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(10-03)深森の廃村(魔鹿狩)

(10-03)深森の廃村(魔鹿狩)


 お姉さん達の高所訓練も漸く2500[㍍]に到達。かくいう私も3000[㍍]を越えたことなぞ記憶にないわけで、初心者と同じ。一応目標点でラジオ体操ができるようになりました。とは言え、狩りとなると別の問題も出てくるでしょうけどね。毎度!辺境村村娘です。なんとか生きています。


1. 路上教習


 実際に路上教習なんてできませんので、今まで動かぬ人形だった(それでも撥ねた)のを実際に人が歩き回るようにしてみました。


「どうやら人とは思っていない節がある。玩具だからどうでも良いわみたいな」

「ああ、どうせ藁人形だからぶつけても大丈夫って事ですかね」

「そういう事だね、なら魔力盾全開で体当たりしてくれよう」

「当たり屋ですか(笑)。確かにあの程度なら二輪が負けますね」

「でしょ、それで駄目なら罰則を設けるかなぁー、修理の拒否とか」

「刑罰ですか、人間て言うのはそうしないと解らないんですかね、皆同じって事ですよね、代償を払うまで気が付かないとか、困った生き物ですね」

「ねー。護衛の教習だって言っているのにあれだもんなあ」


 ということで、路上教習訓練は、丁字路やら交差点やらを3人で歩き回ることにしてみました。しっかり減速、停止、確認をしないとバイクが負けます。


「なんで君がいるんだ、人形じゃなかったのか」

「人形だと思っているから撥ねていたんでしょ、だから第2段階の路上検定は実体にする事にしてみました」

「ここまでしなくても良いではないか、もっと簡単にしてくれないか」


 全く腹立たしいですね、いい加減嫌になって来ますね。泣きたいのはこっちだよ。いつまで巫山戯ているんだよ。


「いつまで燥げば気が済みますか。2輪車なんて存在は知られてはいないんですよ。不思議がって面白がって、逃げるどころかこっちに向かってくるんですよ。人身事故が向こうからやってくるんです。何人弾いて死なす気ですかね、人を死なせたら一族郎党連座であの世行きなんですよ。もっと簡単にだぁ?巫山戯るのも大概にしとけや、このドアホウ」

「まずい、相当怒っているな、あれ。奴は安全運転脱落っと」

「そうだな、これは慎重に行かないと」


 そんなに2輪に乗りたいかねぇ。乗りたいなら安全運転して欲しいですよね。


『2日以内に第二段階の路上教習を通過しなければ落第』

『安全運転評価90点未満は落第』


 面倒なので期限と足切りを設けました。さて何人残るでしょうか。


2. 路上検定


 泣きが入りつつもなんとか王子様、近衛が団長以下3名。こちらで残ったのは、ハンジョさんとセバスさんの2名。最もセバスさんは、護衛ではなく来たるべき領有車のためだそうですけど。ジョルさんと辺境伯様ですか?とうの昔に脱落していますよ、泣き(すが)られていますけど、無視です。そもそも自分の所有物でもないのにどうしてあんなに手荒に取り扱えるんでしょうか、どういう神経しているんでしょうね、信じられません。


 ボロボロに成り果てた2輪車を(ミッ)ちゃんの回復で治して魔導組に納品。アタシャ、自動車部じゃないんだよ!レオポンさんじゃねーっての全く、丁寧に扱えってばよ。あれかね、軍馬とかも乗りつぶしているのかな、だったら可哀想ですよね。


