(10-08)ゼルガニア帝国(交渉)
(10-08)ゼルガニア帝国(交渉)
ブルボニアへの侵略途中で、ここを的あてゲームのつもりであるかのように攻撃してきて、まともに攻撃すらできず6人が消滅。残りは敗走。指揮官は人質となってしまった悲惨な侵略部隊ですが、無慈悲な攻撃には変わりないので、賠償をして頂きに行こうかと思います。辺境村村娘です。はた迷惑な。
1. どちら様ですか
頂上に残る残骸(人含む)を片付けていると、命令書みたいなものを見つけましたので、同時に上にいた人達の綺羅びやかな装い(穴と焦げだらけ)も頂戴しまして戻ってきました。お墓は丘の隅へと適当に作成。
では、寝ている大将らしき人を起こしましょう。
「ッ!どこだここは」
「貴方が破壊しようとしていた村ですけど」
「何!我が兵はどうした、攻撃はどうなった」
「あんなもんいくら撃っても無駄ですしね、そもそも兵隊さん達は輜重部隊共々海へ逃げました。さて、貴方にはいろいろお尋ねしますので宜しく」
「ふん、ゼルガニア帝国第2王女たる私が下賤の者に答えるわけがなかろう」
「あ、それだけお話してくだされば良いのですけど、まあついでなのですっかりとお話して下さいな。エイッ!」
隷呪環を『尋問』モードで発動。別の腕には消魔用を嵌めてあります。いやこれ本当に便利だわ。それによれば、ここへ来たのはは進軍を確実にするために、後背を消しておくためなんだって、はた迷惑な話だねぇ。
「お名前を言ってくれなイカ」
「ゼルガニア帝国第2王女、シェヘラだ」
「この先渡河する必要があるんじゃなイカ」
「そんなものは、橋の土台へ渡河用に加工した板を渡すだけで渡河できる。その材料は輜重部隊の荷車に見せかけてある」
「あれだけの人数で?少なくなイカ」
「ふん、工作部隊は既に王国に入り込んでおるわ」
「時の合わせはどうするの、できないんじゃなイカ」
「新月の夜が明けたら、本国側の部隊と海に集結した部隊が、一斉に進撃を始めるのだ、王国がそちらに兵を回したのを確認したら、一気に王都を攻め落とす」
「たかが実口径100[㍉]程度の前装式火薬砲16門で足りなくなイカ」
「たかがとは聞き捨てならん、王都の北門程度なら一撃だ」
「ああ、門を壊すことさえできれば良いのですね。なるほど、それならできるかも知れなイカ、門まで行くことができないんじゃなイカ」
「当然だ、そのための現地組立式なのだ。新式砲なら気づかれる事はない」
そうか?そうかなあ。今の時代ならそんなもんかな、分からん。まあ、良いか。後はゼルガニア帝国そのものの現状を聞き出して、終わり。さて、どうすっかね。
「どうするの」
「この命令書にね、ここを破壊殲滅せよとあるんだよね」
「御本人が言っていましたものね」
「うん、賠償請求するには十分かね」
「また、お城?お城の蒐集娘って言われちゃうよ」
「あははははは、それは良いですね。お城収集家」
「そんな名前は嫌ですぅ。でもそれくらいしかないよねえ」
「お金貰っても、換金しないと使えないですよね」
「金塊とかなら良いんじゃない。珍しい物とか」
「そうだね。後は、ご飯のために領地を広げるって言っていたよね」
「そうですね、今どきの侵略理由ってそれ位ですよね。後は人とか資源とか」
「やっぱり、農作指南書かな。あれ置いて侵略するなって言って来るか」
「そうだね、戦争なんて良くないよ」
「じゃ、そういう事で、皆はどうする。婆ちゃんは?ゼルガニアへ行く?」
「ゼルガニアは行ったことがないさね、ついでだから観光でもするさね」
「うん、空から行くでしょ、美味しいものあるかな。名物とか」
