(10-01)深森の廃村(新動力)
(10-01)深森の廃村(新動力)
2桁だー、まぁた歳とっちまっただー、満だと8歳だけどな。今年は去年程寒くはないですね、昨年は大寒波でしたもん。なんか暖かくなったら素材行脚が始まりそうです。辺境村村娘です新年明けましておめでとう御座います。
1. 新薬の材料
お姉さんが効果・効能を向上中であるお兄さん創薬の『拍動矯正薬』なんですが、もう少しで上級に手が届きそうな所で、素材が無くなりました。ほんで『拍動矯正薬』ってなんじゃろねと思ったんですけど、『頻脈・不整脈』とかの『気付け薬』だね多分。なぜか婆ちゃんの薬典にも無いらしい。昔は時代劇みたいに「持病の癪」がとか言って携帯薬箱に入れて持ち歩いていたやつじゃなかろうか。癪ってのは、差し込む感じの痛みを伴う症状の総称。携帯薬箱って言うのは、『この紋所が目に入らぬか』のあの印籠。それは置いといて、材料に鹿の角?何に使うのかと思ったら、ほれ鹿の角って取れて生えてくるじゃん。どうやら肉体再生の秘薬と考えられているっぽい。鹿茸とか言って生薬にも使われているそうですよ。そんで、持ち主の山鹿ってこの辺の平地には居ないんだわ。山それも高山。しかも必要なのは魔鹿類に属する鹿の角。さらに取れた古い方じゃなくて、少し伸びた新角の方。誰だ!そんなもん取ってきたやつは、本気か!。お姉さん自分で行く気なんですけど、大丈夫でしょうか。まあ、春になってからですから、少し先ですけど。
「じゃ、ミーちゃん宜しくね」
「あ、はい」
いっかーん、取りに行く気満々の気迫に押されてしまったァー。
2. 定期便
モラッコ共和国と魔導国との間に定期便が開設されたそうです。リア姉さんに『えっ?海が荒れているんじゃないの』って聞いたら、船を出せないほど荒れるのは秋から冬に掛けてなんだそうで、今頃になると反って落ち着いた海になって、海魔も割と静かなんだって。冬眠でもしているんですかね。それから暫くすると海魔の初物が出回るようになって、夏になると海魔少々と凪の詰め合わせになるそうです。ファンタジー季節は分からんですね。
「定期便?」
「そうです、最も船主はモラッコ側ですから、あちらから船が来るだけですけどね。我が国も船を持とうかと言う話しはあるのですが、乗り手の育成から始めないといけませんので、なかなか進んではいませんけど」
「ああ、そうですね。人をあちらに送り込むか、教師役に来てもらうしかないですもんね。船は買うしかないか。造船をするとなると造船所どころか、技士・設計士からですもんね。空飛ばします?」
「えーと、それは早すぎる気がしますよ」
「そうですか?ちょっと海魔を3匹位釣り上げれば大丈夫ですけど」
「ミー、そりゃお前だけだ。普通はできねえぞ」
「大丈夫、ロウタがいる」
「ヲゥ?」
「あんたどこから頭出しているの?て言うかそんな所に居たのか。だめ狼になっちゃうよ」
「ワホォアーッ」
「あ…もうなっとるわ。よく入られているな、猫かよ」
3. お手紙が来ました
定期便の話しが出たばかりだというのに、カッフェさんから私宛にお手紙が届きました。郵便屋さんもいないのにね、同じのが2通も。街に行った時に冒険者組合で渡されたんですよ。返事も組合に持って行けば配達してくれるそうです。穴金で。高っ!。仕方がないですけどね、組合から組合へ領毎に冒険者(萬屋)さんが渡し合っているんですよ、高額になるわな。ちなみに隣国までは、4銀だそう。国内は1銀だから、海を渡るとえっれぇ高いの。さらにコツが要りましてね、時期をずらして数回送ります。そうです事故は必ず起きるのが前提なんです。差し出し側の自己責任という愉快なシステム。カッフェさんには取説やら燈火やら渡しましたので、最低限解析はするだろうし、複製くらいするだろうとは思っていましたが、思いの外早かったです。流石、造船技術を保有しているだけの事はあります。その内容は『ろくに動かねえんで、教えろ下さい』でした。
(1)蓄魔量の不足
答:海魔の魔石を取ってきてね。
鬼か!