〔あら、普通の回復ではだめですわね。なぜかしら〕

〔あっ、魔鉄って魔力で直るのかな〕

〔あぁ、なるほど。既に魔力を濃く纏ってしまっていると駄目なのかしらね。まさかそんな事はないと思いますけど。今度はもう少し強く!それっ〕

〔うっひぃー、結構持っていかれたー。魔鉄って壊れるとやっかいだねぇ〕


 一瞬ですんげぇ減りましたけど、なんとかなりました。


〔そうですわね、新事実ですわ。また呼んで下さいな〕


 (ミッ)ちゃんは新体験に喜んでいますけど、私はあまり嬉しくないです。


〔いや、あまり呼ばないでも良いように…なってくれないかなぁって、はははー〕


 力なく答えておきました。ということで、近衛の中から最上位2名を選定。近衛団長さんは、本来の任務のため漏れた人達と一緒に帰国。お持ち帰りは、お兄さん達用の予備燃料。ソバーニさんもだいぶ渋っていましたけど『そろそろリア姉さんを迎える準備をせにゃいかんでしょ』ということで、一緒に帰しました。あまりに情けない顔をするので、しかたがなく通話機を渡しておきましたけど。残ったのは部隊長さんが2名、では護衛よろしくお願いします。お兄さんとお二人は、騎馬とはだいぶ様子が違うらしく領都コースで護衛訓練を続けるのだそうです。


3. お兄さんと護衛


「王子、街中は良いのですが、街区を外れた街道はいかが致しますか」

「そうか、ミー君も街道はほぼ誰もいないから気にしてはいなかったのかも知れないな。なるほど、街道の走り方も覚えねばいかんわけだな」

「そうですね、晴れている日だけとは限りませんしね、街道に出れば日が落ちる事もありますでしょう。いかが致しましょう」

「ふむ、一度戻って相談するとしようか、途中は魔獣もいる草原だしな。訓練にもなるであろう」

「は?ここに仮住まいではないのでありますか」

「ああ、実はな特秘にして貰いたいのだが、この先にある管理放棄地にいるのだ」

「か…管理放棄地でありますか」

「はっはっは。心配せずとも大丈夫だぞ、魔導国なんぞよりよっぽど進化しているからな、驚くと思うぞ。リアとアッザーミ領の令嬢もいる」

「リア様もですか?深森ですよね。大丈夫なんでしょうか」

「ああ、リアなんぞ既に4年近くになる。ずいぶんと馴染んでしまったな」


 そう言えば、そうですね。ここに来てしまったのは、魔導国に初めて行った時ですから、気がつけば4年?危なかった、ソバーニさんがいなければ、嫁ぎ遅…ゲフン…ずいぶんと時間が経ったものです。まあ私も10歳ですもん、時が経つのは早いです。


 辺境伯様と相談のうえ、ハンジョさん宅を借りる事にしてお兄さん達はこちらに戻ってくる事になりました。辺境伯様は2輪車がなくなるので、引き止めたらしいですが、どうにもなりませんわね。実はですね、辺境伯様からは毎晩のように催促電話という泣きが入っていまして、とは言え資材がないですからどうにもなりません。なんか、あの方はあちこちから資材集めをしているらしいですよ、ハンジョさんが言っていました。そんなに欲しいかねぇ、4輪車になったらどうなるんですかね、見ものですね。とは言え、4輪があるから2輪は待てとも言えません。そんな事を言ったら『まだか』になるのが目に見える。こまった人達だ。


4. 魔鹿さん待っててね


 なんとか、高所訓練を終えまして、よし出発となった所でお兄さん達が帰ってきました。途中結構な数の一角魔兎に追われたそうで、ご苦労さま。街の往復は何度もしていますけど、狩り以外じゃアタシゃ一度も見ていないんだけどね。


「ミー君、街道を走行するのは同じで良いのかな」

「そうですね。凸凹道とはいえ大体同じでしょう。車輪を轍に入れないとか、石を避けるとかその程度ではないですか。雨天だの泥濘とか夜間走行は、街区内よりも一層慎重に行かないとなりませんけど。そうだ、模擬街道を作りましょうか」