「ほんじゃ、とっとと行って来ましょうかね」
2. 賠償して下さい
挟撃ということはですね、王国側の海岸線にも後続がいるはずですよね、なので途中海へ寄りました所、海岸線から見えない程度に離れてはいますけど、いるよねえ上陸舟艇みたいなのが沢山。お金かかるだろうにねえ、ご苦労さんなこって。ちょっと上から鉄球を落としてみました。停泊していますから、真っ直ぐ落とせば、ほらっ!バッカーンと穴が開いて、あっという間に沈没。上から落ちてきた事に気が付かないかな、思いもよらぬって事ですかね、適当に落としていたら四半分程沈んでしまいました。とりあえず挟撃作戦はできなくなったと思います。
さてゼルガニアですけど、地図(軍事用とは言え粗い)の通りであれば、帝都は国の中ほどで山側寄りのはずです。それを頼りに北東に向けて進行中。
「あれじゃないですかね、一際綺羅びやかな、お城お城とした建物がありますよ」
「シェヘラさーん、あれ帝都でいいの」
「そうだ、それより私をここから下ろせ、はしたない事極まりないではないか」
どうなっているかというとですね、錨の先に大股開いて縛り付けて薄い本状態。相手が怒り心頭になってくれるかなとか思いまして。
「人を殺しに来て、普通に連れられるとでも思いましたか、生きているだけ有り難く思って下さいねぇ」
「なん、だとう」
帝都上空へ到着しまして、錨を少しずつ下ろします。往来の人からもよく見えるように。ほぼおちょくっていますよね、我ながら酷いな。
「済みませーん、錨の人がですね、村に攻め込んで来て殺されそうになったものですから、賠償して頂きたいなーって思いまして、どなたか話の通じる人はいますかー」
「あれは姫様か、なんとおいたわしや」
「見るな!見ないでくれ!早く交渉してくれ、お願いだ」
「そこの凶賊、姫を開放しろ。さもなくば討ち果たしてくれん」
「その前に早く賠償をお願いしますねー」
「何をしている、早く交渉して開放してくれ」
交渉したからと言って開放するとは言ってはいませんけどね。
「姫様には当てるな!凶賊を叩き落とせ」
「ギャッ!」
「当てるなと言っているだろうが」
太ももに刺さったっすね。動脈だと危ないですね。いえね、錨の下ろし口、すなわち姫様の上方甲板に私がいるんで、外れると下にいる人に当たっちゃうんですよね。
「早く賠償交渉してくれ」
「凶賊である、落とせ、殺せ」
「ありゃぁ、姫様の事はどうでも良くなっちゃったみたいですね」
「なんと、国のために命を賭して尽くしてきたと言うのに、私なぞどうでも良いということか。お願いだ!早く賠償交渉してくれ」
「射て、射てぇ。凶賊を殺せ」
「そうみたいですね、どうでも良いみたいですよ。おっ正面新型砲が出てきた。2時方向へ回頭」
「我が娘は、ブルボニア侵攻中である。ここにいるはずもなし。偽物を用意し、我が国に賠償を請求しようとは、不届きなり。成敗してくれようぞ。射てぇ」
50[㍍]程先のテラスからドーン。船腹に当たりましたけど、傷一つ付いていないな、なんとか耐えられそう。当たった砲弾は、そのまま跳弾して中央広場らしき所にある高さ10[㍍]位の大理石かな、それでできた彫像へ。たったの一撃で半壊してしまいました、上半身木端ミジンコ。ほうほう、それなりに威力はあるんだ。
「父上…ヒィーッ」
あ、姫様泡吹いて気絶した。あーッ、お股の三角布地がビッショビショ。
「だからその侵攻中の人を連れてきたんですよ、賠償して下さーい」
「待て、撃ち方止めっ!何、それでは本物なのか。証拠を見せよ」
「はい、どうぞ。この方が着ていた軍装です。それとお供の方のお召し物です」
