. トリィ風呂


 トリィの嫁がこちらに近づいてきましてね、さっきから何か訴えているんですよ。さて弱りましたね、エッちゃーんなんか分からんかね。


「う~ん、何だろう。エステリーナと自分を交互に示して、毛を爪で梳かしているんだけど」

「ン?お洒落したいのかね。櫛の通りが違うもんね」

「あぁ、そういう事なのかな。ちょっと毛並みを整えてみるね」

「体毛の艶出しとか、ダニ殺しとか、基本はお風呂かな」

「なるほど、でもここには温泉が無さそうですよ」


〔エル君、アッちゃん近くに湧水とかないかなぁ〕

〔ここから北に10分位かしら、お水が出ている場所がありますわよ。西に流れができていますわね〕

〔あるの、ありがとう〕


「湧き水があるらしいから、ちょっと見てくるね」

「分かりました」


 近辺の動物達から水飲み場として使われているらしい泉がありました。川となって流れていますので、結構な水量がありそうですね。


「ということで、穴掘りをします」

「また唐突に、お風呂でも作るんですか」

「はい、その通り。泉の流れを貰ってね、陽光温水器を作ってみようかなと」

「陽光でお水が温まるの?」

「うん、ほら眼鏡を作った時に木が燃えたでしょ」

「あ、そうか。温まる位ならできるんだ」

「多分だけどねぇ。材料はこの山に沢山あるしね、試しに作ってみるね」

「は~い、じゃ私はお婆ちゃんと皆の毛並みを揃えているね」


 この前ゼルガニアの人達が捨てていった大砲を使って、黒鉄鉄管を作ります。直管とU字管で蛇行管路を確保して湧水を流して、出湯口に手をかざすと『うわっ!アッチィー』。こんなに温度が上がるのかって位の熱さになってしまいましたが、家の魔獣風呂も結構な温度なので大丈夫でしょう。そうなんですよ、家の魔獣風呂ってば、私等入れません。最初は人肌温度だったんですけどね、もっと上げろとせがまれまして、上げていったら私等入れなくなりました。


「おいでえ、ちょっと入ってみてくれる」


 トリィの嫁を誘い入れてみました。ちょんちょんと突付くように湯温を計っていましたが、いきなりザバッ。


「ワフーッ」


 大丈夫そうですね。そうしたら次から次へと魔狼風呂。上がると皆で一斉にジョバババッと振り払い。『アッチィー』の熱湯シャワーの洗礼が来ました。『ロクロウ』が風の魔法で乾かして上げると、フワンフワンの毛並みに。皆さんご機嫌そう。


 そんなこんなで一週間ほど遊んでいたら、馴染んじゃったようでね、帰ろうとしたら船に戻ったのは、ロウタとエステリーナだけ。3頭はここで暮らすみたいです。


「「「元気でねえ」」」


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