「できますか?より安全に訓練できれば我々も助かりますが」

「わかりました、じゃ早速」


 カバ草原の街区コースをリニューアルして、魔導国までの街道を思い浮かべながら泥濘とか凸凹道とか、轍が酷い道とか作り上げて見ました。さらにその内側へ、砂岩状に固めて舗装した髪留めコーナーとか、匙型コーナーだの、くねくねしたS字の道なんかを作って見ました。耐久試験コースになる予定。


「こんな感じでどうですかね」

「おぉ、これはすごいですね、まさに街道ですよ」

「うむ、ミー君済まないな。これなら訓練も捗ろう」


 始めは良かったんですけどね。


「王子、こっちの内周はなんですかね。非常に走りやすそうですが。街道が全部こうなれば良いですよね」

「そうだな、これは国管理の道を造成する時に参考になるやもしれん」

「なるほど、ちょっと走ってみませんか」

「よし、そうしよう」


 そうですよ。走り易い=だんだん速度が上がる=事故るんですよ。一応それなりに藁束を積み重ねて置きましたが、やっぱりなー。


「ぬぉわー」

「おい、大丈夫か」

「はっ、藁のお陰でなんとか無事であります。ちょっと速度を上げすぎました」

「なるほど、道が良くなるとこういう事も起こるのだな」

「そうですね、走り易いと腕が上がったように感じてしまうようです」

「そうか、そういう事か。いや、それにしてもこの道は面白いな」


 あ、部隊長さんいたずらっぽい事を考えていそうな顔をしている。


「王子、ちょっと走り比べをしてみませんか」

「走り比べとは」

「開始点を決めて、一周勝負するんですよ、どうですか」

「ふむ、面白そうだな」


 あ、やぁばい雰囲気。その頃私等はすでに空です。連山に向けて採集行脚中でございます。留守番はアッセさん、よろしくね。


5. 赤毛魔鹿さんこんにちは


 ただいま船上から光用水板(【光学ガラス】)に進化した双眼鏡改で捜索中。プリズムを増設して、正像が得られるようになりました。


「あ、あれかな。ミーちゃん、あれっぽいよ。赤い鹿がいる」


 エッちゃんが指差すのは、はるか頂上方面の一角。


「うわ、まだ上なのか。すごい所に住んでいるねぇ」

「そうですわね、今4000[㍍]でしょ。彼処ですとどのくらいかしら」

「えーと、たぶん5000位かな。さてゆっくりお近づきになりましょう」

「お願いね」

 

 そぉっと近づきますと、ありゃ?どっちだよ。足先が白毛で本体が赤毛のと、赤みがかった地に小さい白斑点のがいるんですけど。見えていたのは赤毛の方かな。遠目には判別がつかなかったんですけどね、角模様はどちらにも赤い筋が入っているように見えます。