液化魔素の情報を伝えても作れませんしねえ。海水から魔力を作り出すためには、いつもの魔力制御と海水から魔素を吸い上げる想像力が必要ですので、訓練ガンバレと言うことで、毎度お馴染み魔法習得指南書付きでお返事しました。
(2)損失が大きすぎる
魔導国迄ですらコロ軸受が伝わっていないらしいです。とっとと広げろよぉ、無理か。さてどうしましょうなんですが、コロ軸受の構造書を差し上げました。ついでに球にすると効率が向上するので作ってね、作れたら頂戴と伝えておきました。後パッキンとか、シーリングとか封止材。だって使っていないんだもん。帆船はどうしているのかね?鉄対応のが無いだけかな。それと6[㍉]用のタップとダイスの作り方。ちゃんと止めないと漏れちゃうよ。
(3)全体的に低効率
まずは、魔力制御上達により高効率の魔法を書き込めるようにしましょう。魔導線についてですけど、ガラス管に魔石粉を詰めると言うのは面白いと思いましたので実験しました所、赤水晶1:白2の割合で微粉末にすると、魔銀線より伝導量が多い事が判明。あら不思議。まあ脆いので使い所は限られるでしょうけどね、作ってみてねとお伝えしました。ゴム管にすれば自由度も安全性も向上するんでしょうが、うん、頑張れ。火点火力の向上なんですけど、誰も酸素の存在を知りません。可燃物+着火温度+燃焼補助の存在=火というのを考察して下さいとしか伝えられませんが、なんとかしてもらいましょう。後は、復水器ですかね。船倉にあるので誰も見たことがないはずです。写真付きでこういうのが必要ですよとお伝えしました。水を循環させないと海上では勿体ないですもん。
お手紙3通。物は送れるのかと、試しに魔力変換魔石、親分狼の爪を2通に同封してみました。もう一通は樽付きで全部で3通。さて、届くのでしょうか。
4. 魔動蒸気機関Ⅱ型
昨年末にアッセさんが言っていた自力走行車ですけど、実現するには機構的にまだいろいろと無理があります。今使っている船の蒸気機関は、自動車に搭載するには大きすぎるのと、地上車用に小型にすると力が足りません。液化魔素を使ってどうにかできれば良いのですけど、魔力を爆発力に変換する方法が未だ見つかりません。爆裂魔法なんてのがあれば良かったのですけどね。
「爆裂魔法が大好きな紅魔族の方はいらっしゃいませんかぁー」
アルコールとか植物油でディーゼル機関を試してはみたんですよ、金床方式で。爆発力は申し分なかったですけど、前にも言った通り液体燃料は生産量に限りがあります。いくら土地がだだあまりとは言っても、とてもではないですが足りません。それにも増して『そんなもんで燃やすなら食わせろ!飲ませろ!安くしろ』のご意見の方が多いのです。爆発の様子をリトちゃんが見ていればなんとか…なりませんでした。アッちゃんも水は作れても油は作れないそうで、残念です。炭素(土)と水素(風)から炭化水素燃料を合成して…私が作れません。そもそもどうやら炭素を含む物(有機物等)は作れないらしいです。未来の科学者に託すことにしましょう。
「蒸気機関しかないかー」
ということで機関はまた蒸気です。給水用に蒸留水を作り出す魔道具と火球を発動する魔道具です。魔法バンザイ。
シリンダー 排気 動力軸
┏━━━━━┻━┓ ↑
動 水┫ □┃ ┗━┳
弁 火◇ □╋━━━◯ コンロッド
梃┏気┫ □┃ ┏━┻
子┃ ┗━━━━━━━┛ ┃
┗━━━━━━━━━━━┫カム軸
プッシュロッド