ひらひらとあの白い軍装を振ってみました。縁には他の方の軍服を吊るしてみました。紋章の複製使用は普通に死罪ですから、本人確認にはなるでしょう。
「焦げと穴だらけではないか、ならばそれらの者は如何に」
「お亡くなりになりましたけど、ちゃんと埋葬しましたよ」
「負けたということか、最新式の大砲を用意したのに負けたのか」
「そうなりますね、あの程度じゃ戦費も時間も無駄になるだけですよ」
「分かった、交渉に応じようではないか、娘を下ろしてくれ」
「嫌です。賠償交渉が終了して、賠償品が用意されたらお連れします」
「くっ、言いなりしかないか」
「とりあえずは、怪我を治しますので、回収しますね」
「分かった、待つ事にしよう。宰相と財相を呼んでくれ」
結果、姫様の交換料は魔導金貨3万枚相当の金塊(延棒)と銀貨1万枚、副官さん達の遺品はお一人様同5千枚と銀貨5千枚が×6。損害賠償金が4万枚と銀貨1万枚で、計10万枚相当の金塊(延棒)と銀貨5万枚、引き換えにお姫様と軍服一式と農作指南書。
大砲に使われていた火薬は黒色火薬でした。この国には硝石があるそうです。雨が少ないとかですかね、地続きなのに?この世界は未だに分かりません。んー、まさかね、輸出しているとかないよね、近隣へはなかろうけど、海の向こうとかさ、無いよね。ついでなので、お土産に少し頂きました。
「いいですか、この農作指南書は、実験畑を用意して2年間は様子を見ること。畑地毎に状況は違いますから、ブルボニアのようにいきなり全面採用するなどという馬鹿な真似はしないように。最初の年は、畜獣を放ちその獣糞で畑地を休ませ、大地を富ませること。次の年の実りで良い結果が得られたなら、少なくとも食料が理由で他国を侵略する必要はなくなるはずです。後、私達に手出し無用の証明書を発行して下さい。この国の観光中に襲われたら、この国を殲滅することになりますよ」
「観戦報告が上がってきた、海上戦力も半壊したそうだ。そちらの戦力を侮るような事はせん。約束しよう」
「知らせが早いですね、すごいです。ありがとうございます。ではご機嫌よう」
去り際にどこぞの馬鹿が『証明書は未だ発行されず』とか言って、大量に矢を射てきたので、お城をちょっと崩しておきました。だってこれ以上お城いらないもん。
「えっ、今のがちょっとですか」
「ちょっとじゃん。全部じゃないもん」
3. 空の乗り物
この世界での文明の進化具合を地球のそれと比べても詮無いことなんですけど、どうも進化度合いがバラバラで、よく分かりません。例えばですね、大砲なんかは地球暦ですと14世紀頃に前装式ができて、19世紀辺りで後装式になったと思います。小銃なんかも似たような歴史だったはずです。こっちでは、前装式滑腔砲がゼルガニアで新型として作られていますでしょ、地球のガレオン船に似ている帆船は、モラッコ共和国で作られていますよね、あれは16世紀頃だったと思います。私がね、交渉にあたってゼルガニアに乗り込んだ時は、宙に浮いている船だったんですよ。普通は空を飛んでいれば驚きませんかね、船ですよ船。
「すみませーん、なんか帝都に空飛ぶ船が現れたって噂で聞いたんですけど、ご存知ありませんか」
「おぉ、知ってるぞ。聞きたいか?4串でどうだ」
「肉焼きかな、何の肉ですか」
「この辺りだと、ポッポル鳥と呼ばれている小型の鳥だな」
「『ポッポル』ですか、聞いたことがないですけど、それ下さい」
「なんとなく、土鳩っぽい気がしませんか」
「気にしなーい。食べられれば全て肉」
「はいよ、お待ち。で、空飛ぶ船だったか。この国の姫さんが吊るされていてな。そりゃもうあられもない格好でな、おっとこれを言うと捕まっちまうか」