「お姉さん、どっちだろう」

「角の様子は同じように見えますわね、できれば両方捕まえたいですけどね」

「それしか無いか。分かりませんもんね」

「そうね、それでどうしましょ。水刃で切りましょうか」

「いやいや、眠らせておいて、先端を切り取れば良いんじゃないですかね」

「あっ、そうね。それがいいわね」


 ということで、上から麻痺薬を噴霧。コテンと寝入った所へ船を寄せます。いつものよりかなり効き目は弱いです。あまり長いと他の獣に食べられちゃうもので。


「エッちゃん、お姉さん達を宜しくね」

「は~い」


 私はお留守番。


「お姉さん、どのくらい必要なの」

「さぁ、今後もあるし、できるだけ多いほうが良くはないかしら」

「それなら片方だけ頂いて、また今度様子を見に来るとかどうかな。全部じゃまずそうだよね、死んじゃったら可愛そうだし」

「そうね、そうしましょう」

「ルリさん、大きな古い角が落ちていますけど、これはどうします?」

「うーん、何が有効になるのか分かりませんから、それも頂きましょう」

「分かりました」


 なにしろ狩った人が昔の人なので、記録もなにもないんですよね、死なないように頂戴するしかないわけで、いろいろ条件を変えながら採集していたようです。


「お待たせしましたわ」

「はーい。それでどうしましょうか、しばらくここに留まって他に該当する鹿がいないか確かめた方が良くないですか」

「ああ、そうですわね。お泊りはできますの」

「それは大丈夫。ちゃんとお風呂も、お部屋もありますよ。丁度良くこの先に船を下ろせそうな所を見つけましたし」

「では皆さん、どうですか。お付き合い頂けますか」

「「「大丈夫です。山岳地でお泊りって面白そうですよ」」」

「じゃ、ミーちゃん宜しくね」

「はーい」


 寝ていた鹿が起き上がったので場所を移動。


6. こんばんは黒毛の魔鹿さん


 さて明日は待機かなと思っていた所へ、なんと今度は夜行性の鹿が来ました。


「お姉さん、鹿だ。黒毛で見えにくいけど魔鹿だね」

「あら、どうしましょ。材料表にはありませんね」


 それがですね、非常に好戦的でしてね、巨大な角をたててこちらに向かって来るんですよ。えーとですね、トナカイ。違うな、なんだっけな、でかい角の鹿、あぁヘラジカだ、ヘラジカによく似ています。トゲが生えたサボテンみたいな、指を折り曲げ手のひらを上に向けたような角を持っている鹿ね。地球産のでさえ巨大なのに、こっちのは輪をかけて巨大な訳ですよ。象ほどじゃないかな、少し小さ目ではありますが、まぁかなりの大きさではあります。縄張りに入っちゃったかな、船を敵とみなしたようですね、魔鉄ってのは魔力を纏っていますでしょ、そのせいかな。さて困りましたね。なんて言っているうちに体当たりしてきました。


 ゴゴーン


「うわー、すんごい。船がずれたよ。船体大丈夫かな、皆は大丈夫ですかー」

「「「はーい、大丈夫でぇーす」」」

「ミーちゃん、どうしましょう。帰ってくれるかしら」

「うーん、さっきから魔力を当てているんですけどね、だめそうだね」

「どうする?帰らないよね。倒す?」

「ごめんよで、倒すしかないかなぁ。魔石は充填中にしたから今浮けないんだわ」


 その間も頑張る鹿さんが、ゴゴーンと。


「そうだよね、仕方がないか。ごめんねぇ、エイっ!」

「エッちゃん、早っ」

「ミーちゃんに言われたくな~い」

「ほっほっほ。さて、始末しますかね」


 一部を採血後血抜き、解体して…角でかっ!エッちゃんと二人で片方やっと位かな。血抜きをした頭部は、洗浄したらそのまま鞄行き。肉を切り分け、骨を取りで、解体魔法無いですかしらね。毎度大型の獲物になると大変ですよ、蛇ほどではありませんけどね。漸く解体が終わった頃には深夜でございました。その他の後片付けは明日です。おやすみなさい。え、『そんなの鞄に入れて明日にすれば』ですか、駄目なんですよ。大抵は体内に生き物が居ましてね、そうです寄生虫とか病原菌も生き物でしょ、解体して浄化してからじゃないと入りません。他の拡張鞄ですとね、そもそも大物は解体後じゃないと入りません。誰だよ、こんな面倒くさい入れ物作っちまった奴は、ウィッス。


「ミーちゃん、エッちゃん、おはよう」

「「んー、おあよござます」」


 深夜に至る作業で目が覚めません。頭がボヘェーっとなっております。


「ふふふ、昨夜はご苦労様でしたね」


 だんだん覚めてきました。


「あーそうですね、あんなのが居るとは思っていなかったし。あぁ、そうだ。船体と狩跡は大丈夫かな」

「大丈夫そうですわよ。船腹も変わりありませんでしたし」

「そうですか、それは良かった。さてご飯を食べたら観察ですかね」

「そうね、今日は皆でゆっくり致しましょう」

「「はーい」」


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