今どきのエンジン風で2ストロークっぽいのにしたいです。図のようにピストンヘッドが下にある状態ですと、給気圧力により蒸気は排気口から排出済みです。その排気ですが、船と違い給水は魔石で間に合いますので、負圧を得るための復水器は排気管に内蔵されているだけで、循環しません。排気温度を低下させるのがお仕事です。その給気をピストンが上昇する事で圧縮します。◇の所まで空気が圧縮され高温高圧になると、給水口から水が噴霧されます。圧力が超過した場合は、火点魔石が外れます。次に火点で火球が発動され、水蒸気になって膨張し、ピストンヘッドが下がります。圧縮工程が加わりましたので、効率は良くなるはずですし、燃費向上にも繋がる予定です。馬車で作った黒鉄バネがありますので、頭上弁機構が作れるようになりました。動弁梃子がプッシュロッドに押されてカシャカシャ動くあれです。実は小容量では必要ないんですけどね、あった方がエンジンぽいでしょ。カム軸に連動して、火点へ魔力を供給するのを分配器により配ることにすれば、気筒数の増減はより簡単になると思われます。
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// 注:真に受けないようにネ
// 仮にこんなので動いたとしても変速機がないと、動作しませんね。
// 本物は、逆転機だの加減弁だの複雑怪奇
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回し始めはセルモーター?なんですかそれ。イナーシャハンドルに決まっています。『回せーッ』えんやこら、ドッコイセのあれです。身体強化が必須となります。船舶の場合は、フウちゃんが圧縮空気でフライホイールを回して「コンターク」となります。16万8千光年先へ行けます。彼処知らないうちに2万光年離れていたんですけど、なぜですか。
蒸気の温度と圧力が段違いに増えたので、今度は黒鉄が必須です。エル君に加工してもらって単気筒蒸気機関を作ってみました。さて、何馬力出るんでしょう。損失量とかね、どうやって計りますかね?誰か作って。
5. 力の単位を決めてしまえ
出力を計るにはどうすべ。誰も決めていないのだから、適当にでっち上げれば良いのですけどね、どうすれば良いと思いますか。
◯\5
3┃ \ ←→
● 4 ◎---□
●の所に動力軸を接続します。●から◯は半径1[㍍]で、◯は●を中心として円運動をします。◎が直線運動に変換するリンク機構となります。その先には100[㌔]の錘が繋がっていて、1分間に一往復すると1[強力]としたらどうでしょうか。当然装置の強度とか重量とかの仕様は一定にせねばなりませんが、適当に作っておけばそのうち誰かが数値にしてくれるでしょう。皆が同じ装置で比較すれば良いのです。これならば、摺動弁を作った所なら作れるでしょう。我ながらいい加減とは思いますけどね、誰も実現していないんだから仕方がありません。早い者勝ちです。当然、これが地球でいう所の何馬力に相当するかなんて分かるはずもありません。
6. 2輪でも転ばない所を見せないと納得しねえ
いえね、何故に2輪かと言うとですね、お兄さん(マジダス)がですね、ほら飛行船がだめじゃないですか。どうも浮く瞬間の浮遊感がどうにも耐えられないのと、高い所がダメらしいです。はっはっは。それでね『馬車でいいじゃん』と言ってみたのですけど『より早く、簡便に移動できないか』だそうで、なんて贅沢なんでしょう。まるで王侯貴族のような…あ、王族だった。そういうわけで、アッセさんに言った前後2輪の自力走行車を作ってみようかとなったわけですよ。こっそり飛べるようにしちゃいましょうか。
それでですね、馬の足は4つです。箱馬車も4輪です。前後2輪の乗り物なんて無いんですよ、誰も見た事がありません。2輪でも大丈夫だってのを見せないと、誰も納得してくれません。試しに梯子の前後に直径17吋位の車輪を装着しただけの模型を作りまして、蹴っ飛ばして見せました。そりゃっ!