「ほうほう、船が空を飛ぶんですよね、見たかったなー」
「そうか、この国には空を飛ぶでかい風船があるからな、空を飛ぶって言っても珍しくもないんだが、お前さんどこから来たんだい」
『空を飛ぶでかい風船』ですか、気球かな、熱気球かな。なるほど、仕組みが分からなければ、全部空飛ぶ乗り物でしょうから、驚かれる事は無いのか。
「空を飛ぶでかい風船ですか、そんなのもあるんですね、知らなかったなー、田舎には話しが廻って来ていなかったですね」
「そうかい、まあなありゃ最近だったからな、まだ伝わっていなかったか」
「なるほど、そういう理由でしたか、見たかったなー」
「おう、風船も船も見ごたえはあったぞ、残念だったな」
「ねー、あっ、この串美味しいですね。ごちそうさま」
「おう、また来てくれや」
そういう事だったのね。気球にしろ熱気球にしろ地球だと18世紀辺りだったよな気がするんですよねえ、ほらね地球暦だとばらばらでしょ。それが同時に存在しているんですよ、どういう進化経路を辿っているんですかねえ。例えば熱気球ならバーナーを待たなくても、火球でできますもんね。魔法が絡むとおかしな進化になるんですかね。
4. やっぱり海からでしょ
船ですからね、海は定番でしょ。というか、一度帝都を離れて船を仕舞いませんとね、観光すらできやしない。船から離れれば、ただの婆さんと、子供御一行ですから、近づいてくるのは、まあゴロツキの類だけでしょう。ということで、南に移動。海の近くで船を格納。よし、観光だ。
「おぉ、港がある。漁港だよ漁港」
「お魚が買えるね~」
「そう言えば、僕新鮮な魚って食べた事ないや」
「あぁ、そうね。アッセさん来た頃にはなくなっていたもんね」
「え、彼処で手に入ったんですか。新鮮な干物とかじゃなくて」
「その前にいた海の廃村で獲ってきたんだよ、汽水魚だけどね」
「よしっ、生魚を食べましょう」
「あ、それ止めたほうが良いよー」
「なぜですか、生魚いいじゃないですか」
「寄生虫が魔力を持っていても?」
「え…魔力。あるんですか」
「いるんだよねぇ、それが」
「ああ、あの魚のお腹にいた小さい虫の事」
「そうそう、危うく食べる所だったよね。魔力の揺らぎが怪しかったから分かったけどさ、あれ食べていたらどうなっていたかね」
「ミー、そんな生き物がいるさね」
「いるよー、とんでもないよ。その後どうなるかは知らんけど」
初の漁港散歩でございます。ただ、残念ながら本日分は終わりまして、また明日の状態でしたけど。
「お、嬢ちゃん達は『腹破り』を知っているのかい」
「『腹破り』なんですかそれ、そんなのがいるんですか」
「おおよ兄ちゃん、あれはな知らねえで口にすると、腹の中でデカくなって、食い破って出てきやがるのよ、こええぞぉ」
「はーーーーーっ、なんですかそれ。化け物じゃないですか」
「あ、そういう事になるんだ。危なかった」
「うわ~、良かった気がついて」
「なに、しっかり焼いたりな、火を通せば大丈夫だけどな」
「それで生魚は食べられないって事ですか」
「そうだ。態々腹でデカくならなくてもいいのにな、なるんだよ」
そうです、寄生虫すら魔力を待っている奴がいるんです。魔力万歳の世界だとこういうこともあるんです。
「魔力が強い万能草で締めると死んでくれるけどね、あとは万能草の茹で汁で霜降りかな」
「『万能草締め』って薬の効果もありそうですね」
「あれは美味かったさね。魚を焼かずに食べられるなんて思わなかったさね」
「よし、明日は朝からお魚めぐりだー」