「本当ですね、走ってしまえば車輪が2つでも転ばないんですね。魔法ではないんですよね、面白いですね」
「ねっ!大丈夫でしょ。まあ、速度が落ちるとああなりますけど」
当然、速度が低下して止まる頃には倒れますけどね。
「速度が落ちて止まる時は足で支えて立てば良いんですよね。でも、あれだと僕の足は届かないかな」
「いや、それなりに小型にすればいいんじゃないの?小型の車台に機関が乗るか分からんけど」
「あ、そうか。期待していいですかね?」
「だめだったら自分でなんとかする!」
「え~、無理ですよぉ」
ガンさんが、襟元を引っ張ってきました。
「何?俺達のも作れ?」
「おう」
「作れないよ、資材が足りないもん。お兄さんとその護衛さん用の3台だけじゃないかな。あと一台小型のを作れる程度かな」
「よし、決めた。護衛をする」
「できる訳無いでしょ、辺境伯様からお姉さんの護衛を頼まれているんでしょうが、勝手に任を変える事ができる訳無いでしょ」
「だったらどうすりゃいいんだよ」
「知らんがな。どうせできたら教習するし、たぶん魔導国の護衛さんはこっちに来させるわけには行かないから、辺境伯様の所に教習所を作る事になるだろうしで、お館住まいになるだろうから、その時に話しでもしたら」
「魔導国の護衛は?」
「安全運転で競って最優秀の2名がなれば良いんじゃないの?」
「おっし、そうするか」
「{うん、たぶん選外になるだろうけどね。そんな未来しか見えんわ}」
「何か言ったか?」
「何も」
ほんで、お兄さんにも報告。
「ふむ、そうか護衛か。なるほど、魔導国まで単独で行くわけにもゆかぬか。される本人が気がついていなかったな。ミーくん、それなら我が国の近衛から人選して呼び寄せても良いだろうか」
「そうですね、人選はお任せしますが、何人いらしても最終選考で残るのは、今のところは2名なので、先にお知らせしておいて下さいね」
「うむ、了解した」
7. さてどうしましょう
要は自動2輪ですよね、オートバイ。エンジンは2ストローク風蒸気機関として、動力伝達は、チェーン?嫌だよ。あんなもんプレス機でもないとやっていられないですよ。平歯車と蛇皮ですかねえ、ベルト駆動。あるいは、傘歯車による歯車伝達かな。重さは、ベルト駆動の方が軽量でした。伝達力は傘歯車の勝ち。一長一短てやつですね。採用は、ベルト駆動。海も陸も蛇皮をとっとと消費したい。
クラッチは、フウちゃんの遠心式自動真空クラッチ。ほら、レバーを操作するとピタッとくっつく吸盤式のリフターハンドルとかあるでしょ、あれですよ。フウちゃんの場合は、真空ポンプなんか比較にならない密度で真空になります。クラッチが繋がるときは遠心力でゆっくりと繋がり、速度が上がる頃にはがっちりと真空で張り付きます。
ブレーキは、蛇皮。構造はバンドブレーキで宜しかろうと思います。いえね、ドラムブレーキとか、ディスクブレーキとか構造を知らないんですよ。昔の自転車に使われていたバンドブレーキならなんとかって言う程度です。でね、前輪は上下に動くんですよ。固定長のロッドは使えません。魔導線を網線にして、前輪懸架台に取り付けた水鉄砲の油圧でバンドブレーキを掛ける魔導ブレーキです。たぶん大丈夫、速度はそれほど上げられないと思われます。馬の襲歩より少し遅いくらい、大体50[km]程度じゃないかな。いいじゃん、襲歩なんて保って数分じゃん、駈歩だって20分位じゃん、バイクなら制限ないぞ、いいじゃん。
変速機は無いですよ。というか作れません。バイクって言えばシーケンシャル型のドグミッションですけど、そんなん知らないもん。当然ですが、4輪用のだって知りません。4輪用なら仕組み位は知ってはいますよ、免許も持っていたような気がしますし。詳細がわからないんですよ、そりゃもう全く。という事で、固定比率の減速歯車だけです。どこかにポルシェ博士いませんかね。
速度は白の子が区間を認識して、風の子が風圧を感知してセグメント管を光らせてくれるデジタルメーターです。距離計は、土の子がカウンターを進めてくれる魔道具でございます。蒸気圧計は水と火の子が合同作業。回転計はディストリビューターに光の子が紛れ込んでいます。排蒸気圧は負圧なので、なぜか闇の子が頑張ります。
車輪は、魔鉄改のリムに黒鉄スポーク。リムには蛇皮中空タイヤをはめ込みます。ショックアブソーバは、馬車のを流用。前照灯に指示灯は、光球の魔道具ですよ、空圧浮揚板にも付いています。使ったことは無いけど。装い一式は、黒鹿の革。ブーツとヘルメットは海蛇の鱗。大まかにはそんな所ですかね。
結果、大型の物は総額10丸金(約一億円)位になりそうです。ゲゲッ!高機動馬車の倍。いつもの鍛冶屋さん達で…作れなくも無い。ぎりぎり大丈夫、頑張れ。




